栄養部門では医療の一環として、栄養・食事の面から患者さんを支援しています。
- 1 おいしく安全で病状に合った治療食を提供しています
- 2 わかりやすく、実践しやすい栄養食事指導を実施しています
- 3 入院前から退院後まで切れ目のない栄養管理を行っています
- 4 研修や資格支援など人材育成に力を入れています
- 5 都立病院栄養科の特徴を紹介します
- 6 研究実績
- 7 栄養科の仕事内容を紹介します
1 おいしく安全で病状に合った治療食を提供しています
入院中の食事は、それぞれの患者さんの病状や年齢・性別及び噛む力・飲み込む機能に合わせたものを提供しています。
また、安全な治療食を提供するため、「東京都食品衛生自主管理認証(※)」の認定を受けるなど衛生管理の徹底を図っています。
- 東京都食品衛生自主管理認証制度とは
食品関係施設の営業者が日々取り組んでいる自主的な衛生管理を積極的に評価する東京都独自の制度です。申請した施設で行われている衛生管理の方法について、都が指定した審査事業者が審査し、都が定める基準を満たしていると認められた場合に認証されます。
食材の品質管理
料理は手作りを基本としています。原材料には、国産品を優先的に使用するなど、安全性と品質の確保に努めています。
個別対応
食物アレルギーや宗教上の理由による禁忌食品がある場合は、患者さんに合わせた個別の食事内容に調製しています。また、噛む力・飲み込む機能に障害のある方には、料理方法を工夫し、食べやすい形態の食事を提供しています。どうしても食べられない食品がある場合には、できる限り患者さんの嗜好に合わせた食べやすい食事が提供できるようにしています。
適温での食事提供
保温保冷配膳車などを使用して、温度管理を行い、あたたかいものはあたたかく、冷たいものは冷たい状態でお届けしています。
行事食
年中行事や季節のイベントに合わせた「行事食」を提供しています。
選択食
複数のメニューからお好きな食事を選べる「選択食」を実施しています。
2 わかりやすく、実践しやすい栄養食事指導を実施しています
糖尿病や脂質異常症(高脂血症)、高血圧症などの生活習慣病では、生活習慣の見直し、とりわけ食生活の改善「食事療法」が大切です。また、これらの疾病の予備軍である「メタボリックシンドローム」は、心筋梗塞や脳血管障害などを引き起こす危険が高まることから、その改善が重要とされています。
都立病院機構栄養部門では、食事療法が必要な患者さん・ご家族に、医師の指示の下「栄養食事指導」を実施しています。
個別栄養食事指導
入院及び外来の患者さんを対象に、それぞれの食事内容や生活スタイルに合わせて、食事療法が無理なく継続して実践できるよう個別に相談・指導を行っています。
集団栄養食事指導
糖尿病や高血圧症の患者さんなどを対象に、「糖尿病教室」「減塩教室」を開催し、食事療法の基本について教室形式でお話ししています。(実施している教室は病院によって異なります。)
栄養食事指導内容
糖尿病・高血圧症・心臓病・腎臓病・脂質異常症(高脂血症)など食事療法が直接治療に関係する疾患のほか、消化器の手術後、妊娠中の体重コントロールや先天性代謝異常症の食事の注意など、栄養・食事に関する様々な相談をお受けします。
また、噛む力・飲み込む機能に障害のある方、低栄養の危険のある方、がんの治療前後の方など、食事がとりにくくなった方への栄養食事指導なども行っています。
都立病院機構栄養部門が作製した、食事療法のすすめ方についての情報紹介ページです。
3 入院前から退院後まで切れ目のない栄養管理を行っています
病気などのためにエネルギーやたんぱく質が不足して低栄養状態になると、手術後、感染症にかかりやすくなるため、入院前に手術前管理のための栄養食事指導を行っています。また、食物アレルギーや宗教上の禁忌食品がある患者さんに対して、入院1食目から安全・安心な食事提供を行うため、入院前に情報収集をしています。更に、入院時には患者さんの栄養状態を評価し、栄養管理計画書を作成しています。また、医師、看護師、管理栄養士、薬剤師などの多職種が連携した医療チームで、患者さん一人ひとりの状態に合わせた栄養管理を行っています。退院後も、患者さんが住み慣れた地域で安心して療養生活が送れるように、退院に向けた支援を行っています。
入院前から入院時
- 栄養状態の評価と栄養管理: 栄養アセスメント・手術前栄養評価と栄養食事指導
- 食事情報の収集:食物アレルギー及び宗教上の禁忌食品
- 栄養状態の評価と栄養管理
栄養管理計画書作成、治療食説明(食事療法の必要性、食形態等) - 栄養食事指導計画
入院中
- 栄養状態の再評価と栄養管理
ベッドサイド訪問による食事内容の調整・栄養管理計画再評価・栄養食事指導(集団・個別指導) - カンファレンスへの参加
- 医療チームでの介入
栄養サポートチーム(NST)・褥瘡対策チーム・摂食嚥下チーム・緩和ケアチーム等
「ベッドサイド訪問」
管理栄養士がベッドサイドに訪問して治療食の説明や患者さんから直接食事についてのご意見をうかがい、より食べやすい食事が提供できるように努めています。
「医療チーム活動」
医師、看護師、管理栄養士、薬剤師、臨床検査技師、言語聴覚士、ソーシャルワーカー等、各領域の専門家の多職種で構成された医療チームが患者さんに必要なケアを行っています。
●栄養サポートチーム(NST)
医師・歯科医師、看護師、薬剤師、臨床検査技師、言語聴覚士等と共に、低栄養の患者さんをスクリーニングして回診や栄養管理に関する検討会を定期的に実施し、他医療チームや主治医と連携しながら、患者さんの栄養状態改善に取り組んでいます。
●摂食嚥下チーム
医師・歯科医師、摂食嚥下看護認定看護師、言語聴覚士、歯科衛生士等と共に、患者さんの摂食嚥下障害の診察、安全な食形態や食べ方の検討、リハビリテーションなどを行っています。
●緩和ケアチーム
医師、がん性疼痛看護認定看護師、臨床心理士、薬剤師、ソーシャルワーカー等と共に、患者さんとご家族へのケアを提案していきます。食事に特別な対応が必要な患者さんについては、管理栄養士が栄養介入し、食事調整や栄養相談を行っています。
●褥瘡対策チーム
医師、皮膚排泄ケア認定看護師、薬剤師等と共に、予防対策や褥瘡を保有している患者さんに対する具体的な治療方法、栄養状態や全身状態などを評価し、NSTと協力して、褥瘡の予防と早期治癒のため活動しています。
●病棟カンファレンス
医師、病棟看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー等と共に、各病棟、診療科で治療方針や退院支援等について、患者さんの入院中から退院後までの支援内容を検討しています。
●退院前カンファレンス(退院時共同指導)
医師、病棟看護師、退院調整担当看護師、薬剤師、ソーシャルワーカー、在宅療養担当医療機関スタッフ等と共に、退院先や退院後の方針等について情報共有しています。
退院時
- 退院に向けた支援
退院後、在宅、地域での継続的な栄養管理のために必要な情報(食種、食事形態、栄養状態等)を提供(看護及び栄養管理等に関する情報の作成) - 退院後は外来にて栄養食事指導で支援
4 研修や資格支援など人材育成に力を入れています
育成計画
各種研修の実施
新任の病院管理栄養士向けの基礎研修や専門分野についての知識向上のための専門性向上研修等、各種研修を行っています。また、各職場におけるOJT(職場内研修・現場訓練)も充実しています。
各種学会認定資格の取得
病院管理栄養士には、臨床分野での高い専門性が求められています。都立病院機構では、学会資格の取得を支援する制度があります。都立病院機構勤務管理栄養士が積極的に取得している各種学会認定資格は次のとおりです。
- 糖尿病療養指導士
- 栄養サポートチーム(NST)専門療法士
- 病態栄養専門管理栄養士
- NSTコーディネーター
- がん病態栄養専門管理栄養士
5 都立病院機構栄養科の特徴を紹介します
広尾病院
「一人でも多くの患者さんに、安心・安全・良質の医療を提供する」という運営理念のもと、重点医療である心臓病疾患、脳血管疾患などの患者さんを栄養面でサポートしています。また、外国人患者さんへの食事対応や栄養食事指導も行っています。
大久保病院
当院の特色である医療の腎疾患、循環器疾患等の患者さんをはじめ、多くの方に適切な治療食の提供や栄養食事指導による食事療法実践を支援しています。また、チーム医療活動も活発で、NST専門療法士認定教育施設として修練生を受け入れています。
大塚病院
総合周産期母子医療センターとして、栄養食事指導での小児科専用予約や妊産婦さんを対象とした母乳育児クラス、入院前食事問診、妊娠糖尿病指導などを行っています。おいしくて安全な治療食を提供し、出産祝い膳、誕生日膳も提供しています。
駒込病院
病院の理念「医療を通して人がその人らしく生き抜くことを支援する」に基づいて、がんと感染症の患者さんを中心に栄養面でサポートしています。化学療法や放射線治療における様々な副作用に対応した治療食の提供や栄養食事指導を行っています。
豊島病院
地域医療支援病院として、入院前から退院後までを見据えた栄養管理を行い、退院時の栄養情報提供にも力を入れています。また、管理栄養士が各種チーム医療に積極的に参画しています。
荏原病院
「地域を支える病院になる」という病院の基本理念のもと、栄養部門はチーム医療の一員として入院患者の栄養管理、食事提供業務を行い、食事療法が必要な患者に対する栄養食事指導、地域住民対象の講演会を行っています。
墨東病院
都立病院では唯一調理直営で運営し、ベテラン調理師が美味しい食事提供に加え、病院食のレシピ紹介も手掛けています。管理栄養士は献立作成、食材発注、在庫管理、栄養食事指導、チーム医療と病院管理栄養士業務全般に携わり、最近では地域連携の一環として退院時の栄養情報提供にも努めています。
多摩総合医療センター
多摩地域における唯一の総合的な医療機能を持つ都立病院として高度・専門医療を実施しています。チーム医療が活発に行われ、栄養科も様々なチームに参画しています。
多摩北部医療センター
入院前から退院後までの切れ目のない栄養管理を実践しています。また、地域の医療・介護従事者との定期的な交流会開催及び地域の管理栄養士の研修生受け入れ等、地域連携強化・人材育成支援にも取り組んでいます。
東部地域病院
都区部東部地域の中核病院です。退院支援等のカンファレンスに積極的に参加し、栄養情報提供書の作成など地域医療連携に力を入れています。高齢の患者さんにも、食べやすい入院食の提供とわかりやすい栄養食事指導の実施に努めています。
多摩南部地域病院
「地域を支える・地域に支えられる病院」の基本方針の元、地域医療支援病院として医療連携を推進しています。入院前からの栄養介入、退院先医療機関等への栄養情報提供を行い、切れ目のない栄養管理を実践しています。
神経病院
当院は神経難病の専門病院で、摂食嚥下機能が低下した患者さんが多く、食べやすく飲み込みやすい形態に調製した食事を提供しています。自宅でも食べやすい食事が作れるよう、栄養食事指導に動画などを取り入れています。
小児総合医療センター
患者さんの成長・発達段階を考慮した安全で、おいしく、楽しい食事提供に努めています。また、栄養食事指導を通じて、患者さんの食育やご家族の支援にも力を注いでいます。
松沢病院
長期入院の患者さんが多い当院では、バランスのとれたおいしい食事を提供して規則正しい療養の支援をするとともに、退院時や外来での栄養食事指導によって地域生活支援に取り組んでいます。
6 研究業績
7 栄養科の仕事内容を紹介します
病院は365日稼働する職場なので、平日は日勤と遅番(1名)の2種類の勤務時間で、土日祝日は交代で勤務しています。週休は2日で、年次有給休暇等があります。
臨床栄養管理や給食管理など管理栄養士ならではの仕事について、1日の流れ(私の一日)を示してみました。これ以外にも、医療安全のためのリスクマネジメント、感染管理等へ病院の一部門として関わっています。さらに、給食業務を委託している業者とのコミュニケーションも、安全で質の高い食事提供のためには不可欠です。