遺伝性乳がん卵巣がんとは?
遺伝性乳がん卵巣がんは、遺伝性のがんの種類の一つで、英語の頭文字を取って、HBOC(hereditary breast and ovarian cancer)と呼ばれることもあります。乳がんの患者さんのうち約4%はHBOCであると報告されており、乳がんの他に、卵巣がんや、前立腺がん、すい臓がんなどの特定の臓器にがんが発症しやすくなるため、この情報をがんの早期発見や予防といった健康管理に活かすことができる可能性があります。
HBOCと診断されると、ご自身の父、母、きょうだい、子どもは男女関係なく1/2の確率で同じHBOCの可能性があります。がんを発症していない方でも遺伝学的検査でHBOCと診断をすることで、その情報を健康管理に活かすことができる可能性があります。
HBOC外来の対象
HBOCの外来の対象者は、乳がんや卵巣がんなどがんを発症したことのある方だけではなく、ご家族にHBOCと診断された方がいらっしゃる方や、乳がんや卵巣がんの遺伝が心配な方も対象となります。
HBOC外来では、医師と認定遺伝カウンセラー®により遺伝カウンセリングが行われ、患者様やそのご家族の病気の状況やお悩みをお聞きしながら、遺伝性乳がん卵巣がんに関する医療・社会的サポートなどについて分かりやすく説明いたします。プライバシーには十分配慮しております。遺伝に関する心配・不安などを安心してお話ください。
HBOC外来を保険診療で受診する場合
ご本人に乳がんもしくは卵巣がんの既往歴があり、遺伝性乳がん卵巣がんを疑う状況があれば保険で遺伝カウンセリングと遺伝学的検査を受けることができます。ご自身が保険の要件を満たすかどうかは、治療担当医もしくは遺伝カウンセリング担当者へお問い合わせください。
【保険適用の条件】
以下のどれか一つでも当てはまれば保険適用とされます(2023年10月時点)
- がん治療において分子標的薬オラパリブの適応かどうかを判断する場合
- 45歳以下で乳がんと診断された
- 60歳以下でトリプルネガティブの乳がんと診断された
- 両側の乳がんと診断された
- 片側の乳房に複数の原発性乳がんと診断された
- 男性で乳がんと診断された
- 卵巣がん・卵管がん・腹膜がんと診断された
- ご自身が乳がんと診断され、第三度近親者内に乳がんまたは卵巣がん、膵臓がんの発症した血縁者が1名以上いる
HBOC外来を自費診療で受診する場合
ご本人に乳がんや卵巣がんの既往歴がないなど、上記の保険診療の条件を満たさない方は、自費で遺伝カウンセリングを受けることができます。遺伝カウンセリングにて遺伝学的検査を受けることが妥当と判断され、検査のご希望がある場合には自費で遺伝学的検査を受けることもできます。
遺伝カウンセリングは、初回は12,880円、2回目以降は10,740円の費用がかかります(2023年10月時点)。
遺伝学的検査の費用は検査の種類によって異なります。遺伝カウンセリング担当者へお問い合わせください。
ご予約案内
HBOC外来 | 毎週水曜日(予約制) |
ご予約専用電話 | 03-3823-4890 |
ご予約受付時間 | 月~金曜9:00~17:00 土曜9:00~12:00 |
登録事業を始めるに当たって
がん・感染症センター 東京都立駒込病院では、遺伝性乳がん卵巣がんの診断のために、独立行政法人日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構(JOHBOC)が実施するBRCA遺伝子検査を受けた方を対象としてデータの収集を行う登録事業に参加協力することといたしました。これは日本人の遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)の症例の積み重ねにより、BRCA遺伝子変異の日本人により適した精確な予測、癌発症の頻度、治療方針、治療成績などの特徴を明らかにして、今後、HBOCの診療で対策を立てていく方のために有用な情報を作成することを目的としています。
本登録事業は臨床研究としてJOHBOCの倫理委員会で承認を受けており、さらに各医療機関の倫理審査を経て実施されるものであり、当院では倫理委員会の審査で承認を受けています。
研究課題名:「BRCA遺伝学的検査に関するデータベースの作成」
登録事業とは、具体的に、生殖細胞系列のBRCA遺伝学的検査を受けられた方の診療情報(がんの進行度、病理の所見、治療及び治療効果)、遺伝子解析結果及び家族のがんの罹患状況を各医療機関でまとめ、全国のデータを集計するNCD(National Clinical Database: 専門医制度と連携した臨床データベース)に登録します。また、長期的な治療成績を調査するため、データは1年に1回、各医療機関で更新を行います。その際、個人を特定できる個人情報はすべて削除した上でNCDに登録するシステムになっており、個人情報が外部の施設に同意なしに持ち出されることはありません。登録事業とは担当医師の地道な努力と対象となる方のご協力があって成り立つものであり、わが国の遺伝性乳がん卵巣がん(HBOC)の特徴を明らかにするために多くの関係者の協力が必要です。
本登録事業は、登録の対象となる生殖細胞系列のBRCA遺伝学的検査を受けられた方に説明文書を用いて本登録事業について説明し、同意を得た上で登録を行うこととしています。しかし、すでに治療が終了するなど当院を受診していない方や死亡された方については本登録事業の説明や同意をいただくことができない場合も、上記の個人情報を削除する形でデータ登録をさせていただきますのでご理解を賜りたいと存じます。またご本人だけではなく、血縁者の病歴を登録しますが、この場合にも同様に個人情報の取得は一切行うことはなく、個人のプライバシーに配慮して登録事業を行っています。
研究協力は任意であり、ご本人の同意が得られない場合にはデータの登録は行いません。また、本研究協力に同意いただけなくてもその後の診療に影響が出ることはありません。
当院をすでに受診していない場合には、担当者から直接、本研究の詳しい説明を実施するのが難しいのですが、本登録事業についてご不明・ご心配な点がある場合、登録事業への参加を拒否したい場合などは、下記連絡先までお問い合わせください。
上記登録事業にご理解いただき、ご協力いただけますようよろしくお願い申し上げます。
(日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構における研究代表者)
日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構
理事長
中村 清吾
2019年10月15日
(責任者医師)
がん・感染症センター 東京都立駒込病院
部署名: 乳腺外科
責任者氏名: (部長) 有賀 智之
(上記研究に関する問い合わせ先)
〒 113-8677
住所: 東京都文京区本駒込3-18-22
がん・感染症センター 東京都立駒込病医院
所属部署 遺伝子診療科
℡: 03-3823-2101(病院代表)
担当:井ノ口 卓彦