2024年8月2日 多発性硬化症におけるPIRA研究

多発性硬化症における「再発によらない進行」に関する研究が国際神経免疫学会誌にオンラインで掲載されました[1]

当院と東京医科歯科大学、新渡戸記念中野総合病院、北海道医療センター、東北医科薬科大学の多施設共同研究において、日本の多発性硬化症(MS)集団における「再発によらない進行」(Progression Independent of Relapse Activity, PIRA)の現状を報告しました。
https://www.sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0165572824001267(外部リンク)
https://authors.elsevier.com/a/1jVFDbfPjM%7Ehp(外部リンク)
(2番目のフルテキストへのリンクは2024年9月15日まで有効)
PIRAは2020年ごろはじめて登場したことばですが、数年前から同様の概念が提唱され、MSの病態との深い関連から注目されていました。
本研究は95名の頭部MRIデータのある再発寛解型MS患者さんを対象とした2年間の観察研究です。PIRAが観察されたのは約3%と欧米に比べて少数でしたが、これらの患者さんでは安定している患者さんと比べて脳萎縮率が高い傾向がありました。欧米の研究と異なる点は、本研究におけるPIRA患者さんは若く、脳病変が多い傾向があったことです。
そして、治療内容もいわゆる“強力な”治療ではない治療を行っている方が多いことがわかりました。すなわち、「若くて活動性の高い患者さんが十分な治療をうけておらず、再発はないが障害が進行している」、という少し心配な可能性を感じる結果となりました。本研究は、MRI画像のある患者さんのみを対象としていること、欧米の研究に比べると対象が少数であること、PIRAを呈した患者さんがかなり少数であったこと、など制限があり結論を急ぐべきではありませんが、今後のMS患者さんの治療を考える上で重要な問題提起になると考えています。

[1] 1: Yokote H, Miyazaki Y, Fujimori J, Nishida Y, Toru S, Niino M, Nakashima I,Miura Y, Yokota T. Characterization of Japanese multiple sclerosis patients with progression independent of relapse activity: A 2-year multicenter cohort study.
J Neuroimmunol. 2024 Jul 24;394:578407. doi: 10.1016/j.jneuroim.2024.578407.
Epub ahead of print. PMID: 39068747.