診療内容・特色
脳神経内科は、内科医としての訓練を十分に受けていますが、診療するのは神経系の病気です。神経系には脳、脊髄、末梢神経と筋肉、および自律神経があります。したがって、脳神経内科は、意識し思考すること、運動すること、五感をはたらかせて感じることに関する障害を診療する科、と言いかえることができます。
当科で診察する具体的な障害としては、まず意識の障害と言語や認知力の障害があります。運動の障害には、手足の麻痺や筋肉の力の低下とそれによる起立や歩行の障害があり、さらに手足の異常なこわばりや、ふるえなどの余計な働きによる障害があります。感覚の障害には、痛みやしびれ、感覚の低下があります。自律神経の異常には排尿や排便、発汗や血圧調節の障害などがあります。このほかにも、頻度の高い症状である頭痛やめまい、てんかんなども当科で診察しています。
疾患名としてあげると、脳血管障害(脳卒中)や各種神経変性疾患(パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、様々な認知症など)、いろいろな筋肉の疾患、脊髄と末梢神経の疾患、てんかんや頭痛、めまいで来院される方が多数おられます。文末に、取り扱っている主な疾患をお示しします。
脳神経内科は一般的な脳神経内科の診察をするとともに、東京都の脳・神経難病医療センターとしての役割をはたしています。日本神経学会専門医が19名、うち同学会の指導医が15名おり、神経系の広い分野をカバーしています。詳しくはスタッフの紹介ページをご参照ください。
診察の予定表や受診方法については当院および東京都立神経病院のホームページをご参照ください。
脳神経内科の病棟は同じ敷地内で隣接する東京都立神経病院にあります。東京都立神経病院脳神経内科は豊富な人材と218床のベッド数、検査設備なども含めて、わが国で最も規模の大きな施設の一つです。その規模を活かし神経難病を中心とする神経諸疾患の病因を解明する努力を続け、よりよい治療法を開発し実践することも当科の重要な役割です。神経疾患とともに神経系以外の疾患をお持ちの方については東京都立神経病院と当院が協力して診療にあたります。また当科では長期の療養を必要とする神経疾患、とくに神経難病の方は、療養可能な病院をご紹介するか、または当院が関わっている多摩地区の各種在宅訪問診療を行って、長期的な診療ができるように努力しています。
取り扱っている主な疾患
症状
意識障害、けいれん、不随意運動、頭痛、めまい、しびれ、ふるえ、脱力、痙縮、健忘、認知症、複視、嚥下障害、言語障害、運動障害、感覚障害、起立歩行障害、認知障害、筋萎縮、筋肉痛、筋肉のびくつき、攣縮、こむらがえり、起立性低血圧など
疾患
- 感染症:髄膜炎、脳炎、Creutzfeldt-Jakob病
- 脳血管障害
- 脱髄疾患:多発性硬化症、視神経脊髄炎、急性散在性脳脊髄炎
- 末梢性疾患:ギランバレー症候群、Fisher症候群、慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチーその他のニューロパチー、末梢性顔面神経麻痺
- 神経変性疾患:パーキンソン病およびパーキンソン症候群、筋萎縮性側索硬化症、多系統萎縮症、脊髄小脳変性症、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性症、ハンチントン病、アルツハイマー病
- 不随意運動を主体とする病態:本態性振戦、アテトーゼ、ジストニア、顔面けいれんなど
- 筋・神経-筋接合部疾患:多発性筋炎その他の炎症性筋症、重症筋無力症、筋ジストロフィー、周期性四肢麻痺、ミオパチー、ミトコンドリア脳筋症
- 脊椎・脊髄疾患:頸椎症・腰椎症、亜急性連合性脊髄変性症、脊髄梗塞、HAM(HTLV-1 関連脊髄症)
- 機能性疾患:片頭痛など、てんかん
- 中毒・代謝性神経疾患
- 内科疾患に伴う神経障害:膠原病、サルコイドーシス、ビタミン欠乏、悪性腫瘍に伴う神経障害など
- その他、主に脳外科の対象となる神経疾患の神経内科的対応:正常圧水頭症、脊髄空洞症など
専門性の高い治療
- 筋萎縮性側索硬化症における呼吸療法・栄養療法・緩和治療
- パーキンソン病の薬物治療と脳深部刺激療法・大脳磁気刺激治療(治験)
- ジストニアなど異常運動に対する脳深部刺激療法
- 多系統萎縮症における呼吸療法や声帯麻痺の治療
- 多発性硬化症におけるインターフェロンや薬物による再発予防治療
- 炎症性ニューロパチーに対する大量ガンマグロブリン療法
- ジストニアや痙縮に対するボトックス治療
- コミュニケーション障害に対するブレインマシンインターフェイスの導入の試み
- 失声患者に対するマイボイスの導入(自分の声を残す試み)
- 脳炎によるてんかん重積の全身麻酔療法
- 外科的誤嚥予防治療(喉頭閉鎖術など)を行っています。
研究
神経変性疾患をはじめとする神経難病の臨床的、生理的および遺伝子、病理、生化学的アプローチによる診断や病態の解明に関する研究を行っています。