- 概要
- 泌尿器科 スタッフ
特色・専門領域
当科では尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)、男性生殖器(前立腺、精巣、陰茎)、副腎などに関連した疾患について診療を行っています。また前立腺がんにおける診断、治療については専門外来を設けております。御希望がございましたら紹介状をご持参の上、相談させていただきます。
患者さんのQOL(生活の質)、低侵襲な治療(腹腔鏡手術、内視鏡手術)を考慮した医療を提供しております。
主な診療内容
前立腺がん
近年男性のがん罹患率で第1位と患者数が増加しているがんです。初期の段階では自覚症状はなく骨などに転移を認めた状態で見つかることもあるため、早めに診断や治療を行うことが重要になってきます。
現在は、検診や人間ドックでPSAという血液の検査で異常がみられ前立腺がんと診断される方が増えています。PSAは前立腺特異抗原(prostate specific antigen)の略です。PSAが3あるいは4を超えるとがんの可能性が高くなります。PSAが高い場合、まずMRIによる画像診断を行い、ある程度がんの局在や広がりを確認し、がんが疑われる状況であれば、前立腺針生検を行います。
当院ではMRIで疑われた病変をMRIで特定されているがんと疑わしき場所の3次元的な位置情報を生検時に使用するエコー画像に重ねて表示ができるMRI-US画像癒合生検システムを導入しております。
MRI-US画像癒合生検システム
盲目的な生検ではなくあらかじめMRIによってがんが疑わしい場所を狙って狙撃的に生検することが可能となりこれまで以上に高いがんの検出率が期待できます。検査は患者さんの安全を考え、通常1泊2日での入院検査を行っております。
前立腺がんと診断された場合には、がんの拡がり、悪性度、患者さんの基礎疾患・年齢などに応じて、手術療法、放射線療法、ホルモン療法などを選択します。
ロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘術
当院での手術はDa Vinci Xiを用いたロボット支援腹腔鏡下前立腺全摘除術を行っております。がんの拡がりや悪性度によっては勃起神経を温存する手技を行っております。
放射線外照射療法は行っておりますが、小線源治療などをご希望の患者さんには、提携病院など他施設への紹介させていただいております。
尿路悪性腫瘍(膀胱癌、腎盂癌、尿管癌)
膀胱がん
血尿や超音波で発見されることが一般的です。膀胱鏡検査で診断することができます。早期がんであれば内視鏡的に切除が可能です。浸潤癌の場合は膀胱を摘出する必要があります。膀胱がんは再発を繰り返すことが特徴ですが、膀胱内への薬物(BCG、抗がん剤)注入療法による再発防止に努めております。また浸潤がんの場合、膀胱全摘除術に加え、尿の通り道を変える尿路変向術が必要になります。
当院では患者さんのQOLを考慮し、低侵襲である腹腔鏡下膀胱全摘術や腸を用い新たに膀胱を作成する、自然排尿型の代用膀胱造設術を行うことが可能です。
腎盂尿管がん
尿の通り道である腎臓の中の腎盂と言われるスペースから膀胱へつながる尿管に癌が発生することがあります。造影剤を用いた検査や尿管への内視鏡検査などを行い、診断を行います。遠隔転移などのない場合に根治を目的とした腎臓と尿管を全摘する手術を行います。病状によっては術前に抗がん剤加療を行う場合があります。
腎臓がん
腎臓に発生するがんであり、近年は症状がなく人間ドックや健康診断にて発見されることがほとんどです。転移がない場合は根治を目的とする手術を行います。腎臓の機能を温存するため、小さい癌に対しては腎部分切除術を積極的に行っています。手術は基本的に腹腔鏡手術を行っておりますが、癌の大きい場合やリンパ節廓清を行う場合は開腹手術で行うこともあります。
転移など病気の拡がりがある場合は、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬などガイドラインに準拠した治療を行います。副作用に関しても医師、薬剤師、看護師によるサポートを受けることができます。患者さんのQOLを考慮し、治療を選択しております。
副腎腫瘍
副腎は様々な内分泌(ホルモン)を産生する臓器です。各ホルモンが過剰に分泌してしまうと様々な症状が出現し、治療すべき疾患となります。診断には内分泌内科での精密検査が必要となります。精密検査の結果、クッシング症候群、原発性アルドステロン症、褐色細胞腫など手術療法が必要な場合、腹腔鏡手術を基本として治療を行っております。
尿路結石症
日本人の10人に1人はかかると言われています。腰からお腹の激しい痛みが特徴です。石の大きさや数、存在する場所に応じて適切な治療を選択します。自然排石した結石に関しては持参していただき、結石分析検査を行うことにより、再発を防ぐための指導を行います。自然排石困難な膀胱結石や尿管結石に対しては経尿道的尿路結石破砕術を行っています。当院は衝撃波結石破砕装置(ESWL)を有しておりませんので、必要時は他院を紹介しております。
経尿道的尿路結石破砕術
麻酔下に細い内視鏡を尿道から遠し、尿管または腎臓にできた結石をレーザーで破砕します。
細かくなった結石の破片は手術中に回収、体外に取り出します。術後の感染予防に尿管内にステントを一時的に留置し、後日外来受診時に抜去します。
前立腺肥大症
前立腺は男性のみ有する排尿や勃起、射精にかかわる臓器です。年齢とともに肥大してくることにより、尿の切れが悪い、尿の勢いが悪い、夜間何度もトイレに行く、残尿感があるといった症状を引き起こしてきます。 ひどい場合は尿が出なくなることもあります。診断のために尿の勢いや残尿を測る検査や、前立腺エコー等で前立腺の大きさを測る検査を行います。治療は薬物療法と手術療法の2つに大きく分けられます。
手術療法は最も一般的である経尿道的前立腺切除術(TURP)を行っております。当院では生理食塩水を使用して体に負担の少ない(従来の合併症を軽減した)方法で全例施行しております。手術に使用するモニターや切除鏡なども最新の備品を取り揃えております。通常、約1週間程度の入院となります。
手術後の尿漏れや勃起や射精障害といった男性機能障害が出にくいより低侵襲な手術であるウロリフト(経尿道的前立腺吊り上げ術)を導入しております。
前立腺肥大症に対する低侵襲手術
- 早期の症状緩和と回復が得られています。
- 術後射精機能障害または勃起障害は、一過性の症状があっても消失し、新規発症はありませんでした。
- これまでの前立腺肥大症の治療の中でも術後カテーテル挿入率が低いです。
- これまでの前立腺肥大症の治療の中でも前立腺の組織に壊滅的な損傷を与える可能性が低いです。
手術が困難な場合などには細くなった前立腺部尿道を広げる尿道ステント留置術も行えます。切除をしないため、体への負担は非常に少なく、血液をサラサラにするお薬を内服している方や高齢の患者さんにとって非常に有効な治療法となっております。通常約3-4日程度の入院で行います。ただし、年一回のステントの交換が必要となります。
薬物療法は尿道を拡げる薬に加え、男性ホルモンに作用し前立腺の縮小効果の期待できる5α還元酵素阻害剤も使用できます。また、ED治療薬と同成分のタダラフィルが前立腺肥大症に伴う排尿障害に保険適応となり、血管平滑筋弛緩による血流改善、尿道・前立腺・膀胱頸部の平滑筋弛緩などの作用により効果を発揮いたします。 前立腺肥大症は年齢とともに進行していく病気であり、患者さんの希望や年齢、症状に合わせてより良い治療を選択いたします。
神経因性膀胱
当科では膀胱内圧測定が可能であり、症状に応じて薬物療法を主体に治療を行っております。前立腺肥大症や脊椎損傷、二分脊椎、パーキンソン病などで神経因性膀胱のため自分で排尿することが困難となった場合に膀胱に尿が多量にたまってしまうことがあります(尿閉)。その場合、尿道カテーテルを膀胱まで留置し管を介して排尿を行う必要があることがあります。
定期的な尿道カテーテル管理が必要な場合もありますが、当科では積極的に可能な患者さんには間欠的自己導尿カテーテルの使用を指導させていただきます。長期的なカテーテルの留置は感染のリスクや尿道損傷、結石形成などのトラブルを引き起こすことが知られており、間欠的自己導尿管理が望ましいとされています。一回使い切りのカテーテルと繰り返し使用できるカテーテルなどの種類を豊富に取り揃えております。患者さんのスタイルに合わせてお渡しすることができます。最初は医師や看護師による指導により適切は処置を身につけていただくことが可能となります。
過活動膀胱、尿失禁/トイレに間に合わない、尿が漏れる
過活動膀胱は50歳以上の女性の8人に1人と推定されております。「急に我慢できない強い尿意をもよおし、もれそうになる。」「トイレにいく回数が多い」「急に尿意をもよおし、トイレに間に合わずにもらしてしまった」などの症状の方が過活動膀胱の可能性が考えられます。排尿のことで悩んでいるのに年齢のせいとあきらめたり、恥ずかしくて相談できていないことはありませんか。当科へ受診して医師に相談、診察の上、薬物療法で改善することが期待できます。
尿路感染症
尿路感染症の中には臓器に応じて膀胱炎、腎盂腎炎、精巣上体炎、前立腺炎、尿道炎まで存在します。 最も多い膀胱炎は女性に多く、頻尿、血尿、排尿時痛、残尿感などの症状が生じます。外来通院にて尿培養検査を行い、的確な抗生剤治療を行います。高齢者の尿路感染は重症化することもあるため、状況に応じて入院加療を行う場合があります。
当院は上記のあらゆる尿路感染症に対応しています。地域の特性を考慮し、感染症のガイドラインに準じた最新の知見をもとに治療に当たっております。
ED(勃起障害)
診療は全て(検査から投薬まで)自費診療になりますが、全てのED治療薬の処方が可能です。また前立腺癌手術後の勃起障害に対し、ED治療薬でのリハビリテーションを行うことも可能です。
関連施設
外来診療担当医
最終更新日:2024年7月22日