胃外科部長
長 晴彦
当院では胃がんの治療方針は、胃外科、消化器内科、腫瘍内科、病理科で構成される胃癌グループが行うキャンサーボード(複数部門の専門家による症例検討会)により多角的に検討され、毎年150件前後の胃がん手術を行っています。主な対象疾患は胃癌ですが、それ以外にGISTやその他の胃に発生する稀な疾患も含め、進行度や疾患に特化することなく幅広く胃の疾患を扱っています。治療方針の基本は標準治療です。標準治療とは、科学的根拠(エビデンス)に基づき検討され、ガイドライン(胃 癌治療ガイドライン、GIST診療ガイドラインなど)に記載されている信頼性の高い治療法ですが、標準治療がない希少疾患や、病状によっては標準治療が当てはまらない患者さんもいらっしゃいます。したがって、患者さん一人一人に対する最も適した治療を吟味することが重要と考えています。具体的な取り組みとして、標準治療より理論的に優れた治療(より治る可能性が高い治療、より延命効果が期待できる治療、より副作用が少ないであろう治療、より合併症が少なく回復が早いであろう治療、など)を、全国のがん専門病院や大学病院と連携して、臨床試験/臨床研究として行っています。現在参加しているものとして、胃癌手術に関するもの、胃癌周術期化学療法に関するもの、高齢者に対する取り組み、GIST治療に関するものなどがあります。日本臨床腫瘍グループ(JCOG)の胃癌グループでは、当科は創成期から中心メンバーとして参加し、胃癌の治療成績向上を目指した取り組みを続けています。患者さんの体にやさしい低侵襲な腹腔鏡下手術としては、幽門側胃切除術から高難度の噴門側胃切除術や胃全摘まで、また、胃GISTなどに対する腹腔鏡・内視鏡合同手術(LECS)も行っています。
精密かつ安全な手術が行えるロボット支援手術についても、2018年より導入し、患者さんの負担軽減にも実績を上げています。