乳房インプラントによる乳房再建後のブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫(BIA-ALCL)についてのお知らせ
※BIA-ALCL:Brest Implant-Associated Anaplastic Large Cell Lymphoma
1.BIA-ALCLとは
BIA-ALCLとは、乳房再建手術や豊胸術で乳房インプラントを挿入した患者さんのインプラント周囲に生じる稀なタイプのリンパ腫です。BIA-ALCLは悪性腫瘍ですが進行は緩徐で、ほとんどの場合はインプラントの除去と周囲の被膜除去のみで軽快し、化学療法や放射線療法は必要ないとされています。ただし、治療の開始が遅れて死亡した症例も報告されています。初発症状の多くは、遅発性(平均9年後)のインプラント周囲の漿液腫(体液の貯留)です。このタイプのリンパ腫は、他の人工物(整形外科用インプラント、歯科インプラントなど)でもごく稀ながら報告されています。
2.BIA-ALCLの発生頻度
インプラントの出荷数から、発生頻度は1/3000-1/30000とされています。国によって異なり、米国(1/30000)、オーストラリア、ニュージーランド(1/1000-1/10000)、オランダ(1/6900)、カナダ(1/24000)と報告されております。2019年に日本で初めての発生例が報告されました。アジアではタイ、韓国とシンガポールで1例ずつ報告があります。
3.BIA-ALCLの原因と予防策
明確な原因は確認されていませんが、免疫反応、遺伝的要因、細菌感染の関与が疑われています。全世界登録システムにより本疾患の全容解明に取り組んでおります。予防には、漿液腫が生じた場合の穿刺などの処置が有効と考えています。術後に変化が生じた場合に、それを長期間放置しないことが重要です。
4.私たちの対応
漿液腫や被膜の変化を長期間放置しない限り、乳房インプラントは安全なものと考えています。しかし、低い頻度とはいえBIA-ALCLは起こりうる問題です。術後にインプラント周囲にしこりや腫れなどの異常を感じた場合はすぐに受診してください。インプラントを入れている間は定期的な検査(1-2年ごとの超音波やMRIなど)が必要になります。自己判断で検診を終了することのないようお願いします。
さらに詳しい情報は、日本オンコプラスティックサージャリー学会、日本形成外科学会、日本乳癌学会、日本美容外科学会発表の「ブレスト・インプラント関連未分化大細胞型リンパ腫について」をご参照ください。 http://jopbs.umin.jp/medical/index.html(外部リンク)