どのような疾患か
肝臓の癌は原発性肝癌と転移性肝癌にわけられます。原発性肝癌のうち95%を肝細胞癌が占め、5%が胆管細胞癌となり、まれにその他の腫瘍を認めます。転移性肝癌は大腸癌、胃癌、胆道癌、膵癌、肺癌、乳癌、子宮癌などが血液の流れにのって肝臓内に転移したものをいいます。
どのような人に発生するか
わが国では肝細胞癌の約80%近くの方がB型あるいはC型肝炎ウイルスにかかっている方です。
肝炎ウイルスにかかっていない人では、アルコール性肝障害、糖尿病、肥満を有する人も肝細胞癌の危険が高いとされています。つまり、まったく正常の肝臓から「肝臓がん」ができることは稀であり、肝炎やお酒、生活習慣病など何らかの背景因子のある人が要注意となります。
どのような症状をきたすか
肝細胞癌は末期に至るまで比較的臨床症状に乏しく、全身倦怠感、食欲不振、腹部膨満、発熱といった併存する慢性肝障害に由来する症状が主体となります。
どのような検査を行うか
肝細胞癌は症状だけでは早期発見する事が難しい疾患です。したがって先程述べた肝細胞癌発症の危険因子を有する方々(B型、C型肝炎ウイルスにかかっているかた、アルコール性肝障害)に対して、定期的に超音波検査、腫瘍マーカー(血液検査)によって早期発見を目指すことになります。
超音波検査で肝細胞癌が疑われた場合は、造影剤を用いたCT、MRI検査(dynamic CT、dynamic MRI)を行います。造影剤の染まり具合によって腫瘍の性質を調べるとともに、超音波だけでは検出しきれない微小な腫瘍を探し出す事を目的とします。
肝臓癌の治療は肝臓の予備力(肝障害度)によって治療方針が変わってきます。腹水の有無、血清ビリルビン値、血清アルブミン値、プロトロンビン活性値、ICG試験(ICGという緑色の試薬の排泄試験)の5項目を評価します。
治療について
肝細胞癌の三大治療は肝切除、経皮的局所療法(ラジオ波焼灼術)、肝動脈塞栓療法(カテーテル治療)です。癌の根治性と肝機能保持を両立させる治療方法を選ばなければなりません。肝切除は根治性の高い治療方法ですが、肝機能に見合った切除が必要です。日本肝臓学会では治療法の選択のために、「肝癌診療ガイドライン」を発行しており、その中に「肝癌治療アルゴリズム」というフローチャートが示されています。治療法の選択には「肝障害度」「腫瘍数」「腫瘍径」の3つの基準が記されています。肝障害度とは前述しました腹水の有無、血清ビリルビン値、血清アルブミン値、プロトロンビン活性値、ICG試験(ICGという緑色の試薬の排泄試験)の5項目の検査結果を点数化し、A~Cの三段階に分類します(Aが肝機能良好、Cが不良となります)。肝障害度Cの場合には肝移植もしくは緩和治療の適応となります。肝障害度AまたはBの場合には腫瘍の数、腫瘍径をみて治療方法を決定してくことになります。
当科では患者様の肝機能や全身状態を勘案した上で,各患者様に最適な治療を行うようにしています。
最終更新日:2018年2月28日