免疫チェックポイント阻害薬は従来の抗がん剤と異なり、副作用の発現時期が様々であるため、患者さん自身で症状をチェックすることが重要です。そこで、患者さんが免疫チェックポイント阻害薬とその治療や副作用、対処方法について知識が深められることを目的とし、副作用のセルフチェックを行い、早期の受診につなげられるように以下の動画とセルフチェックを作成しました。
動画
副作用のセルフチェック
このチェックシートを参考に免疫チェックポイント阻害薬の副作用についてセルフチェックをしてみましょう。
副作用の部位をクリックしてください
(1)皮膚障害
皮膚が活性化した免疫細胞に攻撃されると皮膚障害を起こします。 症状として、白斑症(はくはんしょう)/皮膚が白く変化する、掻痒症(そうようしょう)/かゆみ、発疹、脱毛があり、塗り薬や飲み薬で治療します。 しかし、免疫チェックポイント阻害薬で治療したあとに投与する薬剤(免疫チェックポイント阻害薬や低分子阻害薬など)によって皮膚障害がより高頻度に出現すると言われています。 このため今までに免疫チェックポイント阻害薬の使用歴がある場合は必ず主治医に申し出てください。
皮膚障害全体の出現頻度
軽症:1-25.4% 重症:0.5-1% 出現時期はさまざまで、投与した当日に症状が現れる場合や、投与して1年以上経過してから現れる場合もあります。平均すると71.5日とされていますが、あくまでも目安です。
皮膚障害の副作用 チェック | |
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上記の症状が以前より一つ以上強くなっていますか?
あるいは、新たに一つ以上発生していますか?
(2)肺障害
肺は呼吸するときに空気中の様々なばい菌を一緒に取り込みますが、肺炎にはなりません。それは自分の免疫細胞がばい菌を抑えてくれるからです。 しかし活性化した免疫細胞が自分の肺を攻撃すると、肺障害を起こしてしまいます。肺を攻撃すると間質性肺炎という状態になり、様々な症状が現れます。 肺がんの方、肺に転移を起こしている患者さんで、すでに呼吸器障害(咳・息切れ)がある場合には薬剤による症状なのか、病気が悪化したものなのか判断が難しいことがあります。 そのため、何らかの呼吸器症状が現れた場合には、病院(日中:主治医、夜間・休日:救急外来)へ連絡をしてください。
オプジーボⓇ投与による肺障害の出現頻度
悪性黒色腫:1.5-1.9% 非小細胞癌:3.5-5.31 ※間質性肺炎(かんしつせいはいえん)とは さまざまな原因から薄い肺胞壁(間質)に炎症や損傷がおこり、壁が厚く硬くなり、ガス交換がうまくできなくなる病気です
肺障害の副作用 チェック | |
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上記の症状が以前より一つ以上強くなっていますか?
あるいは、新たに一つ以上発生していますか?
(3)肝障害/膵(すい)障害
肝障害
肝臓は食べたものを体の中に貯蓄するために分解(代謝)し、体にとって影響を及ぼすものを分解(解毒)します。活性化した免疫細胞が肝臓を攻撃すると、肝機能障害を起こします。 自覚症状がほとんどないことが多く、採血をして始めて診断されることがあります。重症となると命に関わることもあります。当初、自覚症状はありませんが目が黄色くなり(黄疸)、だるさがつよくなったりしたら病院(日中:主治医、夜間・休日:救急外来)へ連絡をしてください。
肝臓の役割
食べたものを体の中に貯蓄するために分解(代謝)し、体にとって影響を及ぼすものを分解(解毒)します
肝機能障害の出現頻度
ヤーボイⓇ:2.1-3.8% オプジーボⓇ:3.4-4.5%
肝障害の副作用 チェック | |
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上記の症状が以前より一つ以上強くなっていますか?
あるいは、新たに一つ以上発生していますか?
膵障害
活性化した免疫細胞が膵臓を攻撃すると、頻度は高くありませんが膵機能障害を起こします。自覚症状はありませんが採血で膵液(アミラーゼやリパーゼ)が上昇することがあります。
膵臓(すいぞう)の役割
食べたものを消化・吸収を助ける膵液を分泌し、血糖値を安定させるためにインスリンなどを分泌します
(4)胃腸障害|下痢・大腸炎
活性化した免疫細胞が腸を攻撃すると、下痢や腹痛などの腸炎が起こります。 症状としては下痢・腹痛以外に悪心 (吐き気をもよおす)、血便が現れます。症状が進行すると消化管(しょうかかん)穿孔(せんこう)(腸に穴が空くこと)を起こすことがあります。胃腸障害は比較的頻度の高い副作用です。下痢・腹痛等の症状がある場合は病院(日中:主治医、夜間・休日:救急外来)へ連絡をしてください。
腸の役割
胃とともに食べたものを分解・吸収し、さらに細菌から体を守るため免疫細胞が多く存在します
胃腸障害の出現頻度
全体:30-40% 重症:10%
胃腸障害の副作用 チェック | |
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上記の症状が以前より一つ以上強くなっていますか?
あるいは、新たに一つ以上発生していますか?
(5)腎障害
活性化した免疫細胞が腎臓を攻撃すると尿が出なくなり、体がむくんだり、血圧が高くなったりします。腎障害は比較的稀な報告ですが、症状があった場合は病院(日中:主治医、夜間・休日:救急外来)へ連絡をしてください。
腎臓の役割
血液中の老廃物や塩分を尿として外に出します
腎障害の出現頻度
出現頻度:2%
(6)神経障害/筋障害
活性化した免疫細胞が神経や筋肉を攻撃すると、手足のしびれ・感覚障害・動きがおかしい等の症状が現れます。重症筋無力症などは突然発症し、重症化することもあり死に至る場合もあります。筋肉に力が入りにくい、まぶたが重い、下がる、ものが二重に見える、呼吸がしにくい等の症状があれば病院(日中:主治医、夜間・休日:救急外来)へ連絡をしてください。
出現頻度
重症筋無力症:0.2%
重症筋無力症とは
神経が筋に信号を伝えるはたらきに障害が起こり、体の様々な部分で連続して力を出しにくくなるなどの症状が出る病気です
障害の副作用 チェック | |
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上記の症状が以前より一つ以上強くなっていますか?
あるいは、新たに一つ以上発生していますか?
(7)糖尿病
食べ物を食べると血糖値が上昇しますが、膵臓からインスリン等のホルモンが分泌されることで一定の値を維持します。しかし、膵臓が何らかの原因で破壊されインスリンが分泌できない状態を1型糖尿病といいます。 活性化した免疫細胞が膵臓を攻撃すると、非常にまれですが1型糖尿病を発症することがあります。劇的な発症経過をとることがあり、倦怠感・口渇・多飲・多尿などの症状があれば病院(日中:主治医、夜間・休日:救急外来)へ連絡をしてください。
出現頻度
1型糖尿病:0.3% 劇症1型糖尿病:0.2%
血糖値とは
血液中のブドウ糖の量
劇症(げきしょう)1型糖尿病とは
インスリンを分泌する膵臓の細胞が急速に破壊されることで起こる病気です
障害の副作用 チェック | |
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上記の症状が以前より一つ以上強くなっていますか?
あるいは、新たに一つ以上発生していますか?
(8)内分泌障害
内分泌臓器とは 体の中では様々な物質がうまくバランスをとり、人間の命を守っています。この様々な物質をホルモンと言います。ホルモンを作って、分泌する場所を内分泌臓器と言います。臓器にはいくつか種類があり、下垂体・甲状腺・副腎が代表的なものです 活性化された免疫細胞が下垂体・甲状腺・副腎などを攻撃することでホルモンのバランスが崩れるために様々な症状が現れます 甲状腺はのどぼとけの下に存在する臓器で、甲状腺ホルモンという体を頑張らせるためのホルモンを作る場所です
下垂体機能低下症
脳にある下垂体は、ホルモンバランスを保つ中心的な存 在です。下垂体機能低下症は、ヤーボイⓇでは0-17%の頻度で現れると言われ、オプジーボⓇではほとんどないと報告されています。
障害の副作用 チェック | |
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上記の症状が以前より一つ以上強くなっていますか?
あるいは、新たに一つ以上発生していますか?
副腎機能障害
副腎は左右の腎臓の上にある小さな臓器ですが、ステロイドホルモンを作るとても大切な臓器です。症状は、倦怠感、食欲不振、無気力などがあり、報告は少数です(2%未満)。
甲状腺機能亢進症
甲状腺機能亢進症は甲状腺ホルモンがたくさん分泌される状態をいいます。甲状腺機能亢進症は、オプジーボⓇでは3%の報告があります。
障害の副作用 チェック | |
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上記の症状が以前より一つ以上強くなっていますか?
あるいは、新たに一つ以上発生していますか?
甲状腺機能低下症
甲状腺低下症では甲状腺亢進症とは逆に甲状腺ホルモンが分泌されない状態といいます。 甲状腺機能低下症は甲状腺亢進症より多く現れ、オプジーボⓇでは8%と言われています。
障害の副作用 チェック | |
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上記の症状が以前より一つ以上強くなっていますか?
あるいは、新たに一つ以上発生していますか?
(9)眼障害|ぶどう膜炎
ぶどう膜は目の中にあり、そこに炎症が生じるものをぶどう膜炎と言います。活性化した免疫細胞がぶどう膜を攻撃すると、ぶどう膜炎を生じます。 ヤーボイⓇでは0.02%、オプジーボⓇで1例(日本国内)の報告があります。症状としては目の充血、光がまぶしい、目の痛み、視力低下、霧がかかったように見える等です。
ぶどう膜
虹彩、毛様体、脈絡膜からなる非常に血管の多い組織
障害の副作用 チェック | |
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上記の症状が以前より一つ以上強くなっていますか?
あるいは、新たに一つ以上発生していますか?
Infusion reaction|アレルギー反応
一種のアレルギー反応として現れます。免疫チェックポイント阻害薬では1-4%にみられ、初回投与の30分以内に生じることが多いと言われています。 症状は発熱、悪寒、かゆみ、発疹、まぶたや唇が腫れる、呼吸困難等があります。治療中に起こることが多いですが、治療後にも生じることがあるので変化があれば病院(日中:主治医、夜間・休日:救急外来)へ連絡をしてください。
その他
上記が免疫チェックポイント阻害薬で生じる可能性がある副作用となりますが、これ以外にも報告されていないものもあり、どういう症状が現れるかはわかりません。投与する前と比べ、体に異常があれば病院(日中:主治医、夜間・休日:救急外来)へ連絡をしてください。 特に、発熱(38度以上)がある場合は、その後に副作用が現れることが多いため可能であれば毎日体温測定を行ってください。