2018年11月28日 血液内科
執筆者:都立駒込病院 LTFU外来
当院の造血細胞移植後長期フォローアップ専門外来(LTFU:long term follow up外来)とは造血細胞移植後の患者さんに対して、血液内科女性医師と看護師(造血細胞移植学会の研修修了)で行う専門外来のことです。造血細胞移植後に無菌室から退院した患者さんにとって、日常生活を自宅でどのように過ごせばよいのか、不安でいっぱいだと思います。また、移植片対宿主病(GVHD)などの合併症が長く続いて、患者さんの生活の質を下げている場合もあります。
そんな時に患者さんがLTFU外来を受診して頂くことで、一人ひとりの不安の軽減や症状の改善に繋がるように努めています。
そこで今日は、LTFU外来の一部を御紹介しましょう。
目次
1.主治医外来との違い
主治医は、患者さんにとって一番頼りになる存在です。主治医外来では、診察、体調の変化、血液検査、他の検査結果から現在の病状を把握して、治療や投薬がメインになります。外来ではなかなか個々の生活相談に乗っている時間が無いのも現実です。
そこで、LTFU外来では、女性の医師二人が看護師と共に外来を担当することで、各々の患者さんの状況や理解度に合わせた対応をしています。このため時間も少しだけ長くとって診療をし、お話を聞いています。また、主治医外来が終了した患者さんに対しても、晩期合併症対策やがん検診など長期にわたってフォローしています。
2.GVHD(移植片対宿主病)の評価
外来の前に問診票を患者さんに記入してもらいます。それを基に、現在のGVHDの評価を
細やかに行うことで、患者さんにもその時々に応じた対応を丁寧に説明しています。
3.皮膚や口腔ケアの指導
皮膚や口腔内にGVHDが出ている時に主治医から処方されている塗薬の使い方や、口腔ケアの方法について、患者さんと確認しながら診察を進めていきます。また、歯科や皮膚科など他科のより専門的な治療や投薬が必要な時には、すぐに受診ができるように各科の医師と連携しています。
4.感染予防・日常生活指導
造血細胞移植後は、免疫が完全に回復するまでに約2年かかります。白血球が回復しても、感染に対する抵抗力は低下しているため、感染症にかからないように注意しながら生活する必要があります。そのため、個々の病状や生活環境に合わせた食事指導や日常生活指導が必要となります。LTFU外来で個別に相談できることで、患者さん自身が必要な知識を身に付け、安心して日常生活の幅を広げられるようにお手伝いをします。
5.予防接種
造血細胞移植後は幼少時に接種した水ぼうそうや、はしかなどの抗体が無くなっていることが多くあります。そのため免疫抑制剤が終了し、移植後2年を経過した頃に抗体価を測定します。必要な予防接種の種類や注射する時期について個々にご案内します。
6.がん検診の案内
造血細胞移植後の固形がんの発生確率は、一般の人に比べてやや高いと言われています。
移植後一年を経過したところで、会社や市町村の検診をなるべく受けましょう。
検診する場所がわからない患者さんには、提携している検診センターをご紹介するシステムもあります。検診を受ける項目や場所、時期については個々に相談します。
7.復職支援
造血細胞移植後、いつ頃職場に復帰できるかは、患者さんにとって大きな悩みの一つです。
各々の仕事内容や職場環境、働き方など、ひとりひとりが抱える問題に丁寧に向き合い一緒に考えながら提案をしていきます。また、どこで、働いていいかわからない等々の悩みがある人には、駒込病院の中でハローワークによる復職支援の案内もしています。
8.その他の悩み相談
退院後、患者さん・御家族は様々な問題に直面します。眠れない、再発したらどうしよう?
嫁としての務めができない、何をどのくらい食べたらいいの?等々、患者さんの悩みは多岐にわたります。アピアランス(化粧、髪、爪など)、レジャー(国内旅行、海外旅行、温泉など)、趣味(ダンス、運動など)や社会生活(日常生活、仕事、家事、育児、家族間の問題など)の点においても、患者さん一人ひとりの状況が異なります。そのような時に男性の先生には話しづらいことでも、女性の先生になら話せるかも?看護師になら話せるかも?などのよろず相談にも気軽に応じています。少しでも皆さんの力になれるよう、努めていますので、遠慮なくお話下さい。
9.受診について
当院・他院を問わず、造血細胞移植を受けたすべての患者さんと御家族が対象です。
詳しくはLTFU外来のホームページをご覧下さい。
LTFU外来
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