ボツリヌス治療のご案内

ボツリヌス治療

ボツリヌス治療とは、主に脳卒中後の後遺症で筋の過緊張による手足のつっぱり(痙縮)に対して行う新しい治療法です。緊張した筋肉へ緊張を和らげる薬剤を注射して、つっぱりを軽減させます。当院では2011年1月より治療を開始以来、2023年までに1,750件の治療実績を有しています。詳細は以下の通りです。手足のつっぱりでお悩みの方は、是非一度当院のボツリヌス治療外来へご相談下さい。

ボツリヌス施中件数

リハビリテーション科部長
尾花 正義

・外来・入院治療

外来診療日:木曜午後 14時00分16時00分

当院リハビリテーション科では、脳卒中後遺症などによる手足のつっぱり(痙縮)に対して、ボツリヌス治療をリハビリテーション(理学療法・作業療法)と併用して、34週間の入院で行っています。手足のつっぱりやそれに伴う歩行などの日常生活動作の不自由さには、ボツリヌス治療だけでなく、リハビリテーションを併用することでより効果が認められます。

外来予約は電話にて受け付けております
電話番号:03-5734-5489

・トピック

・取材

・脳卒中と手足のつっぱり(痙縮)

脳卒中でよくみられる運動(機能)障害の一つに手足のつっぱりという症状があります。手足のつっぱりとは筋肉が緊張しすぎて、手足が動かしにくくなったり、勝手に動いてしまう状態のことです。

手足のつっぱりは、手指が握ったままとなり開こうとしても開きにくい、肘が曲がる、足先が足の裏側のほうに曲がってしまうなどの症状がみられます。

手足のつっぱりによる姿勢異常が長く続くと、筋肉が固まって関節の運動が制限され(これを拘縮(こうしゅく)といいます)、日常生活に支障が生じてしまいます。また、手足のつっぱりがリハビリテーションの障害となることもあるので、その治療が重要となります。

・ボツリヌス治療と効果

ボツリヌス治療は、ボツリヌス菌が作り出す天然のたんぱく質(ボツリヌス毒素)を有効成分とする薬(ボトックス®、ゼオマイン®)を筋肉内に注射する治療法です。 A型ボツリヌス毒素製剤には、筋肉をつっぱらせている神経の働きを抑える作用があり、この A型ボツリヌス毒素製剤を注射すると、筋肉のつっぱりをやわらげることができます。

ボトックス治療イラスト

イラスト:OTナガミネのリハビリイラスト集より

・ボツリヌス治療の副作用

ボツリヌス注射を受けた後に副作用が出る場合があります。症状は以下のようなものがあります。

  • 注射部位がはれる、赤くなる、痛みを感じる
  • 体がだるい、力が入らない、立っていられない
  • 吐き気がする
  • 呼吸が苦しい
  • 全身が赤くなる
  • 物が飲み込みにくい
  • けいれんがおこる
  • これらの症状の多くは一時的なものですが、症状があらわれた場合は担当医師に相談してください。

・当院のボツリヌス治療の流れ

ボトックス治療の流れ

・当院ボツリヌス治療の特徴

・チーム連携

チーム連携

当院のボツリヌス治療はさまざまな職種が連携して治療にあたります。
患者さんがなぜ困っているのか、またその家族がなぜ困っているのかを 理解し、医師によるボツリヌス治療の適応判断、リハビリテーションを担当する理学療法士、作業療法士がその筋肉などを評価し、必要であれば義肢装具士による装具の検討を行います。患者と医療者との意思の疎通はもちろん、野球で言えば投手と捕手のバッテリーのような連携で多職種で手足のつっぱりの治療にあたります。

・注射の方法

注射の方法

当院のボツリヌス注射は筋電計と超音波エコーを活用して、筋肉に対して、より正確にボツリヌスを注射するようにしています。
比較的皮膚に近い筋肉は見て、触ればわかります。しかし、皮膚から深い場所にある筋肉は、場所の特定が困難な場合があり、狙った筋肉に薬剤が注入できない場合があります。このようなことを防ぎ、ボツリヌスの効果を最大限発揮するために筋電計と超音波エコーを用いて、注射しています。

・リハビリテーション

リハビリテーション

ボツリヌス治療を受けられる方は施注前から理学療法士、作業療法士によるリハビリテーションを行います。理学療法士、作業療法士は手足のつっぱりがバランスや歩行、日常生活の動作にどのように影響しているかを考え治療を行います。
ボツリヌス注射後は同日よりリハビリテーションを開始します。 リハビリテーションのプログラムは電気治療やストレッチ、筋力トレーニング、バランス練習、歩行練習、食事や家事などの具体的な動作練習などを基本に患者の個々に応じたプログラムを作ります。

・ボツリヌスに関する学会報告・研究実績

  • The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 49巻(20125月) 原田貴子(医師)、尾花正義(医師)他 【ボツリヌス治療パスの導入とその効果】
  • 総合リハビリテーション4210号 原田貴子(医師)、尾花正義(医師)他【ボトックス®クリニカルパスと入院リハビリテーションを併用した当院での試み】
  • 痙縮に対するボツリヌス療法勉強会(田園調布医師会) 尾花正義(医師)【痙縮に対するボツリヌス治療】
  • 田園調布医師会学術講演会 尾花正義(医師) 【脳卒中に伴う痙縮(手足のつっぱり)に対するボツリヌス治療】
  • 2回日本ボツリヌス治療学会ポスター発表 髙橋忠志(理学療法士)、尾花正義(医師)他【ボツリヌス治療に理学療法・装具療法の併用が有効であったパーキンソン病の一症例】 
  • 3回日本ボツリヌス治療学会主題2「訓練士の考えるボツリヌス治療」 栗田慎也(理学療法士)、尾花正義(医師)他【入院ボツリヌス治療患者に対する医師先行型から療法士先行型への介入変更とその取り組み】
  • 3回日本ボツリヌス治療学会一般口演 髙橋忠志(理学療法士)、尾花正義(医師)他【脳卒中後遺症に対してボツリヌス治療後、短期集中理学療法が歩行再建に有効であった一症例】
  • 痙縮地域e-symposium in 城南(20166月) 尾花正義(医師)【痙縮に対するチームボツリヌス療法】
  • 大田区B-VATI研究会-1回リハビリテーション実技講座-201611月) 尾花正義(医師)【チームボツリヌス療法について】
  • 54回日本リハビリテーション医学会学術集会(20176月) 関連専門職演題 栗田 慎也(理学療法士)、尾花 正義(医師)他【地域におけるチームボツリヌス療法の試み】
  • 6回市中在住脳卒中者への装具ボツリヌス併用運動療法研究会 CORABOSS#620179月) シンポジウム「地域におけるボツリヌス治療と装具の役割」 シンポジスト 髙橋 忠志(理学療法士)
  • 4回日本ボツリヌス治療学会学術大会(20179月) 一般口演 髙橋忠志(理学療法士)、尾花正義(医師)他【下腿三頭筋に対するボツリヌス療法の効果が認められなかった脳卒中片麻痺2症例の特徴】
  • 4回日本ボツリヌス治療学会学術大会(20179月) 一般口演 栗田慎也(理学療法士)、尾花正義(医師)他【Extention thrust patternに対するボツリヌス治療後のリハビリテーション経過中に足部の疼痛を生じた一例】
  • 67回日本リハビリテーション医学会関東地方会(20179月) 専門医・認定臨床医生涯教育研修会 講演1 尾花正義(医師)【地域におけるチームボツリヌス療法】
  • 市中在住脳卒中者への装具ボツリヌス併用運動療法研究会主催 CORABOSS in SHINAGAWAⅢ20184月) 髙橋忠志(理学療法士)、栗田慎也(理学療法士) 【症例ディスカッション】
  • 9Stimulation Therapy研究会in福井(20188月)ランチョンセミナー 髙橋忠志(理学療法士) 【J-BATTERYの取り組み 地域の痙縮患者を救うプロジェクト】
  • 19回東京臨床理学療法研究会(20189月)シンポジウム 髙橋忠志(理学療法士) 【荏原病院ボツリヌス療法チーム J-BATTERYの取り組み】
  • 5回日本ボツリヌス治療学会学術大会(20189)一般口演 髙橋忠志(理学療法士)、尾花正義(医師)他【地域に向けた痙縮セミナー開催の意義とこれからの課題~参加者のアンケート結果から~】
  • 5回日本ボツリヌス治療学会学術大会(20189)一般口演 栗田慎也(理学療法士)、髙橋あき(理学療法士)【生活期で関わる療法士とのボツリヌス療法連携により立位・歩行の改善が得られた一症例】
  • 52回日本作業療法学会(20189月)大村隼人(作業療法士)、尾花正義(医師)他【チームボツリヌス療法と施設職員との連携により施設生活でのADLが向上した一症例】
  • 痙縮治療実践web講演会(201811月) 髙橋忠志(理学療法士) 【痙縮患者さんを救うチーム医療とボツリヌス療法の実践】
  • 荏原病院公開講座(20191) 栗田慎也(理学療法士)、小磯寛(理学療法士)、大村隼人(作業療法士)、尾花正義(医師)手足のつっぱり、あきらめていませんか?~脳卒中後遺症の治療、ボツリヌス療法~
  • 痙縮治療セミナー in 品川(201812月) 尾花正義(医師)【ボツリヌス療法の実践 筋電計・エコーを用いた筋同定】

・医療関係者の方へ

・ボツリヌス治療見学のご案内

当院では、ボツリヌス治療の見学を随時受け付けております。お気軽にお問合せください。

対象者医療従事者(医師、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、義肢装具士、看護師、薬剤師、ケアマネジャーなど)
日程後ほど相談させていただきます
見学窓口リハビリテーション科理学療法士 髙橋忠志(たかはしただし)
電話番号03-5734-8000(代表)
E-mailtadashi_takahashi(a)tmhp.jp (注)(a)を@に置き換えてください

・JBATTERY seminarのご案内

地域の痙縮患者を救うプロジェクトとして、大田区を中心とした脳卒中後遺症の痙縮患者を救うセミナーです。当院が行っている【チームボツリヌス療法】を中心に痙縮に対する治療方法や装具の啓発をさまざまな医療介護関連職種に知っていただき、地域で痙縮に悩む患者を掘り起し、救済することが目的です。皆様、大変多忙とは存じますが、万障繰り合わせの上、ご参加の程よろしくお願いいたします。