2016年8月29日
脳神経内科 板東 充秋
整理が苦手な人は多く、注意欠陥/多動性障害(ADHD)や注意欠陥障害(ADD)の例でみられることは、よく知られています。しかし、パーキンソン関連疾患でもみられることがあるようです。
本来の几帳面さによってベッド周囲がきちんと整理・整頓していたのに、視床下核深部刺激療法(STN-DBS)後に整理・整頓ができなくなってしまった症例を沖山らが報告しています。その頻度は16%(4/25例)で、その他の例では不変かほとんど不変でした。要因として、沖山らは、術後の抑うつスコアの悪化、知的機能の低下、前頭葉機能の低下などの関与を指摘しています。ただし、パーキンソン病でも、もともと几帳面な例24%(6/25例)とならんで、もともと整理/整頓ができない例も16%(4/25例)みられており、DBSだけが原因ではないようです。
今年の日本神経学会総会でも、国立病院機構徳島病院 リハビリテーション科の谷口らが常に病室を片付けている動作をするものの、かえって前よりも散らかしてしまうという「片付けられない症候群」を呈したパーキンソン病関連疾患患者4例を報告しました。その構成は、パーキンソン病3例、進行性核上性麻痺1例でした。通常のADHDやADDの場合と異なり、"片付けられない"ことについて病識が欠如していました。これには、認知機能の低下により、自分の遂行機能障害の存在を自覚できないことが関与しており、もともと綺麗好きな性格であることと、認知機能障害に伴う遂行プログラムの障害を合併したことが影響していると、谷口らは述べています。
この症状は、強迫性障害、統合失調症、自閉症などと並んで、パーキンソン病でもみられることのある病的溜め込み症候群(hoarding)とは異なるようです。なぜなら、溜め込み症候群の構成要素である、1)捨てるのが困難(difficulty discarding)、2)過剰な取り散らかし(excessive clutter)、3)過剰な取得(excessive acquisition)のうち、1)や3)は目立ちません。
同様に、前頭葉損傷などでみられることのある病的収集行動(collecting behavior)とも異なっています。
なお、この症状が、ADHDに用いられる薬や認知療法などのリハビリテーションで改善するかどうかはまだよくわかっていません。
参考文献
1)Sari Solden. Women with Attention Deficit Disorder. Underwood Books, 2000.
(邦訳『片づけられない女たち』サリ・ソルデン著.ニキ.リンコ訳、WAVE出版、 2008)
2)沖山 亮一, 横地 房子, 谷口 真, 寺尾 亨, 川崎 隆, 高橋 宏, 浜田 生馬, 伊澤 奈々, 西川 奈津子, 岩室 宏一. 視床下核刺激療法の刺激合併症とその対策 STN DBSでパーキンソン病患者によく見られる行動様式が影響を受ける? 機能的脳神経外科, 46;30-31, 2007.
3)谷口 百合, 宮田 七, 川道 久美子, 有井 敬治, 川村 和之, 三ツ井 貴夫. 「片付けられない症候群」を呈したパーキンソン病関連疾患の精神・心理学的検討. 国立病院総合医学会講演抄録集 69回 PageO-80-4, 2015.
4)谷口百合、宮田七、川道久美子、有井敬治、三ツ井貴夫.「片付けられない症候群」を呈したパーキンソン病関連疾患患者の精神・心理学的検討.第57回日本神経学会学術大会抄録集,2016.
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