小腸悪性腫瘍
1. 小腸悪性腫瘍とは
小腸の腫瘍は消化管腫瘍の3〜6%といわれている非常にまれな疾患です。腺がん、悪性リンパ腫、GIST、カルチノイドなどいくつかの種類があります。
2. 診断
小腸内視鏡、CT、MRI、PETなどで診断しますが、最終診断は切除標本により決定されることが多いです。
3. 治療法
切除可能な場合には手術療法が検討されます。状況により腹腔鏡下手術が可能な場合もあります。切除困難な場合でも腫瘍による通過障害、出血がみられる場合は症状緩和のために手術が行われることもあります。
神経内分泌腫瘍
1. 神経内分泌腫瘍とは
神経内分泌腫瘍（Neuroendocrine tumor:NET ）は神経内分泌細胞から発生する腫瘍です。膵は消化管、肺に見られることが多いです。内分泌ホルモンを産生している場合には、さまざまな随伴症状を伴います。低血糖で救急搬送され、調べて見たらインスリノーマ（インスリンを分泌する腫瘍）が判明したということがあります。WHOが作成した分類に基づいた病理学的な診断によってNET G1、NET G2、NEC（神経内分泌がんと呼ばれることもあります。）と大きく3つに分類され、発生部位も考慮して治療方法を決定して行きます。
2. NET G1とNET G2に対する治療
外科手術
手術は唯一根治を望むことができる治療です。原発巣の部位により担当診療科が決まります。他の臓器に転移した場合（特に肝転移）でも、予後の延長が期待できる場合があります。消化器系の場合には膵臓を含め腹腔鏡下手術が行えるようになりました。
その他の治療
肝転移病巣に対してラジオ波焼灼術、肝動脈化学塞栓療法や放射線治療が行われます。
薬物療法
ソマトスタチンアナログ、エベロリムス、スニチニブ、ストレプトゾシン等の治療を行っています。
3. NEC（神経内分泌がん）に対する治療
シスプラチンとエトポシドの併用療法、あるいはシスプラチンとイリノテカンの併用療法を行なっています。
後腹膜腫瘍
1. 後腹膜腫瘍とは？
腹部のうち、消化管が収まっている部分を腹腔内と呼びます。その背側の腎臓・尿管・膀胱などの泌尿器系あるいは大動脈・大静脈などの血管系が存在するスペースを後腹膜といい、ここに生じた腫瘍を後腹膜腫瘍と呼んでいます。さまざまな良性腫瘍の他に、悪性リンパ腫、脂肪肉腫、平滑筋肉腫、線維肉腫などの悪性腫瘍があります。
2. 診断
CT、MRI、PET、シンチグラム検査などで確認出来ますが、最終診断は手術あるいは生検による切除標本に対して、特殊染色検査を含めた病理学的検索で可能となることも少なくありません。
3. 治療法
病理組織型により手術、放射線療法、化学療法など治療法は異なります。これらを組み合わせて集学的治療を行うこともあります。切除可能な肉腫の場合には初発、再発時を含めて可及的に手術を行います。
性腺外杯細胞腫
1. 性腺外胚細胞腫とは?
精巣や卵巣で精子や卵子となるはずの細胞が体の他の部位にあり、その細胞が腫瘍となったものです。脳の松果体やその付近、縦隔内、腹部などの体の中心線上に発生します。性腺外胚細胞腫瘍は集学的治療により治癒が可能な悪性疾患です。
良性の場合もあれば、悪性（がん）の場合もあります。良性の性腺外胚細胞腫瘍は良性奇形腫とも呼ばれ、しばしば非常に大きく成長します。悪性の性腺外胚細胞腫瘍は非セミノーマとセミノーマの2種類に分けられます。
2. 診断
血液検査ではαフェトプロテイン（AFP）、ヒト絨毛性ゴナドトロピン（hCG）などの腫瘍マーカーが有用です。CT、PET検査で腫瘍の存在する部位を診断します。生検で得られた組織を顕微鏡で観察し診断します。これらの情報を総合的に判断して、非セミノーマとセミノーマともその予後を予測することが行われ（good prognosis、intermediate prognosis、poor prognosis）、治療戦略決定の参考とされます。
3. 治療
化学療法、手術、放射線治療を組み合わせて治療が行われます。
良性奇形腫 手術が行われます。
セミノーマ
- good prognosis BEP療法3コース、EP療法4コース
- intermediate prognosis BEP療法4コース、（VIP療法4コース）
非セミノーマ
- good prognosis BEP療法3コース、EP療法4コース
- intermediate prognosis BEP療法4コース、（VIP療法4コース）
両者とも治療後も腫瘍が残存している場合には手術で取り除きます。 - poor prognosis
化学療法後に残存腫瘍があり、切除可能であれば手術で取り除きます。