視神経脊髄炎(関連疾患)(Neuromyelitis Optica (Spectrum Disorders), NMO(SD))とは

NMO(SD)ってどんな病気ですか?

視神経脊髄炎(関連疾患)(Neuromyelitis Optica (Spectrum Disorders), NMO(SD))は、視神経や脊髄を中心とした中枢神経に炎症性の病変が生じる、自己免疫性疾患です。日本では、視神経脊髄型の多発性硬化症(MS)として診療されてきましたが、MSよりも視神経障害が高度だったり、脊髄病変が縦に長いといった、MSとは異なる特徴を有していることが報告されるようになりました。2004年にこれらの患者さんの血清には、NMO-IgGとよばれる、中枢神経組織を標的とした自己抗体が存在することがわかりました。そしてこの抗体は、古くから欧米で報告されてきたNeuromyelitis Optica(NMO)という病気でもみられることから、日本で視神経脊髄型MSとされてきた病気は実はNMOであったということがわかったのです。2005年には、NMO-IgGは、アストロサイトに発現しているアクアポリン4(AQP4)という分子に対する抗体だということが判明し、NMOはMSとは似て非なる病気だということがわかったのです。その後数回の診断基準改定をうけて、現在はNMOSD Neuromyelitis Optica Spectrum Disorders)とよばれています。

MSってどんな病気ですか

どんな症状ですか? これからどうなりますか?

病名のとおり、視神経と脊髄に障害をきたしやすく、いずれも非常に重篤になりうることが特徴です。すなわち、1回の発作で失明したり、歩行不能になったりすることもある、非常におそろしい病気です。一方で、一部の例外を除いて、MSのような緩徐な進行はみられないとされています。

NMO(SD)ってどんな症状

どんな検査が必要ですか?

診断には、多発性硬化症(MS)と同様、専門の医師による診察と頭部や脊髄のMRI撮影、髄液検査、視覚誘発電位、眼科的診察などが必要ですが、特に血液の抗AQP4抗体検査は必須です。診断基準(ウィンガーチャック診断基準)をもとに診断しますが、抗AQP4抗体が陽性でなんらかの中枢神経症状がある場合は、ほぼNMOSDであることが確実です。

どんな治療がありますか?

急性期(再発時)と寛解期における再発予防の治療に分けられます。多発性硬化症(MS)と同様、急性期にはできるだけ早くステロイドパルス療法を行うのが効果的です。ただし、無効例も少なからず存在し、その際には速やかに血液浄化療法に移行するのが得策です。ステロイドパルス療法のあと、経口ステロイド薬の内服を継続しながら血液浄化療法をしばらく続けることが多いです。
再発予防の治療は、ごく最近まで経口ステロイド薬と免疫抑制薬の組み合わせで行うことがほとんどでした。多くの患者さんはこの治療で安定していましたが、それでも再発を繰り返してしまう例も少なからずあり、十分な治療とはいえませんでした。しかし、2019年以降、「分子標的薬」とよばれる、NMOSDの病態において重要な役目を果たしている分子を標的として、それらをブロックするような薬剤が次々と発売されています(表)。これらは、高価な薬剤ではあるものの非常に高い有効性を有しており、今後のNMOSD治療薬の中心になっていくと予想されます。