東京都立松沢病院院長の水野雅文と申します。
東京都立松沢病院は、令和4年7月1日より病院名はそのままに、地方独立行政法人東京都病院機構の一員となりました。今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。
外来、入院を中心とする当院の医療サービス内容はこれまでの都立病院時代のものと何ら変わることはありませんので、皆さまどうぞご安心の上、来院なさって下さい。
精神科医療の大きな流れは、入院治療中心の医療から地域ケア中心へと進んでいます。当院では独立行政法人化を機会に『患者・地域サポートセンター』を開設いたします。
精神疾患を患う方々が、住み慣れた地域で安心して暮らせるように、地域の医療機関、保健や福祉その他の行政サービスや教育機関などとの連携を進め、アクセスしやすく、安心して受診して頂けるサービスを強化して参ります。
外来予約の待ち期間を短縮し、早期発見、早期支援により重症化を逃れ、時宜を得た治療によって入院期間を短くし、できる限り地域生活を送って頂けるよう、入院治療で培った支援のスキルを地域に還元して参ります。
これまで必要とされながら十分ではなかったサービスも、重点的に強化していきます。具体的には、思春期・青年期、アルコール依存症、精神疾患を持つ人の身体合併症などの治療・支援です。
「思春期・青年期」の精神科医療では、10代から20歳くらいを対象とした、ひきこもりや摂食障害、いじめやDVによるストレス障害、さらにゲーム症などの現代的なストレス状態についての専門外来を開設しています。摂食障害についても精神科医、内科医、栄養サポートチーム(NST)等の多職種チームが連携して外来・入院で支援します。
「アルコール依存症」の医療は、東京都のアルコール依存症治療拠点病院として、主にアルコール依存の患者さんに対する専門的な治療を提供するとともに、地域における依存症対策の情報発信を担っていきます。専門外来のほか、専用の入院病棟に加え、入院中から参加できるデイケア、ルピナスを運営しています。
精神疾患を持つ方々の「身体合併症医療」の重要性は、コロナ禍において再確認されました。当院ではこれまでに500名以上の精神症状を伴うコロナ感染症の患者さんの入院治療を行なってきました。これも精神科とともに、平時から内科、脳神経内科、外科、整形外科、形成外科、脳神経外科、放射線科、麻酔科、リハビリテーション科、歯科、耳鼻咽喉科、眼科、皮膚科、泌尿器科、婦人科が併設され、医師、看護師、多職種チームが精神を病んだ患者さんに寄り添い、さまざまな場面での診療を積み重ねてきた成果だと考えています。今後は、緩和ケアなど、さらに必要な医療を届けられるよう努力して参ります。
精神科医療分野の最先端の成果もいち早く取り込み、当院で実施するさまざまな臨床研究などにおいても患者・市民参画(Patient and Public Involvement (PPI))の取り組みを推進していきます。
東京都立松沢病院は、患者さん一人一人に寄り添い、声なき声に耳を澄まして、患者さんの生命、生活、人生を支えていきたいと考えています。
今後ともご指導ご鞭撻を賜りますようよろしくお願い申し上げます。
2022年7月1日