都立駒込病院における原発性胆汁性胆管炎に対する抗線維化治療薬の医師主導治験の開始について(2019年09月13日)

2019年09月13日

この度、都立駒込病院では、原発性胆汁性胆管炎が原因で肝硬変になった患者を対象とした医師主導治験(※1)を令和元年9月から開始しましたのでお知らせします。

1 原発性胆汁性胆管炎について

 原発性胆汁性胆管炎は、国内で約5万人の患者数と推定され、未だ原因が不明の肝臓の病気で、胆汁うっ滞(胆汁の流れが阻害されてしまうこと)を生じることにより肝臓の働きが低下することが知られています。

 肝臓でつくられた胆汁は、胆管を通って胆のうへ流れていきます。原発性胆汁性胆管炎では、肝臓内の細い胆管が障害され胆汁の流れが少し滞ってしまいます。この胆汁のうっ滞により肝臓の細胞(肝細胞)が障害を受け、長期間に渡って肝障害が続くと肝臓に線維が蓄積する(線維化)ことが起こり肝臓の働きが低下します。病状がさらに進行すると、肝臓が硬くなる肝硬変になり、黄疸(眼や皮膚が黄色くなる)や腹水(お腹に水が溜まる)、食道静脈瘤といった様々な合併症が生じることがあります。原発性胆汁性胆管炎に対する治療薬として、現在ウルソデオキシコール酸やベザフィブラートが用いられています。これらの薬は多くの方に治療効果が確認されていますが、約20%の方には肝機能の改善が得られず、病状が進行して線維化が進み肝硬変に至ることがあります。肝硬変に至った場合、他の原因による肝硬変と同じ治療を行いますが、肝硬変の病態そのものに対する有効な治療法(抗線維化治療)は現在確立されていません。

2 医師主導治験について

 国立研究開発法人日本医療研究開発機構(以下「AMED」という。)の難治性疾患実用化研究事業の、原発性胆汁性胆管炎の病気に類似したマウスモデルを用いた基礎研究において、OP-724(※2)による肝臓の線維化(肝硬変)を改善する効果を確認し、この研究結果を踏まえて、原発性胆汁性胆管炎を原因とした肝硬変の患者を対象とした医師主導治験を令和元年9月から当院で開始する運びとなりました。本治験は第Ⅰ相試験という最初の開発試験段階にあたり、OP-724の原発性胆汁性胆管炎の患者に対する安全性や忍容性を確認することが目的です。2種類の投与量を設定し、OP-724を投与した際の副作用の出現や血液中の薬物濃度を投与された患者で確認し安全性・忍容性を検討します。投与スケジュールは下図に示しますように、最初の点滴後1週間観察し安全性を確認したのちに週2回の点滴投与を12週間繰り返します。そして、次の段階の試験(第Ⅱ相試験)の投与量(推奨用量)を決定します。今後、有効な治療薬がない原発性胆汁性胆管炎の肝硬変患者に対して、OP-724が新たな抗線維化治療薬となることを目指して研究に取り組みます。

<投与スケジュールのイメージ>

スケジュール.png

3 用語解説

(1)医師主導治験

 平成14年7月の薬事法改正により、製薬企業等と同様に医師が自ら治験を企画・立案し、実施することが可能になりました。この治験の準備から管理を医師自ら行うことを医師主導治験といいます。医師主導治験では、治療に必要とされているにも関わらず、採算性の問題等で製薬会社が治験を実施できない薬や、既に承認されている薬の適応症を拡大することなどを目的に、医師が自ら治験の計画を立てて治験を実施します。

(2)OP-724

 OP-724は株式会社PRISM BioLabが創製した化合物(旧開発コード:PRI-724)で、Wnt/β-カテニンシグナル伝達系の活性化を抑制するCBP/β-カテニン阻害剤です。元来、がんの治療薬として開発が進められていましたが、公益財団法人東京都医学総合研究所において、独自に開発したHCV肝硬変モデルマウスを用いて、OP-724が肝組織像を改善するなど抗線維化作用を有することを確認いたしました。この研究成果に基づき、国内ではAMEDの支援を受け、当院においてHCV肝硬変の患者を対象とした医師主導での第Ⅰ相臨床試験を終了し、現在は医師主導での第Ⅰ/a相試験を実施しているところです。また、OP-724は株式会社PRISM BioLabから大原薬品工業株式会社に導出され、大原薬品工業株式会社がその開発を引き継いで肝硬変治療薬として実用化を目指しています。

都立駒込病院における原発性胆汁性胆管炎に対する抗線維化治療薬の医師主導治験の開始について(PDF 247.1KB)

【問合せ先】

 駒込病院事務局庶務課

電話(代表):03-3823-2101

2019年度