患者の権利・医療者の倫理

患者の権利・医療者の倫理

都立墨東病院患者権利章典
~患者さんの権利と責務~

 患者さんは、人間としての尊厳を有しながら医療を受ける権利を持っています。また、医療は、患者さんと医療提供者とが対等な立場で互いの信頼関係に基づき、協働してつくり上げていくものであり、患者さんに主体的に参加していただくことが必要です。
 都立病院は、「大都市東京を医療で支える」という理念の下、患者中心の医療を実践するため、ここに新たな「患者権利章典」を制定します。

 (患者さんの権利)

  1. 誰でも、どのような病気にかかった場合でも、良質な医療を公平に受ける権利があります。
  2. 誰もが、一人の人間として、その人格、価値観などが尊重され、医療提供者との相互の協力関係の下で医療を受ける権利があります。
  3. 自分の病気、検査や治療の内容などについて、理解しやすい言葉で説明を受ける権利があります。
  4. 十分な説明と情報提供を受けたうえで、医師等と共に考えながら、治療方法などを自らの意思で選択する権利があります。他の医師の意見(セカンド・オピニオン)を聞きたいという希望も尊重されます。
  5. 自分の診療情報の開示を求める権利があります。
  6. 診療の過程で得られた個人情報が守られ、病院内での私的な生活を可能な限り他人にさらされず、乱されない権利があります。
  7. 研究途上にある医療に関し、目的や危険性などについて十分な情報提供を受けたうえで、その医療を受けるかどうかを決める権利と、何らの不利益を受けることなくいつでもその医療を拒否する権利があります。
  8. 病状や治療状況などに応じて適切な医療機関で継続して医療を受ける権利があります。

    (患者さんの責務)
  9. 良質な医療を実現するためには、医療提供者に対し、患者さん自身の健康に関する情報をできるだけ正確に伝えるなど、診療に協力する責務があります。
  10. 納得できる医療を受けるために、説明を受けてもよく理解できなかったことについて、十分理解できるまで質問する責務があります。
  11. すべての患者さんが互いに快適な療養生活を送るために、患者さんには、暴言・暴力や他の患者さん・職員の迷惑となるような行為を慎み、病院の医療提供に支障を与えないよう、定められた規則を守る責務があります。
  12. 受けた医療に対して、医療費を支払う責務があります。

    (患者さんへのお願い)
  13. 都立病院は継続的かつ安定的に質の高い医療サービスを提供していくため、全ての職員が働きやすい病院づくりを進めるとともに、チーム医療の推進を図っています。患者さんのご理解とご協力をお願いします。

令和6年5月15日制定

都立墨東病院患者権利章典(完全版・全文)(PDF 275KB)

都立病院の子ども患者権利章典(とりつびょういんのこどもかんじゃけんりしょうてん)

あなたは、いつでもひとりの人間(にんげん)として大切(たいせつ)にされ、あなたの成長(せいちょう)や発達(はったつ)のこと(大人(おとな)へと育(そだ)っていくこと)をどのようなときにも一番(いちばん)に考(かんが)えた医療(いりょう)(病気(びょうき)を治(なお)してもらうこと)を受(う)けることができます。

病気(びょうき)を治(なお)すためには、あなたとあなたのご家族(かぞく)や病院(びょういん)の医師(いし)、看護師(かんごし)たちが、おたがいに力(ちから)を合(あ)わせていくことが大切(たいせつ)です。

都立(とりつ)病院(びょういん)は、このような考(かんが)え方(かた)でつくった「子(こ)ども患者(かんじゃ)権利(けんり)章典(しょうてん)」(あなたのために、病院(びょういん)の人(ひと)やあなたのご家族(かぞく)、そしてあなた自身(じしん)も守(まも)らなければならない決(き)まりごと)を守(まも)って、あなたを助(たす)けていきます。

  1. あなたは、どのような病気(びょうき)にかかったときでも、ほかの人(ひと)と同(おな)じようによい医療(いりょう)を受(う)けることができます。
  2. あなたは、どのようなときでも、ひとりの人間(にんげん)として大切(たいせつ)にされ、病院(びょういん)の人(ひと)たちやご家族(かぞく)と力(ちから)を合(あ)わせながら医療(いりょう)を受(う)けることができます。
  3. あなたは、病気(びょうき)のことや病気(びょうき)を治(なお)していく方法(ほうほう)を、あなたがわかることばや絵(え)などを使(つか)って、病院(びょういん)の人(ひと)に教(おし)えてもらうことができます。
  4. あなたは、病気(びょうき)のことや病気(びょうき)を治(なお)す方法(ほうほう)について、十分(じゅうぶん)な説明(せつめい)を受(う)けたうえで、自分(じぶん)の考(かんが)えや気持(きも)ちを病院(びょういん)の人(ひと)やご家族(かぞく)に伝(つた)えることができます。
  5. あなたは、わからないことや不安(ふあん)なことがあるときはいつでも、ご家族(かぞく)や病院(びょういん)の人(ひと)たちに聞(き)いたり、話(はな)したりすることができます。
  6. あなたは、入院(にゅういん)しているときでも、できるかぎりご家族(かぞく)と一緒(いっしょ)に過(す)ごすことができます。
  7. あなたは、入院(にゅういん)していても、勉強(べんきょう)したり、遊(あそ)んだりすることができます。
  8. あなたは、病気(びょうき)の治(なお)し方(かた)や薬(くすり)が効(き)くかどうかなどの研究(けんきゅう)への協力(きょうりょく)を頼(たの)まれたときには、十分(じゅうぶん)な説明(せつめい)を受(う)けて、協力(きょうりょく)するかどうかを自分(じぶん)で決(き)めることができます。やめたくなれば、いつでもそれをやめることができます。決(き)めるときに、わからないことや不安(ふあん)なことがあればいつでも、ご家族(かぞく)や病院(びょういん)の人(ひと)たちに聞(き)いたり、話(はな)したりすることができます。
  9. あなたの病気(びょうき)がよくなるように、あなたのからだや気持(きも)ちのことをできるだけくわしく病院(びょういん)の人(ひと)たちに伝(つた)えるようにしてください。
  10. あなたとみんなが気持(きも)ちよく過(す)ごすために、病院(びょういん)のやくそくをまもってください。

(注)この権利(けんり)章典(しょうてん)は、都立(とりつ)病院(びょういん)の患者(かんじゃ)権利(けんり)章典(しょうてん)を基本(きほん)に、小児(しょうに)医療(いりょう)の特性(とくせい)に配慮(はいりょ)し、策定(さくてい)したものです。

墨東病院臨床倫理指針

墨東病院は、『都立病院の患者権利章典』に基づき、医療を受けられる患者さんの尊厳および人権に配慮し、患者さんにとって最善の医療を提供するため、以下の通り、臨床倫理指針を定めます。

1.患者さんの人権の尊重
(1)患者さんの知る権利を尊重し、医療内容などについてわかりやすい言葉で十分に説明し、医療情報の説明義務を果たします。
(2)患者さんの立場に立った対応を常に心がけ、患者さんとの良好な信頼関係を築くように努めます。
(3)すべての患者さんに対して、公平平等に医療を提供します。
(4)『都立墨東病院個人情報保護および安全管理に関する規程』に基づき、職業上知り得た患者さんの個人情報を保護し、守秘義務を遵守します。

2.患者さんの自己決定権の尊重
(1)『墨東病院における説明と同意に関するガイドライン』に基づき、治療方法などの選択において、患者さんが十分に理解され自ら決定できるよう、情報提供します。また、セカンドオピニオンを推奨します。
(2)治療方法の選択などにおいて、私たちは、医学的立場から患者さんにとって最善と思われる医療を提供しますが、患者さん自ら最善と思えるよう助言するとともに、最終的に患者さんが選択された治療などを尊重します。また、治療の変更や中止についても患者さんの選択を尊重します。

3.安全、良質で高度な医療の提供
(1)私たちは、地方独立行政法人東京都立病院機構の病院として、都民ニーズに合わせた高度な医療を提供できるように努めます。
(2)最新の医学知識の取得と技術の向上のために教育、研修を継続して行います。
(3)『医療安全マニュアル』を遵守し、医療事故を起こさないように、安全な医療を目指します。
(4)関係法規、関係学会作成の診療ガイドライン、生命倫理に関するガイドラインに従った医療を実践します。

具体的な倫理課題に対する対応方針

1.意識不明・自己判断不能な(意思が確認できない)患者さんへの対応について
意識不明や判断能力のない患者さんが、緊急時生命に関わる場合は、ご家族等(代理人)の同意を得て治療に必要な判断と決定を行います。ご家族等の意思決定においては、当院の「人生の最終段階における患者への治療方針に関するマニュアル」の「本人の意思が確認できない場合」に準じて、患者さんにとっての最善の治療方針をとることを基本とします。また緊急連絡がつかない場合やご家族等がいない場合においても、患者さんに2って最善の利益がもたらされるよう多職種で検討・判断して治療を行います。

2.診療拒否について
検査・治療・入院等の診療の必要性と利益、実施しない場合の負担と不利益について、患者さんに十分な説明を行っても医療行為を拒否した場合は、患者さんの自己決定を尊重します。
ただし、感染症法等の規定に基づき、治療拒否が制限される場合があります。

3.宗教上の理由による輸血拒否患者さんへの対応について
当院は、宗教上の理由で輸血を拒否される患者さんに対して、患者さんの意思を尊重し可能な限り無輸血治療に尽力しますが、輸血以外に救命手段がない場合は輸血を行うことを基本方針とします。この方針を説明し、ご理解を得られるように努力しますが、承諾が得られない場合には他医療機関での治療を含め善後策を相談します。したがって、輸血拒否に関する文書は受理、署名しません。

4.身体拘束について
当院の「医療安全マニュアル」の「行動制限運用基準」に従います。身体拘束が必要と判断された場合、身体拘束に関する説明を患者さん・ご家族等に行い同意を得ます。また、その回避・軽減・解除に向けて多職種で取り組みます。

5.終末期医療・ケアについて
当院の倫理委員会で作成した「人生の最終段階における患者への治療方針に関するマニュアル」に基づき、「人生の最終段階における医療・ケアプロセスに関する指針」を踏まえた上で人生の最終段階における医療・ケアの在り方を検討していきます。患者さん・ご家族等・主治医とともに、多職種で構成されている医療ケアチームが関わり十分に話し合いを行い、患者さんの意思決定を基本に人生の最終段階における医療・ケアを進めます。また、患者さんの疼痛やその他の不快な症状を十分に緩和し、患者さん・ご家族等の精神的・社会的な援助も含めた対応を行います。

6.心肺蘇生不要(DNAR)の指示について
老衰・病気の終末期・救命不能または意識回復が見込めない病状の場合、心肺蘇生法(CPR)の有効性について、患者さん・ご家族等に対して十分な説明をした上で、心肺停止時に心肺蘇生法を行わないこと(DNAR)に同意された場合は、その意思を尊重します。但し、いかなる場合も積極的安楽死や自殺幇助は認めません。
DNAR(心肺停止時に心肺蘇生を行わないこと)や、治療の中止・差し控え等、生命の尊厳に関する問題や医療行為の妥当性に関する問題については、患者さんの自己決定の尊重を基礎として、患者さんにとって最善だと思われる治療方針を多種職からなるチームで決定します。

7.患者さんの意思決定について
「患者意思に基づく治療方針」(以下、治療方針とする)がある場合は、患者さんにとって何が最善であるかを患者さん自身およびご家族等と十分に話し合い、最善の治療方針を取ります。
患者さん自身およびご家族等からこれまでの人生観や価値観、どのような医療・ケアを望んでいたのかなどの情報から患者さんの意思に沿った医療・ケアを行います。
心身の状態に応じて意思は変化することを十分に理解し、署名者である患者さんの考えに変化があれば、いつでも撤回、破棄することができます。また、「アドバンス・ケア・プランニング(ACP)」「人生会議(厚生労働省)」の取り組みとして、患者さんの意向を尊重しつつ、かかりつけ医や主治医、患者さんとご家族等医療・ケアチームで、今後の治療・療養等について話し合い、共有します。
患者さんおよびご家族等との意思決定の過程における決定事項は診療録に記載します。

8.生殖医療について
当院では生殖医療は実施しておりませんが、不妊相談をお受けしています。必要に応じて専門施設へ紹介しています。

9.ゲノム医療、遺伝子診療について
ゲノム医療、遺伝子診療については、「人を対象とする生命科学・医学系研究に関する倫理指針」、「日本医学会 医療における遺伝学的検査・診断に関するガイドライン」に準じて行っています。同指針・ガイドラインに準じて当院の臨床検査委員会で設けた「遺伝学検査ガイドライン」に沿って諸検査を行っています。

10.臓器提供について
臓器の移植に関する法律を遵守し、患者さんおよびご家族等の意思を尊重します。日本臓器移植ネットワーク「『臓器の移植に関する法律』の運用に関する指針」を原則とし、心臓死による臓器の提供施設として機能します。

11.人工妊娠中絶について
「母体保護法」を遵守します。人工妊娠中絶の適応は、「妊娠の継続又は分娩が身体的又は経済的理由により母体の健康を著しく害するおそれのあるもの」「暴行若しくは脅迫によって又は抵抗若しくは拒絶することができない間に姦淫されて妊娠したもの」に基づく場合のみとなります。

12.臨床研究・医療行為等について
医学および医療の進歩に必要な研究の実施や、倫理的な問題を含むと考えられる医療行為等については、院外有識者を加えた「倫理委員会」において、倫理的・科学的観点から十分な検討を行います。

13.その他の倫理的問題について
その他の倫理的問題については、「墨東病院臨床倫理指針」に沿って、必要に応じて「倫理委員会」で審議を行い、その方針に従います。

2024年5月15日 最終更新