膠原病科 - 専門分野

1.膠原病

膠原病は免疫の異常で、皮膚や関節、更には内臓に障害を来し、自己抗体の産生を伴う慢性疾患の総称です。代表的な疾患は全身性エリテマトーデス、全身性強皮症、多発性筋炎、皮膚筋炎、シェーグレン症候群、血管炎症候群です。
関節リウマチは免疫の異常で主に関節が炎症により障害される疾患ではありますが、肺や末梢神経といった関節外の症状を来す場合もあります。
疾患により症状は様々ですが、倦怠感、微熱、関節痛、皮疹などとともに、肺・腎臓・神経などに障害を来すことがあるため、関節リウマチ以外は国の難病に認定されています。
関節リウマチは現在、生物学的製剤等の使用により、これまで難治であった患者さんの治療が可能となりました。早期にタイミングよく導入すれば関節リウマチは寛解する期待も生まれていますが、この治療は従来の治療と比べて効率よく免疫反応を抑制するだけで、人体を防御する免疫反応も抑制してしまいます。そのため感染症や発癌といった問題が生じる可能性があります。当科は当院の特性を生かして適切な対応が取れるように努めています。
関節リウマチ以外の膠原病の治療は従来ステロイド投与が中心でしたが、病態に応じて最新のエビデンスを基本とした免疫抑制剤の併用を行い、ステロイド投与量を最小限あるいは中止に至れるよう努力しております。全身性エリテマトーデスに対するヒドロキシクロロキン療法は眼科の協力もあり積極的に行っております。ステロイドの効果が乏しい難治性筋炎に対しては免疫グロブリン大量靜注療法を行っています。血管炎症候群の中のANCA関連血管炎に対する抗B細胞治療であるリツキシマブによる治療も難治例に対しては積極的に行っております。生物学的製剤のトシリズマブが血管炎症候群の中の巨細胞性血管炎に保険適応となっており、この治療も進めております。
難病に認定されてはいますが、一人一人の患者さんに合った適切な治療を受けることで、ほとんどの場合普通の人と同様の生活を送ることが可能となっています。

2.自己炎症性疾患

自己抗体の産生を伴わない持続あるいは周期的な炎症(CRP上昇)と様々な臓器障害を呈する病気の一群で、代表的にはベーチェット病、成人発症スティル病、家族性地中海熱、自己炎症性リンパ増殖性疾患、VEXAS症候群などがあります。特異的な検査所見が乏しいため、原因不明、あるいは他疾患と誤診される事も多い病態ですが、一部の疾患では遺伝子異常(先天的/後天的)が原因として関連しており、遺伝子解析によって初めて診断が確定する場合もあります。

VEXAS症候群は後天的な遺伝子異常により主に男性で成人以降発症、大球性貧血(ビタミン、葉酸欠乏などによらない)、再発性多軟骨炎、血管炎、骨髄異形成症候群等、多彩な炎症性病態を呈する疾患ですが、現在保険診療では原因遺伝子検査を行えないため、診断の確定が難しい状況となっております。当科では原因遺伝子であるUBA1遺伝子の変異の検査を行っておりますので、診療に苦慮される場合はご相談頂ければと思います。(検査費用は当科で負担のため検査のみのご依頼は受けておりません。当院での通院治療が可能な方に限らせて頂いております。)

3.IgG4関連疾患

IgG4関連疾患はIgG4産生形質細胞による腫瘤性病変で、涙腺・唾液腺炎を生じるミクリッツ病、自己免疫性膵炎、後腹膜線維症などが該当します。ステロイドによる反応が良好な疾患ですが、ステロイドの副作用の問題もありますので、腫瘤による周囲臓器への圧迫が問題となる場合などに治療を行います。長年多疾患にステロイドを使用してきた当科の診療経験がこの疾患の治療に生かされています。

IgG4関連疾患センター

  • 4.キャッスルマン病

  • キャッスルマン病は著しい炎症反応と高γグロブリン血症を特徴とする全身性リンパ増殖疾患です。こちらも患者さんによって状態は様々なのですが、炎症による消耗で貧血が進行し、放置しておくとアミロイドという蛋白が沈着することによる臓器障害を生じる危険性もあるため、治療が望ましい疾患です。ステロイドを使用してきましたが、効果不十分であることが多く、保険適応となっている生物学的製剤のトシリズマブの使用が必要です。当科ではトシリズマブ使用経験も豊富なためキャッスルマン病の治療にも生かされています。2017年11月、キャッスルマン病も難病に認定され、2018年4月に患者認定が開始されました。これにより患者さんのトシリズマブ使用の負担が軽減されております。当科はキャッスルマン病の東京の拠点病院の一つにもなっております。

    5.TAFRO症候群

  • 原因不明ながら、急性に強い炎症を来し、これに伴い血管内Volume喪失から全身浮腫、腎障害、骨髄線維化、血小板減少等を来し、急性期には輸血、透析、全身循環管理が必要となる事が多く、致死的となる事もある比較的稀な疾患です。特異的治療に関しては免疫抑制剤を組み合わせて行う事が多く、全身状態も合わせて基本的には入院加療が必要となる疾患ですが、当科ではキャッスルマン病とあわせ拠点病院の一つとして診療に当たっており、過去10例程度の治療経験と全例で病状はコントロールされ背景疾患も合わせ外来でFollowさせて頂いております。
  • 6.アレルギー

  • 主に50歳未満の気管支喘息患者さんの診療を行っておりますが、ステロイドと気管支拡張剤であるβ刺激薬配合の吸入薬の進歩により、発作入院は著しく減量しました。病気のコントロールがつけば、お近くの病院をご紹介しております。
    気管支喘息を背景に好酸球増多を来し、末梢神経障害や急速進行性糸球体腎炎などを合併する好酸球性多発血管炎性肉芽腫症は血管炎症候群であるANCA関連血管炎の一つです。
    ステロイドに反応しますが、加えて好酸球を低下させる抗IL-5抗体治療や末梢神経障害に対しては免疫グロブリン大量靜注療法、その他の好酸球増多に関連した臓器障害に対しても治療を行っております。

    以上のような数々の免疫・炎症性疾患の治療を行っておりますが、同じ病名であっても患者さんの症状は多彩です。スタッフ全員で患者さん一人一人に真摯に対応して最適な治療を行えるように日々努力しております。