当院では、保険診療で不妊治療が受けられます。
不妊治療は過去10数年の間に飛躍的な進歩を遂げ、体外受精など生殖補助技術によって、妊娠し、出産することが珍しくなくなりました。しかし、これらの高度な医療技術には高額な医療費を要するという側面があり、お子さんは欲しいけれど、経済的な面で二の足を踏んでいるという方々が少なくありません。
豊島病院産婦人科では、公的性格をもつ地域医療を担う病院としてふさわしい不妊外来を目指します。
可能なかぎり、自然に近く、余分なコストはかけず、良い結果を出すことをモットーにお子さんを望まれている方々のご要望におこたえしたいと考えています。
現在、豊島病院では一般不妊治療(タイミング療法・排卵誘発療法・人工授精等)のみを行っております。高度生殖補助医療には対応しておりませんので、あらかじめご承知おきください。
妊娠を希望しているカップルが2年以上避妊を行わずに生活を送っていても子どもができない状態とされています。しかし、期間については1年間とする考え方もあります。およそ10組に1組の割合で不妊症に悩むカップルがいるといわれています。また二人目を望んでも妊娠しない、という状態は第二子不妊と呼ばれ、一人目は自然に授かった場合でも、二人目は治療によって妊娠が成立することが少なくありません。
出産までのこれら主な過程は女性の体内で起こるため、不妊は女性側に多くの問題があると考えられがちです。しかし、不妊の原因となっている問題は女性側が4割、男性側が4割、原因がわからないもの2割です。そのため、男女それぞれ考えられる原因を調べる必要があります。
女性のセルフチェック | 男性のセルフチェック |
---|---|
ホルモンの分泌・バランス ・月経が不順 ・肥満傾向がある、BMI26以上 ・体重が軽い、BMI17以下 ・授乳期や妊娠中以外に乳首から分泌物が出る | 生殖機能の問題 ・射精できない ・射精時に出る分泌物の量が少ない ・睾丸が極端に小さい ・睾丸や陰嚢に引きつれた痛みや違和感がある ・大人になって高熱を出したことがある |
性感染症 ・おりものの量が常に多い ・クラミジア感染症に患ったことがある | 生活習慣の問題 |
子宮や卵巣の疾患 ・生理痛がひどく、鎮痛剤が必要 ・子宮や卵巣の病気にかかったことがある、もしくは現在かかっている ・月経の出血量が多い ・月経時以外の不正出血がある |
子どもが欲しいのに出来ないけれど、中々治療に踏み切れない方や、不妊治療のイメージがわかない、治療に対する不安がある方など、当院の助産師がご相談をお受けします。
ご相談ご希望の方は、下記の『不妊相談窓口のご案内』をご確認の上、『不妊相談外来』(1回のみ利用可能/無料)をご利用ください。
不妊外来のご案内について
保険適用の条件(下記項目がすべて可能な方は保険で治療が受けられます)
- 患者さま本人及びパートナーの「不妊症」の診断が必要です。そのため、治療開始時にパートナーの方との同伴が必要となります。
- 治療計画の見直しを行うため、6か月ごとにパートナーの方と同伴の上でご受診が必要です。
- 婚姻関係、パートナー関係の確認が必要です。受診時に下記をお持ちください。
① <法律婚の方>戸籍謄本(三か月以内に発行されたもの)
<事実婚の方>それぞれの戸籍謄本、住所票(いずれも三か月以内に発行されたもの)
➁『婚姻関係等申告書・誓約書』(Word 46.4KB) - 本治療において出生した子について、認知を行う意向が必要です。
不妊治療開始までの流れ
まずは、当院の『不妊外来』をご予約ください。担当医から今後の治療について、ご説明いたします。
注目情報予約専用番号:03-5375-5489
一般不妊治療
女性側の排卵因子に対する一般不妊治療としては、基礎体温や超音波検査から排卵日を予測したり、排卵誘発剤を使って排卵周期を調整して妊娠しやすいタイミングでの性交渉を行う”タイミング法”、男性から採取した精液を妊娠しやすい状態にして子宮へ注入する”人工授精”などが行われます。
タイミング法でもある程度の期間タイミング指導を行った後に、それでも妊娠しなければ排卵誘発剤を使用する、というようにステップアップします。
高度生殖補助医療
高度生殖補助医療には、体外受精や顕微鏡授精があり、個々の患者さんの条件に応じて選択します。
病院で行う主な検査
血液中のホルモン測定
プロラクチン:排卵障害、卵胞発育不全
エストラジオール:視床下部・下垂体障害の有無、黄体機能不全の有無
プロゲステロン:黄体機能不全の有無
テストステロン:多嚢胞性卵巣の有無
子宮卵管造影法(HSG)
検査方法
月経終了後から排卵までの低体温期に行われます。
子宮口より細いカテーテルを使用して、造影剤5~10mlを注入しながらX線で造影剤により卵管の通過性を確認します。
精液検査
精液を調べることで精子の問題点だけではなく、精巣・精管・前立腺・精嚢腺・副睾丸などといった男性生殖器の異常を見つけるきっかけにもなります。
男性の生殖機能に異常が起きても、自覚状が現れないことが多く、自分では気が付かず放置してしまっているケースも少なくありません。それが不妊の原因になってしまっていることも多いので、検査だけでも早めに受けておくことをお勧めします。
検査の方法
滅菌された専用のケースに、精液を採取します。
採取は自宅で行っていただき、病院へ持ってきていただきます。なお、パートナーの方に、ご持参いただくことが可能です。採取後、1時間以内に検査を始めることが望ましいので、できるだけ採取後1時間以内に病院に到着するようにお願いします。
量
採取した精液の全量を計量器で計測します。精液の量は個人差が大きく、年齢や健康状態、生活習慣によってもかなり変化します。そのため、あまりにも少なすぎる、1.0ml以下の場合には前立腺もしくは精嚢腺の異常があると考えられますが、多い分には異常とは考えません。
濃度
1mml中の精液に、精子が4000万~5000万以上確認であれば、正常と考えられます。しかし、4000万~2000万以下の場合には精子減少症の可能性もあり、受精率は低くなると考えられます。全く精子が確認できなければ無精子症と診断されます。自然妊娠は、精子濃度が3000万以上ないと難しいと考えられています。
運動率
動かない精子が精子中に多く含まれていれば、卵子まで自力でたどり着くことはできませんので受精率も低下します。正常であれば全体の60%以上が正常な運動能力がありますが、それ以下だと精子無力症の可能性もあります。
奇形率
頭部に異常や奇形がみられる精子が、全体の精子のうちどのくらいの割合で含まれているかで、正常範囲とされるのは全体の15%未満です。それ以上異常な精子が含まれていると造精機能の低下や障害が考えられます。
一般不妊治療の方法
タイミング療法
タイミング療法の実際
排卵日の予測
排卵予定日を予測する基礎体温を記録することで、排卵周期や月経周期のパターンを読み取り排卵日を予測することが出来ます。
基礎体温は月経周期では低体温を示し、排卵が起こった日をはさんで高温期に移行します。そのため、高温期に入る直前、低温期の中でもさらに体温が下がった日を排卵日と予測します。
タイミングを合わせる
男性は何日も連続して射精すると精子の数が減ってしまい、受精率が低くなってしまいます。
しかし、あまり長期間禁欲していても精子の質が落ちてしまいます。排卵日とは関係なく3~5日間隔で性交渉を行っている方が妊娠の確立が上がるというデータもあります。
排卵誘発療法
クロミフェンという下垂体に作用する”排卵誘発剤”を使った治療方法です。不妊治療の中では最も一般的な薬を使った治療で、治療の初期段階に行われることも多くあります。
特徴
クロミッドとも呼ばれるこの薬を服用した場合に排卵誘発率は50~75%、妊娠率は約24%です。双子になる確率は7.5%です。服用量を増やして3周期続けても排卵が起こらないには、ゴナドトロピン療法に切り替えます。
【ゴナドトロピン療法(hMG-hCG療法)】
ゴナドトロピン療法には卵胞刺激作用ホルモン(FSH)の作用をもつヒト閉経後尿性ゴナドトロピン(hMG)または遺伝子組換型FSH、およびhCGという2種類の注射薬が使われます。クロミット療法で改善が見られなかった場合に、この治療が行われます。
月経周期3~5日目からhMG(FSH)の注射を毎日行います。その後、卵胞の発育を超音波検査で確認し、十分に成熟していたら排卵を起こすためにhCGを注射して排卵を誘発します。hCGを注射してから36~48時間の間に排卵が起こります。これにタイミング療法または人工授精を組み合わせます。
特徴
ゴナドトロピン療法は卵巣に直接働きかけて排卵を促すのが特徴の治療方法です。そのため、下垂体に異常がある排卵障害にも有効です。一方双子となる確率が高くなる傾向や、卵巣過剰刺激症候群が起こる可能性があるため、hMGの量を低用量にして副作用を少なくする工夫を行っています。