松沢病院が育てようとしている人材とは-松沢病院でレジデントを、と考えている方々へ-
松沢病院が、ジュニアレジデントの2年間、シニアレジデントの3年間を通じて、若い医師に伝えたいことは、医師としての深い知識、確かな技術、高いモラルです。 大学で学んだ知識は、臨床研修を通じて深化することによって、柔軟な臨床知となります。深化した知識は臨床的な技術に展開されなければ役に立ちません。技術は修練を重ねて確かなものになっていきます。医療上の知識や技術は、その水準が高ければ高いほど、専門的であればあるほど、使い方を誤れば大きな悲劇を引き起こします。だから、医師には高いモラルが求められているのです。知識の深化、技術の修練、臨床モラルの涵養は、三位一体となって初めて力となり、どれか一つが欠ければたちどころに全体が意味をなくします。
ジュニアレジデントとしての2年間で、私たちが育てたいのは、『精神障害者に偏見を持たない医師』です。初期研修の2年間では、総合病院で研修した医師に負けない、臨床医としての総合的な基礎を身につけることが原則です。同時に、松沢病院の内科系、外科系の病棟研修や麻酔科実習などを通じて、精神に病気を抱えた人にも特別な感情を持たずに、医師として治療に当たることができる基礎を作ってもらいたいと思っています。
シニアレジデントの3年間で育成したいのは、『身体疾患にも自信を持って対応できる精神科医』です。多くの精神疾患は身体の機能と深い関連を持っており、身体の機能に対する医学的な洞察なくして精神機能を理解することはできません。松沢病院のシニアプログラムでは、3年間で、精神神経学会専門医、精神保健指定医の資格を得るために必要な経験を積むと同時に、身体疾患についても基本的な診断や対応ができる実力を維持することを目指しています。ジュニアで研修したことを、シニアの3年間で何度か再確認することで、知識と技術は確実に身につきます。 シニアレジデント終了後、クリニカルフェローという制度をつかえば、精神科の中の特殊な分野について専門的な能力を磨くことも可能です。
最後に、東京医師アカデミーの目的について説明をしておきます。東京医師アカデミーは、都立病院で、都民の健康を守る事業に貢献する医師を養成するためのシステムです。都立病院は一般の病院とは違って、行政医療と呼ばれる、不採算ではあるけれどなくてはならない医療を担っています。したがって、レジデント終了後は、一定の期間、東京都のために奉職していただくということが原則です。(この条件を満たすことはできないが、松沢病院で専門医の資格を取りたいという方のためには、別の方法で働いていただくことができます。ご相談ください。)