難治性潰瘍は治療に抵抗する慢性潰瘍のことです。その原因には、外傷、褥瘡、糖尿病性潰瘍、放射線潰瘍、うっ滞性潰瘍、膠原病、リウマチに合併する潰瘍などがあります。また、時として皮膚癌を認める場合がありますので注意が必要です。さらに潰瘍などの傷が治癒するのを妨げる因子としては低栄養、感染、ステロイドや免疫抑制剤の服用、機械的刺激などがあげられます。好発部位は下腿、足で、起立、歩行によりうっ血をきたしやすいからです。また、血行が他の部位と比べて不良であるため、いったん潰瘍が生じると難治性になりやすいことも好発部位となる理由の一つです。
難治性潰瘍の治療は、まず潰瘍の原因、誘因や治癒を妨げる因子を解明して除去することにあります。またそれに伴い、全身および局所管理を十分に行うことも大切です。それにより治癒しない場合は外科的治療になります。
局所管理
- デブリードマン(壊死組織を切除すること。外科的、軟膏、水治療法等により行います)
- 感染のコントロール(抗生剤の投与、洗浄)
- 肉芽形成(主に軟膏療法、持続陰圧療法等)
- 上皮化(軟膏療法、bFGF製剤等)
の時期があり、それぞれの時期に適切な軟膏療法を行います。
すなわち、デブリードマンでは壊死した組織を軟膏や外科的に除去します。感染のコントロールのためには抗生剤を含んだ軟膏や抗生剤の全身投与などが行われます。さらに肉芽形成や上皮化促進のための軟膏がありますので時期に応じた軟膏が用いられます。上皮化については軟膏で治癒しない場合は手術(植皮術)が行われることもあります。潰瘍によっては腱や骨が露出している場合がありますが、そのような場合には皮弁移植が必要となります。
難治性潰瘍では治癒したあとの管理も大切です。糖尿病性潰瘍や全身疾患を伴う潰瘍では再発しやすいからです。特に糖尿病性潰瘍では、動脈硬化による血流障害(閉塞性動脈硬化症)を合併していることが多く、難治性と言われています。治癒した潰瘍部を保護することは重要なことですが、再発させないことも重要です。特に下腿の場合、長時間の立ち仕事を避けることや、足の挙上や弾性ストッキングを使用して血液やリンパ液のうっ滞を避けるなど、日常の生活も改善することも必要です。いずれにしても、下腿に治りにくい傷や潰瘍ができた場合、できるだけ早く専門医の診察を受けることが望ましいと言えます。
最終更新日:2018年2月28日