C型肝炎ウイルス感染後の病態マーカーとしてのDHCR24抗体の有用性について(2015年06月02日)

2015年06月02日

当院の木村公則肝臓内科部長のグループは、鹿児島大学、公益財団法人東京都医学総合研究所(以下医学研という)
金沢大学との共同研究により、C型肝炎ウイルス(以下「HCV」という。)感染後の病態マーカーとして、血清DHCR24抗体が有用であることを突き止めました。
なお、本研究は、「EBioMedicine」オンライン版にIn Pressとして公表されています。

1 経緯

鹿児島大学小原恭子教授と医学研小原道法プロジェクトリーダーのグループは、HCVタンパク質をコードする遺伝子を導入した細胞をマウスに免疫し、抗体を取得した。得られた抗体から、肝がん細胞を特異的に認識する抗体を選択し、抗体はDHCR24を認識する抗体であることを見出した。さらに、DHCR24が正常肝細胞や肝細胞がん症例の非がん部と比較して、肝細胞がん症例のがん部及び肝がん細胞株において特に高発現していることを認めた。以上の知見をもとにDHCR24を認識する抗体価の測定は、HCV陽性肝細胞がんの診断に有効であるか検討するに至った。

2 結果

当院、金沢大学などの施設から約400症例のHCV陽性慢性肝疾患、肝硬変、肝細胞がん症例の血清を用いてDHCR24抗体価を測定した結果、DHCR24抗体価が肝臓の病態進行に伴って上昇することが明らかとなった。この結果は、B型肝炎ウイルスに起因する肝病変には認められず、HCV特異的であることを認めた。また、肝がん症例の測定において、従来の肝細胞がんの診断に用いられる腫瘍マーカー(AFP、PIVKA-II)陰性例でもDHCR24抗体価の上昇を認めた。

3 意義

  1. HCVによる肝病変の進行度を血液検査にて診断可能となり得る。
  2. HCV陽性肝細胞がんで従来用いられている腫瘍マーカー(AFP、PIVKA-II)陰性例でもDHCR24抗体価は上昇しており、肝細胞がんの早期発見に有用な可能性がある。

4 今後の予定

HCV陽性肝細胞がんの診断の有用性を検証するため、慢性肝炎、肝硬変症例を対象とした前向きのコホート研究を行い、今後、早期肝細胞がんの診断に非侵襲的な血液検査で診断可能か、症例数を積み重ね解析する予定としている。

  • DHCR24は、アセチルCoAからコレステロールを合成する経路の最終段階で作用する還元酵素である。
  • 「EBioMedicine」はCell Press と The Lancetとが編集プロセスをサポートし、トランスレーショナル研究成果を掲載するジャーナルである。

2015年度