私たちはこれまで5000症例以上の経験に基づいて胃がんに対する治療成績をデータ化し、画一的な治療ではなく、患者さん一人一人にきめ細かい配慮をして、最善の治療を提供すべく努力しています。
根治性を損なうことなく低侵襲で機能温存を追及した体にやさしい手術(ロボット支援下胃切除術、腹腔鏡下噴門側胃切除術、腹腔鏡下胃局所切除術、神経温存胃切除術など)を行なっており、術後のQOL(quality of life)も良好です。
根治性と低侵襲の両立
- 腹腔鏡下手術とロボット支援下手術
ロボット支援下(ダ・ヴィンチ)手術:2018年8月に導入し、安定した運用を行っています。対象となる術式は胃全摘、噴門側胃切除・ダブルフラップ再建術等を含め、すべての胃切除術に対応可能です。体への負担が少なく、ご高齢の患者さんにもお勧めできる手術です。 - 機能温存
胃切除後には体重が10−20%減少することが知られています。特に胃全摘術を行った患者さんでは、術後の食事摂取量が減ることなどにより、胃を残す手術を行った患者さんに比べ、体重の減少が多く、日常生活の質に影響すると報告されています。これらの術後デメリットを鑑みて当科では、なるべく切除範囲を縮小することにより、胃の機能を温存することを心がけています。従来は胃全摘術が行われた病変に対して、胃亜全摘術や噴門側胃切除術を選択することで、胃を温存することが可能となっています。
臨床試験で行う新しい外科治療・集学的治療
日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)の大規模臨床試験を数多く行っており、治療成績の向上を目指した取り組みを行っています。具体的には、脾臓を温存し、かつ脾摘と同等の効果を目指す治療として、(ロボット支援)腹腔鏡下脾温存脾門リンパ節郭清(JCOG1809試験)のほか、cStageIII胃癌に対する周術期化学療法(JCOG1509試験)や、高度リンパ節転移症例に対する術前化学療法(JCOG1704試験)への登録を行っています。
先進的治療への取り組み(治療、臨床試験、ロボット支援下手術など)
漿膜下浸潤及び漿膜浸潤を伴う進行胃癌を対象とした大網切除に対する大網温存(JCOG1711試験)、cT1-2N0-2 胃癌におけるロボット支援下胃切除術の腹腔鏡下胃切除術に対する優越性を検証する試験(JCOG1907試験)への登録を行っています。