消化管疾患(食道・胃・十二指腸・小腸・大腸)
消化管は食道、胃、十二指腸・小腸、大腸に分けられ、内視鏡などの検査を用いて診断や治療を行っております。当院では鎮静・鎮痛剤を用いた上部消化管内視鏡検査、大腸内視鏡検査を行っており、患者様に苦痛なく検査を受けられるように努めております。
内視鏡設備は主にオリンパス社製内視鏡システム(EVIS LUCERA ELITE)を使用しておりますが、2023年には富士フィルム株式会社製内視鏡システムも導入いたしました。色素や拡大機能のある内視鏡などを用いて病変の診断や早期癌の発見、治療を行っております。
- 早期悪性腫瘍、ポリープに対する内視鏡治療
早期癌の中でも特に初期段階にある病変は内視鏡で切除するだけで治療を終了できる場合があります。内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)が代表的な治療です。
内視鏡治療は外科手術に比べて体の負担や後遺症が少ないのが特徴です。順調に治療が進めば約1週間で退院となります。内視鏡で根治できるかどうかの判断は癌の深さなどによって決まります。切除した病変を顕微鏡検査して判断することとなります。大腸のポリープは小さなものは外来で切除できる場合もありますが、大きなものや血液を固まりにくくする薬を飲んでおられる場合は2~3日程度入院していただくこともあります。大きな病変の場合は早期癌と同じように1週間程度の入院治療が必要となることもあります。 - 消化管出血に対する内視鏡治療
胃・十二指腸潰瘍、食道静脈瘤破裂や大腸憩室出血などの主として血管が破れて出血を起こしている場合に行う処置です。
破れた血管を挟み込んで止血するクリップ止血や焼き固める凝固止血、ゴムのバンドで縛る結紮術、薬の注入などの方法があり、病気の原因や状況に応じて処置の方法を選択しています。 - 炎症性腸疾患
炎症性腸疾患であるクローン病、潰瘍生大腸炎は共に国の難病に指定されており、その患者数は毎年増加傾向にあります。また近年では多くの新薬が登場したことで、適切な治療を行うことで安定した病状(寛解)を達成することができるようになってきています。
当院では基本の治療薬である5-ASA製剤(ペンタサR、アサコールR、リアルダR、サラゾピリンR)だけでなく、ステロイド製剤(プレドニンR、ゼンタコートRなど)、免疫調節剤(イムランR、アザニンR、ロイケリンRなど)、生物学的製剤などの各種新薬(レミケードR、ヒュミラR、シンポニーR、エンタイビオR、ステラーラR、ゼルヤンツR)を用いた治療を行っております。
また診断、治療に必要な通常の胃カメラ、大腸カメラ検査だけでなく、特にクローン病では小腸病変の診断のため、現在では東京医科歯科大学の放射線科医師との連携により主に小腸病変の評価で使用するMRI(MR enterocolonography: MREC)を行うことができ、日常診療に使用されています。現在は軽症、中等症、重症を含めて外来、入院診療共に専門の医師が対応できる診療体制が整っています。
さらに、必要に応じて近隣や提携する医療機関(東京医科歯科大学、帝京大学、日本大学板橋病院など)とも連携しております。
肝臓疾患
対象となる疾患は各種肝炎(B型肝炎、C型肝炎、自己免疫性肝炎、NASHなど)、肝硬変(アルコール性、原発性胆汁性肝硬変など)、肝がんです。慢性肝炎・肝硬変の原因としてウイルス性(B型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス)、自己免疫性(自己免疫性肝炎、原発性胆汁性胆管炎)、非アルコール性脂肪肝炎(NASH)、アルコール性、代謝性などがあります。
当院ではウイルス性肝炎の治療を積極的に行っており、肝炎ウイルスの増殖抑制や完全消失を目指しながら、肝がんの予防や早期発見に努めています。近年ウイルス性肝炎治療の進歩は目覚ましく、特にC型肝炎においてはウイルスが肝臓の細胞内で増える過程を直接抑制する新薬(飲み薬)が開発され、これまで治療が難しいと考えられていた患者さんでも治癒を目指すことができるようになりました。
2007年までは肝硬変の成因としてウイルス性が約70%を占めておりましたが肝炎の内服治療の進歩によりC型肝炎ウイルスによる肝硬変は減少傾向にあります。代わりにアルコール性肝硬変や肥満、糖尿病などの生活習慣病に起因するNASHによる肝硬変が増加傾向です。慢性肝炎や肝硬変は肝がん発症のリスクが高く定期的に腫瘍マーカーの測定や画像検査を行う必要があります。
当院では数ヶ月おきにエコーやCT、MRIなどの画像検査を行い肝がんの早期発見に努めており、外科・放射線科とも連携し、肝がんが見つかった時は早期治療を行えるような体制を整えております。肝がんに対しては、ラジオ波焼灼療法(RFA)、肝動脈化学塞栓療法(TACE)、分子標的薬による化学療法や外科的治療など、それぞれの症例に合わせて治療を行っています。
膵臓胆道疾患
臓疾患には急性膵炎や慢性膵炎、自己免疫性膵炎、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、膵癌などがあります。胆道疾患としては胆嚢結石や胆管結石による胆嚢炎・胆管炎や胆嚢癌、胆管癌、十二指腸乳頭部癌などの悪性疾患、IgG4関連胆管炎や原発性硬化性胆管炎などがあります。
- 急性膵炎・胆嚢炎・胆管炎
これらは緊急性のある疾患であり24時間体制で対応しております。また胆管炎や胆嚢炎は早急な内視鏡的もしくは経皮的な胆道ドレナージが必要となることが多く、緊急処置をいつでも行えるような体制を整えております。 - 膵嚢胞
検診のエコーで偶然見つかることが多い膵嚢胞にはいくつか種類がありますが、頻度として最も多いのが膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)というものになります。IPMNは良性から悪性まで様々な段階があり、良性から悪性へと徐々に変化していくことが知られております。それゆえに、どの段階にあるのかを画像検査で見極めることが重要です。また、このIPMNがあると別の場所に膵癌が発生するリスクが通常より高いと言われております。そのためIPMNと診断されたら慎重な経過観察が重要となります。当院では腹部エコー、CT、MRI、超音波内視鏡(EUS)を用いて慎重な経過観察を行っております。 - 膵臓癌・胆道癌
膵臓・胆道は消化管のように直接内視鏡で観察することはできず、体外式超音波検査では消化管のガスの影響で描出することが困難な症例が多いため、癌の早期診断が難しく、見つかった時にはすでに他の臓器に転移を起こしていることが多いのが現状です。
当院では危険因子や臨床症状、検査異常のある患者様に対しては希望があれば積極的にEUSやMRCP、造影CTなどを行い、必要があればEUS-FNBやERCPを追加し膵臓癌・胆道癌の早期発見に努めております。
腫瘍疾患
当院ではがん薬物療法専門医による外来を行っております。手術不能な進行・再発の消化器がんに対し、抗がん剤、分子標的薬、放射線治療、免疫治療を用いて治療を行っています。薬剤の効果は、主に生存期間の延長が認められたことで示されており、様々な薬剤、放射線を用いて徐々に改善されてきております。また、治療は副作用を軽減する努力が行われてきたことにより、主に外来で治療を行い日常生活の向上を目指しております。
特に今は、免疫治療が加わる事によってさらに長生きされる方もいらっしゃいます。がんは遺伝子変異により、発生し進行することがわかっています。その遺伝子変異をターゲットとした治療によっても生存期間の延長が報告されるようになってきました。また、同じがん種であっても、患者様によっては異なる遺伝子変異が見つかり、それに対応した治療をする事の重要性も指摘されています。そのため、がん組織や血液から腫瘍の遺伝子変異を検査し、ターゲットとなる遺伝子変異が見つかった時には、そこを標的とする薬剤が使われるようになってきています。最近は、腫瘍組織の網羅的な遺伝子検査が保険診療で認められるようになりました。
当院では、ゲノム診断については、大学のゲノム診療科に解析を依頼し、大学でのエキスパートカンファレンスにおいて、専門医と一緒に解析検討しております。患者様には大学の専門医に充分に説明を聞いて頂いた上で、治療を行っています。より効果が高く、副作用(有害事象)をできるだけ軽減していく事を目標に、スタッフと一丸とな って治療にあたっていますので、是非ご相談にいらして下さい。