小児専門医療 先天性気管狭窄症・呼吸器疾患

先天性気管狭窄症

 先天性気管狭窄症は窒息による命の危険があり、手術のリスクも高い大変難しい病気です。日本全国でも対応できる施設が限られている中、救命・集中治療部が遠方からの搬送依頼にも対応し、患者さんを受け入れています。外科・心臓血管外科・呼吸器科・循環器科・集中治療科・麻酔科・感染症科など関係各科で日々細部にわたって議論を行い、手術適応や方法、タイミング、集中治療管理などについて決定して診療に当たっています。 手術はスライド気管形成術を基本としており、センター開院後(2010~2023年)76例の手術を経験し、66例(87%)が生存退院しています。重度先天性心疾患合併、片肺低形成・無形成合併、体重3キロ以下での根治手術など高難度症例に対しても適応を見極め、手術にて救命し無事に退院できた患者さんがおります。それぞれの症例によって異なる病態に対応し、チーム全体で常に成績向上に向けて努力を重ねています。退院された多くの患者さんが普通の生活を送ることができています。

スライド気管形成術画像

術前術後のCTによる比較画像

小児呼吸器疾患

 上記気管狭窄症以外にも先天性嚢胞性肺疾患(先天性肺気道奇形・気管支閉鎖症等)、肺・縦隔腫瘍、気胸、難治性肺感染症、膿胸、乳び胸、漏斗胸・鳩胸といった胸郭変形等に対する手術、気管支鏡治療を行っています。小児においてこれらの疾患は頻度が少なく、その診断・治療に習熟した小児外科医や呼吸器外科医は極めて少ないのが現状です。当施設には豊富な経験があり、呼吸器外科専門医・気管支鏡専門医資格を有する本邦唯一の小児外科指導医も在籍しています。また、小児専門病院では本邦唯一の呼吸器外科専門研修連携施設・気管支鏡関連認定施設でもあります。嚢胞性肺疾患等に対する肺葉切除・肺区域切除は、患児の体格や病変の部位等を勘案し、完全胸腔鏡下または胸腔鏡補助下に行っています。必要な患者さんには出生当日であっても緊急で肺葉切除をしています。縦隔腫瘤(縦隔腫瘍や気管支原性嚢胞等)に対しては主に完全胸腔鏡下手術を行っていますが、巨大な病変に対しては胸骨正中切開等を選択し、ECMOや人工心肺を使用することもあります。肺・縦隔病変いずれに対しても、無理に完全胸腔鏡下手術にこだわることなく、安全性と長期的予後を最優先に考えて診療することを心がけています。漏斗胸に対してはNuss法とRavitch変法のいずれも施行しており、鳩胸の手術にも対応しています。この他、超低出生体重児の横隔膜ヘルニアや乳児難治性乳び胸に対するリンパ管造影・胸管結紮術等、一般の小児外科施設や呼吸器外科施設では対応困難な重症患児の治療にも他科スタッフと力を合わせて積極的に取り組んでいます。

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外科

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こどもたちの全身における病気、けがに対して外科的に(手術で)治療します。治療範囲は顔面から手足の先まで全身に渡り、年齢も生まれる前の胎児から新生児、乳児、幼児、学童と幅広く診療に当たっています。難治症例や病態が多臓器に渡るような症例においては関連各科と共働して治療にあたります。カンファレンスを開催し、意見を出し合って患者さんにとって最良の結果が得られるよう、チャレンジ精神とチームワークで質の高い医療を実践しています。