前立腺がん

前立腺がんの罹患数は男性第1位。PSA検査を受けましょう

前立腺は膀胱の下の方、尿道を取り囲むように位置しており、主に精液産生に関連した役割をもっています。前立腺がんは前立腺に発生した悪性腫瘍であり、前立腺肥大症とともに、中高年の男性において注意すべき前立腺の病気のひとつです。
近年では食生活の欧米化ならびに高齢化社会の到来とあいまって、日本の前立腺がん罹患数は2015年以降、男性がんで第1位となっています。

がん罹患数

他の臓器のがんと比べるとゆっくり進行しますが、初期には自覚症状がほとんどないため、発見が遅れることがあります。前立腺がんは進行すると骨や離れた臓器にまで転移することがあるため、早期に発見し、適切な治療を行うことが大切になります。
前立腺がんの発見にはPSA検査が有効です。PSA検査は採血をするだけで前立腺がんの疑いを調べられるので、身体への負担もほとんどなく、費用も比較的安価です。

注目情報PSA検査…前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA(前立腺特異抗原)の血液中の値を測定する検査

症状

前立腺がんは主に尿道から離れた部分に発生するため、早期では自覚症状はみられません。しかし、同時に発症していることの多い前立腺肥大症による症状(排尿障害など)が現れることがあります。がんが進行し、尿道や膀胱を圧迫するようになると、排尿時の症状や血尿などを自覚するようになります。

さらに進行すると骨への転移による腰痛や骨折などを認めることがあります。腰痛や骨折の検査を受けた際、骨への転移が疑われ前立腺がんが見つかるケースもあります。

診断

前立腺特異抗原PSA検査、直腸内触診、画像検査(超音波検査、前立腺MRI検査)などでスクリーニング検査(前立腺がんの可能性がある人を見つけるための検査)を行います。

これらスクリーニング検査によってがんが疑われた場合には、確定診断を行うために針生検(前立腺生検)を行います。

ここでがんが確定された場合は、画像検査(CTや骨シンチ検査など)での病期診断を行い、がんの進行度を確認します。

がんが前立腺の中にとどまっているものを限局性前立腺がんといい、低リスク群・中間リスク群・高リスク群の3つに分類されます。
がんが前立腺の被膜を破って外側へ広がっている場合は局所進行前立腺がんといい、超高リスク群と分類されます。

進行がんになると、前立腺に隣接する膀胱や直腸に浸潤し、骨盤内のリンパ節への転移、さらには骨や離れた臓器への転移(遠隔転移)が見られるようになります。

治療

前立腺がんには、手術療法・放射線療法・薬物療法(ホルモン療法、抗がん剤)などがあり、これらの治療を単独あるいは併用して行います。

がんの進行度や悪性度、さらに、患者さんの年齢や全身状態を考慮し、それぞれに適した治療法を選択します。

豊島病院ではいずれの治療も行うことができ、さらに患者さんそれぞれの背景や希望をふまえて、最適な治療を提供しています。

 

  1. 手術療法
    がんが前立腺内にとどまっている限局性前立腺がんの患者さんが適応となります。前立腺全摘除術(前立腺と精嚢を切除し、さらに膀胱と尿道をつなぎ合わせる手術)が行われます。手術方法には開放手術、腹腔鏡手術、内視鏡下ミニマム創手術、ロボット支援下手術(ダビンチ)などがあります。
    身体への負担が大きいため、全身状態が良好で、余命が10年以上見込める患者さんが適応とされています。
    ダビンチ手術
  2. 放射線療法
    前立腺に放射線を照射して、がん細胞を死滅させる治療法です。手術療法と同様、限局性前立腺がんの患者さんに適応となり、単独もしくは内分泌療法と併用して行います。
    手術療法に比べて身体的負担が少なく、手術を行うことができない高齢の患者さんにも行うことができます。また、がんを死滅させる目的だけでなく、転移したがんによる痛みを除くことを目的として行うこともあります。
    また、前立腺がんは先進医療である重粒子線治療の適応がんでもあます。
  3. 薬物療法
    ホルモン療法(内分泌療法):前立腺がんには、精巣や副腎から分泌されるアンドロゲンという男性ホルモンの刺激で病気が進行する性質があります。ホルモン療法は、アンドロゲンの分泌や働きを妨げる薬によって前立腺がんの勢いを抑える治療です。
    高齢、全身状態不良で手術療法や放射線治療を行うことが難しい場合や、遠隔転移している前立腺がんに対し行われます。

    化学療法:ホルモン療法の効果がなくなったがん(去勢抵抗性前立腺がん)に対して行います。

  4. その他の治療
    PSA監視療法:病期診断の結果、治療を開始しなくても余命に影響がない前立腺がんと判断された場合に経過観察を行う監視療法という方法もあります。監視療法では、定期的にPSA検査や前立腺生検を行い、病状悪化の兆しがみられた時点で治療を開始します。

    緩和的治療:薬物療法を行っても病勢のコントロールがつかず、最終的には緩和的療法の対象となることが多くあります。前立腺がんでは病状悪化に伴い、骨転移巣の疼痛、脊椎転移による脊椎麻痺、排尿困難、血尿、尿路閉塞に伴う腎後性腎不全などが起こる可能性があり、これらの症状に対し緩和的治療を行うことがあります。

さいごに

前立腺がんは自覚症状に乏しく、発見が遅れることが多いがんといわれています。自覚症状が出たのちに発見される前立腺がんの約40%はほかの臓器に転移しており、一方、無症状ながらPSA検査や、検診によって発見された前立腺がんの約60%は早期のがんであったという報告もあります。そのため、前立腺がんの早期発見に役立ち、死亡率を低下させるPSA検査の啓発が進んでいます。前立腺がんが心配な方は是非泌尿器科までご相談ください。