臨床工学技士(Clinical Engineer:以下CE)は、生命維持管理装置の操作および保守点検を業務とする国家資格です。取り扱う生命維持管理装置には、以下のようなものがあります。
- 呼吸機能を代行する人工呼吸器
- 腎臓・肝臓の機能を代行する血液浄化装置
- 心臓・肺の機能を代行する人工心肺装置
これらの高度な医療機器を、医師の指示に基づいて操作しています。また、輸液ポンプや除細動器など、精密な医療機器の保守点検も行い、患者さんの安全を支えています。
CEの主な業務は、臨床技術提供と中央機器管理です。神経病院のCE業務の特徴は、脳神経疾患の医療に特化していることです。臨床技術提供では、血液中に含まれる神経疾患に関連する有害物質を取り除くアフェレシス療法や、脳外科手術において精密な手術操作を支援するための脳神経外科手術用ナビゲーション業務などをしています。中央機器管理では、多くの人工呼吸器の精度管理や動作点検をしています。神経筋疾患の専門病院という性格上、人工呼吸器を必要とする患者さんが多く、ICU以外の一般病棟でも多く人工呼吸器が稼働しているためです。
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臨床技術提供
脳神経外科手術用ナビゲーション
術前に撮影した放射線画像データから患者さんの3D画像を作成し、手術中の病変位置と手術器具の位置関係を示すことで、腫瘍や血管、危険部位の認識をサポートします。これによって、より安全で確実性の高い脳神経外科手術が可能となります。
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術中神経モニタリング
手術の影響によって障害される可能性がある脳や脳神経の機能を測定することによって、運動野や言語中枢などの位置の特定や、神経機能の状態の監視をします。これによって、術後の神経機能障害を予防することができます。
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アフェレシス療法
血液に含まれる血漿という成分を取り出して廃棄し、正常な血漿と置き換えることで、血液中に存在する有害物質を除去します。神経疾患の中には、血液中の有害物質を取り除くことで症状が改善するものがあります。神経病院では、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)や視神経脊髄炎(NMO)といった神経・筋疾患の指定難病や、重症筋無力症やギラン・バレー症候群などに対してのアフェレシス療法を実施しています。
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機器管理
保守点検
中央器材室では、生命維持管理装置だけでなく、各病棟で使用されている医療機器も一括して管理しています。これらの医療機器を中央器材室で点検・整備してから必要な病棟に貸出し、使用後に病棟から中央器材室に返却し、再び点検・整備を行います。これによって医療機器が良好な状態に保たれ、安全な使用が可能となります。
個々の医療機器は、中央器材室の業務のために開発された専用の管理ソフトに登録されており、貸出状況や点検、修理履歴を医療機器1台毎に記録しています。これらの記録はデータベース化され、病院全体の医療機器の稼働/管理状況を容易に把握できます。さらに、医療機器の必要台数の算出や、中長期的な購入計画の立案に極めて有益な情報をもたらしてくれます。
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病棟巡回
各病棟で使用されている医療機器の作動状況を、一台ずつ丁寧に確認し、点検をします。
他にも、医療機器を操作する看護師の要望を聞き取り調査して現場での課題を発見し、立案した対応策を実行することで、医療機器の使用環境改善に役立てています。
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呼吸サポートチーム(RST:Respiratory Support Team)
RSTは、呼吸ケアを必要とする神経疾患の患者さんに適正な呼吸管理を行うために編成された多職種チームです。CEは、主に人工呼吸器の設定や使用環境、使用機器に関する困り事などについて、専門的な立場からの意見を出し、チームメンバーと協議しています。
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院内研修
医療機器を正しく安全に使用してもらうため、スタッフに向けた啓蒙活動を行っています。新任スタッフに向けた医療機器の取り扱いに関するオリエンテーションや、呼吸ケアサポートチーム主催の研修で、人工呼吸器に関する研修を実施しています。病棟の依頼で開催する研修もあります。また、積極的にeラーニングを活用しており、eラーニングと実機研修の組み合わせや、職層別の研修設計などによって、学習効率の向上を図っています。
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教育体制
独自のキャリアラダーを作成して求められる人材像を明確にし、人材育成に活用しています。業務習得の際は、手順書と習得チェックリストを活用しています。業務遂行のコツや、業務が遂行できたと判断される要求レベルまで記載した手順書を基に業務を習得し、評価基準が明確にされた習得チェックリストによって判定しています。これによって教育内容が統一され、業務の標準的な手順を誰でも教えることができ、誰でも習得することができる育成体制を構築しています。
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