血液透析・腹膜透析
2018年10月26日 1.1版
透析とは
腎臓の機能が悪くなった時(急性腎不全、末期腎不全)に行う治療の一つで、腎臓の働き(不要な水分を体の外に捨てる、体の中の老廃物を外に捨てる)の代わりをするもの(腎代替療法)です。尿の代わりに、人工の透析液に体の中の老廃物や水分を捨てますが、その方法として血液透析と腹膜透析の2種類があります。
当院では前身の東京都立清瀬小児病院時代からあわせて500名以上の小児腎不全患者さんに透析導入をおこなってきております。ここ20年の年代別および年齢別の透析手法選択は以下の通りです。
血液透析 Hemodialysis(HD)
原理
血管内から血液を引き出し、透析膜(水分とごく小さな物質のみを通過する膜)に血液を通すことで、体の中の老廃物や電解質・過剰な水分を透析液に移動させ、体の中から除去する方法です。
疫学
我が国では、10歳未満の末期腎不全患者さんの9%、10歳以上の末期腎不全患者さんの22%が血液透析治療を選択されています。当院では、維持の透析としては体重20-30kg以上の患者さんの治療選択肢として考えています。
当院での治療
基本的に月・水・金曜日の午前中からお昼過ぎにかけて透析を行っています。
1回の透析にかかる時間は4~6時間です。
入院中の患者さんで週3回の透析だけでは治療が不十分な場合には、週4-5回に数を増やします。それでも不十分な場合には集中治療室で24時間連日の血液透析を行います。
方法
血液の出し入れの仕方の違いで、以下に示す2種類の方法があります。
[1] くびの血管に「血液透析カテーテル」を挿入して血液を出し入れする方法
[2] 腕に「内シャント」と呼ばれる腕の動脈と静脈がつながった血管を作成し、そこに針を刺し(穿刺)血液を出し入れする方法
[1]は年齢や体格の小さい患者さん、もしくは血液透析が一時的に必要な患者さんに行われます。
血液透析カテーテルを使用して血液透析を行っている間は、入院が必要です.
[2]は20kg以上の体格があり、長期的に血液透析が必要な患者さんに行われます。
そのため、血液透析を行う場合には当院を含めた病院や透析クリニックなどの施設に通う必要があります。透析クリニックでの血液透析の場合には、時間・曜日が固定されます(1回4時間、月・水・金もしくは火・木・土)。限られた時間・回数で透析を行うために、食事・水分の制限が必要になります。
合併症
・高血圧、心不全:適切な水分が除去されず体の中に残ってしまうと、血圧があがる原因になります。高血圧は心臓に負担をかけるため、長期間続くと心臓の働きが悪くなってしまうことがあります。このような状態に陥らないためにも、毎日の食事・水分の制限をしっかり守る必要があります。
⟨⟨[1]の方法を用いて血液透析している場合⟩⟩
・カテーテル閉塞:血液透析を行うためのカテーテルが血液の塊によって詰まってしまった状態のことです。血液の塊を溶かす治療を行いますが、塊が溶けない場合には再度手術をしてカテーテルを入れなおす必要があります。
・カテーテル感染:カテーテルが体の中に入っているところから菌が直接血液や周囲の皮膚の中に入りこむことで生じます。皮膚に感染した場合には赤く腫れてきます。菌が血液の中に入り込むと熱が出ます。体全体に菌が及んだ場合命の危険があります。その場合には抗生物質を使って治療しますが、治りが悪い場合にはカテーテルを抜く必要があります。
⟨⟨[2]の方法を用いて血液透析している場合⟩⟩
・シャント閉塞:血液透析を行うためのシャントが詰まってしまった状態のことです。シャントは、常に血管が細くなり詰まってしまう危険性があります。シャントが詰まってしまうと血液透析を継続することができません。カテーテルを使って詰まりをとる治療を行いますが、それでも治らない場合には再度手術をしてシャントを作成しなおす必要があります。
・シャント感染:穿刺したところから菌が直接血液や周囲の皮膚の中に入り込むことで生じます。感染しているところは、皮膚が赤く熱く腫れてきます。ひどい場合には皮膚が崩れて破裂する可能性があります。菌が血液の中に入り込むと透析のたびに熱が出ることがあります。体全体に菌が及んだ場合命の危険があります。シャントに菌が感染した場合には入院のうえ抗生物質で治療する必要があります。
診療実績
当院の前身である東京都立清瀬小児病院時代から含めて、200人以上の血液透析患者さんの診療に携わっています。
疫学
服部元史他:2006年~2011年末までの期間中に新規発生した20歳未満の小児末期腎不全患者の実態調査報告.日児腎誌2013; 26: 330-340