当科でのシニアレジデント研修を希望される先生へ
都立病院の中でも広尾病院は救急・災害医療, 島しょ医療, 脳血管疾患, 循環器疾患を重点医療としており, 救命救急センターではそのすべてに関わり, 他診療科と協力しながら診療に当たっています。当院は東京都23区唯一の基幹災害拠点病院でもあります。単なる振り分けではなく, 自己完結型を基本とし, 当該科が明らかで単一のプロブレムの場合は各診療科に依頼していますが, 3次救急患者(東京消防庁からのホットライン)は救命救急センター医師が対応し, 入院・集中治療管理を行っています。また, 日中の2次救急(救急車)についても総合救急診療科の医師と協力し診療にあたっています。夜間や休日の1, 2次救急(ER外科, ER内科, ER小児科)は各診療科医師が担当し, 救命救急センターがバックアップを行なっています。大学病院や巨大市中病院と異なり, 各診療科の垣根が低く, 救命救急センター内だけでなく, 院内医師間はアットホームな雰囲気があることが特徴です。
救急・集中治療に必要な基本的スキル(気管挿管, 人工呼吸管理, 中心静脈カテーテル挿入, 動脈圧ライン確保)はもちろん, PiCCOTM, VigileoTM, EV-1000を用いた循環管理, 各種エコー, 小縫合, 創傷処置, 熱傷管理, V-AおよびV-V ECMO導入, 開胸心マッサージ, 気管切開, CHDFなど, 様々な手技を充分に経験することができます。症例は, 多発外傷, ショック, 呼吸不全, 敗血症, 薬物中毒, 熱傷, 各種感染症など多岐にわたります。救急科専門医・指導医の他, 集中治療科専門医, 外傷専門医, 熱傷専門医など, 各種学会の認定研修施設に指定されています。
島しょ(伊豆諸島, 小笠原諸島)からの救急航空機搬送は年間平均200件であり, 救命救急センターはそのコーディネートを行っています。そのほとんどの事例で医師添乗を行っており, 救命救急センターのスタッフのみならず, レジデントの添乗も積極的に行っています。伊豆諸島へは東京消防庁の防災ヘリコプター, 小笠原諸島へは海上自衛隊もしくは海上保安庁の固定翼機での添乗を行います。病院屋上には24時間, 夜間・休日, 雨天でも使用可能なヘリポートがあり, 重症患者の搬送に利用されています。希望により島しょ地域診療所への代診勤務もできます。
災害医療訓練, DMAT活動についても, 当救命救急センターが中心的役割を担います。東京消防庁の特殊部隊とともに毎年NBC災害訓練を行っています。また東京消防庁災害救急情報センター指令室で救急隊指導医としてメディカルコントロール業務(救急医学会専門医取得者)に加えて, 救急相談センター(#7119)の相談医(後期レジデント2年目から)も派遣しています。DMAT隊員資格を取得し実際に出動することが可能です。
東京都立病院機構 東京医師アカデミー採用のシニアレジデントは救急科以外の診療科所属でも3か月間は救命救急センターのローテーションが必須となっています。このため当救命救急センターには当院だけでなく, 救命救急センターを持たない他の都立病院(駒込, 松沢, 荏原, 大久保, 東部地域, 大塚, 豊島など)の様々な診療科のジュニア・シニアレジデントが常に在籍しています。勤務条件もレジデントが過重労働になることのないように留意し, 給与についても十分に得られるよう配慮しています。定期的な外勤が可能です。給与・働き方については見学時や説明会の時にお問合せください。若く, 活気のある職場であり, スタッフは常に教育的であることを意識しています。
チーム医療を重んじる救命救急医育成をコア・コンピテンシーとしており, シニアレジデントの採用にあっては, 人柄やコミュニケーション能力を重視し, 知識・技術は専攻医カリキュラム開始から修得して頂ければ充分と考えています。また, 救急科以外にも総合診療専門医のプログラムも用意しています。病院の性質上3次救急・集中治療を修得したいという人から, 総合診療・家庭医に近い将来像を描く人まで, 幅広くかつ柔軟なカリキュラムを可能にしています。
東京医師アカデミーでは研究発表が必須となっており, 臨床研究, 学会発表・論文執筆も積極的に支援しています。空き時間などに実技を含めたクルズスを行っており、Zoomを用いたオンラインでも抄読会を週1回のペースで行っています。興味があれば是非一度病院見学にいらして下さい。詳しくは東京都立病院機構東京医師アカデミーのホームページもご覧ください。
過去のクルズス例
- いろいろなABCDE, By System, ProblemとDiagnosis
- シリンジの持ち方と糸結び(実技)
- Differential Diagnosis 鑑別診断
- 人工呼吸管理の基礎
- 輪状甲状靭帯穿刺(実技)
- 意識障害とGCS
- 人工呼吸管理 応用編
- 血液ガス 酸塩基平衡編
- 中心静脈カテーテル挿入(実技)
- 血液ガス 酸素化・換気編
- 気管挿管はフォームが命(実技)
- Lactateを語ろう
- 気管支鏡(実技)
- 心電図ワンポイント
- 頸髄損傷と頸椎X線
- COVID-19
- 救急における頭部CTの読影
- 救急における腹部CTの読影(基礎編)
- 救急における整形外科
- あなたの知らない災害の世界(病院編)
- 外傷治療総論
- 俺の創傷管理
Off the job training
日本救急医学会ICLSコース, 日本内科学会JMECCは院内で無料開催しており, 認定インスラクターは看護師も含め10名以上在籍しています。日本外傷診療研究機構JATECや東京DMATについては, 複数のインストラクターが院内に在籍しています。Off the jobトレーニングの受講費については研究費で補助をおこなっています。
シニアレジデントの教育目標
当院の特色として, 「全身を診る医師」を育成するために, 3次救急のみならず, 総合救急診療科と協力して1,2次救急対応も修練していただきます。また院内外の研修を通して, 災害医療についての造詣も深めていただきます。
研修期間は基本3年間とし, 各学年での教育目標は以下の通りです。
- 1年次(医師3年目)
- 都立広尾病院救命救急センターでの研修を主に行い, 救急・集中治療の基礎を学びます。
JATEC, ICLS , JMECC等のプロバイダー資格取得は義務としており, 基本的に参加費を援助します。学会発表も積極的に参加していただきます。また, 夏以降は外勤も行くことができます。 - 2年次(医師4年目)
- 他院への国内研修も行い, 大学病院(杏林大学医学部救急医学教室・高度救命救急センター)や地域中核病院(鹿児島県立大島病院)など, 他の連携施設での研修も経験して頂きます。東京DMAT研修に参加し, 隊員資格を取ることができます。症例報告など誌上発表も経験し, 希望により各種Off the job trainingのインストラクターとして参加することができます。
- 3年次(医師5年目)
- 将来の救急医としてのビジョンを明確にし, そのための研修を継続します。希望により院内他科への出向研修(内視鏡研修など)や島しょ診療所でも僻地医療も経験可能です。救急科専門医の受験資格を取得します(2~3年の在籍により専門医受験のための症例数・手技数は充分確保されています)。
- 4年次(医師6年目)以降
- サブスペシャリティ取得を目的とした院内外への出向や, 指導医・病院の評価によりスタッフ採用が可能となっています。学位の取得や, 国内・海外留学の相談も可能です。
最終更新日:2024年5月10日