小児総合医療センターの特徴的な取組
感染症医療
当院は、さまざまな小児の感染症に積極的に対応できる体制を整えています。 歴史的にも、前身の病院の一つの都立清瀬小児病院は、戦後に疾病負荷の高かった感染症の結核に対して、 1948年に都立清瀬小児結核保養所から始まっています。 現在も第二種感染症指定医療機関として小児の結核病床、結核科を有しています。 2010年に当院が開院した際、新型インフルエンザウイルスを想定した感染症病棟が設計されて、 感染症科も新たに設置されました。 ハード面では陰圧管理ができる病床を一般病床、PICU(小児集中治療室)、NICU(新生児集中治療室)に備えていて、 軽症から重症までのあらゆる年齢の小児期の感染症に対応ができます。 感染症は周囲に伝播することがあるので、患者さんとご家族、職員も影響を受けます。 感染リスクを抑える感染症対策を的確に行えるように、 感染管理認定看護師、ICD(Infection Control Doctor、感染対策医師)、薬剤師、検査技師、事務からなる感染対策チームが組織されています。 また感染症診療には欠かすことのできない院内の細菌検査室に加えて、PCRなどの核酸増幅検査の体制も備えています。
一般感染症・免疫不全感染症
小児期の病気で最も多いのは、感染症疾患になります。 救急での外来治療、入院での通常治療から集中治療まで対応をしています。 感染症の治療は、主治医による診療に加えて、感染症の専門家がサポートして行います。 外科的治療が必要な感染症であれば、外科系診療科が治療を行います。 重症の感染症では、呼吸や循環の適切な全身管理も必須となり、集中治療の専門家が行います。 免疫力が落ちる病気や治療をしている子どもは、免疫不全感染症という特殊な感染症に罹りやすくなります。 複雑な診断や治療を感染症の専門家が関わることで、最善の治療を受けられるようにします。 小児病院の強みである多彩な専門性を生かしたチーム医療で、感染症診療に取り組んでいます。
新興感染症・再興感染症・輸入感染症
当院は、新たに流行する感染症(新興感染症)、再び流行する感染症(再興感染症)、輸入感染症にも法律に基づいて行います。
2015年の秋にエンテロウイルスD68による呼吸器感染症が小児で全国的に大流行しました。 当院でも多くの子どもが外来や入院で治療を受けました。昔から判明していたウイルスですが、2014年から世界的な大流行がみられました。 当初は原因不明であった呼吸器ウイルス感染症を突き止めて、当院から報告しました。
エンテロウイルスD68型が検出された小児4症例(外部リンク)
2019年に中国武漢で報告されてパンデミックとなった新型コロナウイルス感染症の小児患者の入院を最も多く受けています。 感染した妊婦さんから出生した新生児、集中治療が必要な小児、基礎疾患がある小児など通常の医療機関で対応が難しいケースも含めて、 行政機関や地域の医療機関からの入院依頼に対応しています。 またコロナ罹患後のさまざまな症状で困っている子どもの外来診療も行っています。 東京都の新型コロナウイルス感染症診療の小児での中心的な役割を担っています。
海外渡航後の感染症では、通常、日本ではみられないものが原因のことがあります。 特に熱帯地域や衛生状態の悪い国では、多くの感染症が知られています。 感染症の専門家が関わることで、特殊な輸入感染症の診断、治療への対応も行います。
感染症医療への貢献
小児感染症の指導的立場を担う病院として、地域貢献にも取り組んでいます。 地域のクリニックや医療機関で感染症診療、感染対策について困っている場合には相談を受けて、 専門家による助言を行っています。医療従事者や一般市民を対象とした感染症の講演会などの啓発活動も行っています。 感染症専門家の人材育成にも力を入れていて、当院で研修を受けて卒業した医師が全国で活躍しており、 国内外からの短期研修の受け入れや全国の研修医向けのセミナーなども開催しています。