救命救急科

救命救急科
救命救急科 萩原 佑亮

診療内容

診療科の内容・特色

当院は、日本では珍しい小児専門ERを展開しています。小児であれば、あらゆる重症度の急な病気やケガに24時間365日対応します。小児の専門家である小児科専門医と救急の専門家である救急科専門医がいる施設として、地域のこどもたちに最善の救急医療を提供することを目指しています。

当科はERの中心的役割を担っていますが、総合診療科、集中治療科、各臓器別専門科といった病院全体の協力のもとにERは運営されています。また、地域の病院やクリニックと密に連携し、地域全体としてこどもを救う救急医療体制を構築しています(当院・当科だけでは当院ERは成り立っていません)。

当院ERは、こどもたちの利益を最優先して診療に取り組んでいます。唯一無二の大切なこどもたちが病気やケガで苦しんでいることに対して、惜しみない医学的なサポートを提供します。ただし、多くの医学的な診療には負の側面が存在します。例えば、注射は痛みを伴い、レントゲンやCTは被ばくを伴います。あらゆる薬に副作用が存在します。慣れない病院という環境だけでこどもはストレスを感じるかもしれません。そのため、私たちはこどもの負担を最小限にするように可能な限り不要な検査、処方、入院はしないように努力しています。「なんとなく心配だから」という大人の理由だけで、こども自身に負担を強いることないように心掛け、こどもにとって必要な対応を根拠に基づいてひとつひとつ行っていきたいと考えています。その一方で、一見、軽症に見える場合でも重篤化するリスクが高いと判断したときには、問診などの前に検査・治療を優先し、攻めの救急医療を実施することがあります。すべてはこどもの利益を最優先するという原則で行動しています。安易に診断をつけたり、安易に薬を出したりして、見せかけの安心感を与えるような行為は慎み、科学的根拠に基づいた医療を提供することで「安全」を確保し、それをわかりやすく伝えることで「安心」を提供致します。

なお、少し極端な言い方をすれば、救急医療では「診断」をつけることにこだわってはいません。現時点で何が必要かを適切に「判断」し、時間的猶予がない場合には即座に介入することが救急医療に求められています。その「判断」のために「診断」が必要になる場合には「診断」を急ぎます。一方で、時間的な余裕がある場合には、医療資源が充実している平日の日中の受診へとつなげることもあります。そのため、24時間365日いわゆる「小児科」の診療をしているわけではないことを御理解ください。

「後医は名医」という言葉があります。後から診察した医師の方が優れている(ように思える)ことを意味しています。この理由は、病気というのは時間経過が最も多くの情報量を与えてくれることに寄ります。特に、救急医療が対象とする急性期では顕著です。つまり、後医は前医よりも病態の時間的経過をより知ることができるため、適切な判断をしやすくなります。そのため、紹介していただいた医院でわからなかった病気が当院ERで診断がついたりすることはよくあります(当然ながら、その逆もありえます)。これは、診断がつかなかった病院や医師の能力が低いわけではなく、「後医は名医」によることが大きく関係しています。もし、私たちが「経過をみてみましょう」と言うときには、時間を利用することで「後医は名医」を実践しようとしていると考えていただきたいと思います。

トリアージ(緊急度判定システム)について

24時間365日、すべての病気やケガ、あらゆる重症度に対応する救急診療を実施するため、当院ERではトリアージ(緊急度判定)システムを導入しています。救急医療の原則として、より緊急度の高い患者さんを優先して診察するため、ERを受診するすべての患者さんはトリアージを受けます。

救急車で搬送されてもトリアージの緊急度が低ければ待合室でお待ちいただくこともありますが、電車や自家用車などで来院されても緊急度が高ければ最優先で診療を開始します。つまり、来院の方法や順番に関わらず、緊急度によって診療の順番が決まることを御理解ください。

例えば、心肺停止などの生命に直結する場合は最優先で診療します。救命のために多くの医師や看護師などの医療従事者のマンパワーも必要となるため、他の患者さんにはその子とその家族を救うために御協力いただかなければなりません。

できる限り待ち時間を少なくするよう努力していますが、トリアージ結果と混雑状況により2~3時間以上の診療待ち時間が発生することがあります。

このシステムは、世界中で科学的に分析され、安全な救急医療の提供のために欠かせないものとなっています。実際に、このシステムによって生命や機能に関わる重篤なこどもたちが早急に見つけ出され、いざというときに手遅れになる前に診療を受けることが可能になり、実際に多くの命が救われています。

具合の悪いこどもと家族にとって待ち時間はつらいものですが、科学的根拠に基づいて診療順番を決定していることを御理解いただき、より具合の悪いこどもたちのために御協力をお願い致します。

皆様の御理解と御協力によって、トリアージシステムと救急医療は成り立っています。

*当院の救急外来受診に関する詳細は救急診療(ER)についてを参照してください