子宮筋腫は子宮の壁である筋肉層にできる良性の腫瘤(こぶ)です。図でごらんいただくと、出来る部位がさまざまであることがわかります。子宮の内側にできる粘膜下筋腫、壁の中の筋層内筋腫、壁の外側に出来る漿膜下筋腫に大別されますが、位置や大きさ、大きくなる速度まで含めると同一のものはありません。
ところで、子宮筋腫の原因そのものは、あまりよく解っていません。もともとは筋腫の芽のような単一の細胞からだんだん増えて大きくなりますが、女性ホルモンのエストロゲンがその成長に関係しています。女性の4~5人にひとりは持っているといわれるほど、頻度の高いものです。
症状
子宮筋腫ができている部位や大きさで症状は大きく違います。
よくある症状は過多月経(月経時の出血量が多い)で、その結果次第に貧血になってくると、疲れやすさ、だるさ、息切れなどの全身症状が出てきます。
月経量が多いかどうかは、判断がしづらいと言われますが、ひとつの目安は夜用あるいは多い日用のナプキンをしょっちゅう使うようになったら要注意です。とくに子宮の内側に出来る粘膜下筋腫は小さくても過多月経を起こしやすく、内側であるため検診で見逃されがちです。
さらに腰痛、腹痛、頻尿などの症状がしばしばみられます。筋腫が大きくなるとおなかの上からしこりとして触れることも珍しくありません。
治療法
一昔前まで子宮筋腫といえば開腹手術でしたが、現在では治療法も様変わりしています。
薬物療法 | ホルモン療法で子宮筋腫を小さくすることが可能です。偽閉経療法という、一定期間排卵、月経を止めることにより筋腫を縮小させる方法が一般的です。また症状がそれほど強くない場合は漢方薬や鎮痛剤などで症状を緩和することが可能です。 |
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子宮鏡下手術 | 子宮の内側に出来た粘膜下筋腫を経腟的に(開腹手術をせずに)切除する方法です。2泊3日の入院で行うことが出来、手術後の痛みもほとんどありません。 |
腹腔鏡下手術 | 腹腔鏡をもちいることにより、小さな切開創で筋腫を摘出する方法です。 |
もっとも多いのは「成熟奇形種」と呼ばれる腫瘍で、卵巣嚢腫の40%を占めます。年齢幅は広く、10代の若い女性にも見られます。嚢胞状の袋の中に脂肪、毛髪、骨など体を構成する成分が不規則に生じて包まれ、大きいものは直径10cm以上になります。
周囲と癒着せず、可動性があることから、茎捻転といって茎の部分がねじれてしまい、急性の腹痛を起こして緊急手術になることが珍しくありません。また放置すると50代以降に悪性転化をおこすことがあるので、発見された場合は治療することが必要です。
その次に多いのが「漿液性のう胞腺腫」という薄い皮膜のなかにサラサラした液体を含む腫瘍で、全体の約25%です。
そのほか子宮内膜症(後述)による子宮内膜症性のう胞(チョコレート嚢腫)、線維腫などがあります。多くは、内視鏡手術で治療が可能です。
子宮内膜は子宮の内側を覆っていて、排卵の周期とともに増殖と月経による排出を繰り返す性質をもっています。
子宮内膜症とは本来、子宮内膜が存在する部位以外の卵巣、骨盤腹膜上などに内膜細胞が存在するようになり、その部位で出血、炎症をおこし、卵巣嚢腫(子宮内膜症性のう胞)や骨盤内癒着をきたして、下系痛、腰痛、排便痛などのつらい症状を引き起こす疾患です。本来は悪性の疾患ではありませんが、閉経までの期間は持続的に進行し、症状が重くなったり、不妊症を引き起こしたりするので、適切な治療が不可欠です。
性行為で感染したウイルスによって、細胞の遺伝子に変化がおこり、その一部で癌化が起こります。ウイルスが原因であるため、20代の若い人にもめずらしくありません。ただし細胞の変化は比較的ゆっくりで、定期的に子宮がん検診を受けることが、予防の第一歩です。最近ワクチン接種が一般化しつつあり、将来的には撲滅されるかもしれませんが、現段階では、定期的ながん検診は必須です。
当院では、「子宮がん検診」を受けていただくことが可能です。細胞の異常が軽度であれば定期的に経過観察し、高度異型の段階になった場合は手術を考慮します。円錐切除術は、高度異型~0期の子宮頸がんに対する手術療法で、子宮・卵巣は温存されるため、将来お子さんが欲しい方でも可能な手術です。