臨床試験

臨床試験とは

新たな治療法を開発する際には実際の患者さんに適応してどのような反応があるかを注意深く観察する必要があります。その際「臨床試験」という枠組みで、厳密に患者さんの状態や、治療の効果を判定し、そのあとの標準となる治療法を決定するのが、現在の根拠に基づく診療(EBM)の基礎となっています。
日本国内では試験と聞くとよくない印象を持つ方もいらっしゃいますが、必ずしも実験的な治療というわけではなく、倫理、安全面で十分配慮されかつ有望な治療法と考えられるものが臨床試験として行われます。
すべての臨床試験は開始にあたり当院の倫理審査委員会で審査されます。
当科でもよりよい治療の開発を目指して各疾患でいくつかの試験に参加して治療を行っています。

臨床試験への参加について

臨床試験に参加するかどうかは患者さんの自由意思に基づきます。説明を聞いた上で、参加しない場合でも不利益を被ることはありません。また、臨床試験の治療を一度始めた後でも、同意を途中で撤回することもできます。

費用について

通常の治療と同じように健康保険が適応され、自己負担分をご負担いただきます。
製薬会社が主体となり薬剤の有効性を評価する試験(治験)では、薬剤費、検査費用の一部、患者さんの負担を軽減するための費用を試験実施主体が負担することもあります。

補償について

臨床試験の治療によって、予測できなかった重い副作用など健康被害が生じる可能性がありますが、その場合は通常の診療における健康被害と同様に適切に対応します。基本的に特別な補償の仕組みはなく、治療により健康被害が生じた場合も一般診療と同じように保険診療として対処することになります。治療費の自己負担分については患者さんに負担して頂くことになります。

臨床試験参加に興味がある方へ

参加にあたっては腫瘍のステージや合併症の有無など条件があります。状態を評価の上、参加が可能であるか慎重に検討させていただきます。試験の詳細や試験に関する質問等ございましたら、当科にご相談ください。

疾患ステージ試験種別概要
脳腫瘍WHO GradeⅣ
(膠芽腫)
第Ⅲ相高齢者(71歳以上)の患者さんへの放射線治療の回数を減らした場合の治療成績を評価する試験。
頭頸部がんⅢ~ⅣB期第Ⅲ相頭頸部がんの患者さんの、頸部領域への放射線量を低減した場合の治療成績と副作用を評価する試験。
肺がんⅠA期第Ⅲ相定位照射(ピンポイント照射)の放射線量を増加させることで治療成績が改善するかどうかを評価する試験。
ⅡB~ⅢC期第Ⅱ相肺機能画像を利用した放射線治療計画を行うことで、肺炎の副作用を減らせるかどうかを評価する試験。
Ⅲ期第Ⅲ相高齢者(75歳以上)の患者さんへの化学放射線療法においてNab-PTX(抗がん剤)を追加した場合の評価。
乳がんT1~2N0M0
ホルモン受容体陰性
HER2陽性
第Ⅱ相薬物療法が非常に良く効いた患者さんに、手術をしないで治療を行った場合の治療成績を評価する試験。
膀胱がんT2-3第Ⅱ相膀胱の全摘を回避するため、まず放射線治療を行い、その後膀胱部分切除する治療が安全に行われるかを評価する試験。
腎がん切除不能 or
転移性腎細胞がん
第Ⅱ相ニボルマブ(免疫チェックポイント阻害薬)を併用した放射線治療によって、他病変にも治療効果が及ぶかどうかを評価。
直腸がん術後高リスク第Ⅱ相手術後に再発高リスクと考えられる患者さんに化学放射線治療を行った場合の治療成績を評価する試験。

臨床試験の詳細については以下をご参照ください。

  • 国立研究開発法人国立がん研究センターがん対策情報センター、がん情報サービス

http://ganjoho.jp/public/dia_tre/clinical_trial/index.html(外部リンク)