手術支援ロボット da Vinci®(ダヴィンチ)による手術について

ロボット支援手術について

<ロボット支援手術とは>

ロボット支援手術は、医師がコントローラーを使いロボットアームの先に装着された器具を遠隔操作してすすめる手術です。手術用ロボットには多くの種類(機種)がありますが、当院では、世界中で最も普及しかつ歴史のあるインテュイティブサージカル社製のda Vinci(ダビンチ) Xiを2台採用しています。

当院では消化器・一般外科、泌尿器科、産婦人科、呼吸器外科の4診療科がロボット支援手術を実施しており、食道がん、胃がん、膵がん、大腸(結腸・直腸)がん、肝臓がん、胆道がん、肺がん、前立腺がん、膀胱がん、腎がん、子宮(体・頸)がん、卵巣がんの手術に、積極的にロボットを使用しています。

上記4診療科には合計8名のロボット支援手術認定プロクター(指導者)が在籍し、安全な手術が行われるよう、指導・監督しています。

写真:da Vinci 1
写真:da Vinci 2

<ロボット支援手術のメリット>

  1. 身体への負担が少ない
    鉗子を挿入するための小さな穴を数か所切開するのみであり、傷が小さく、出血量が抑えられるため、手術後の回復が早く、身体への負担を軽減することができます。
  2. 精度の高い手術が可能となる
    従来の腹腔鏡手術では、術者は2次元の画像を見ていましたがダヴィンチ手術では3次元立体画像を見ながら手術ができます。奥行きを感じて操作できるため、より正確かつ安全な手術が可能となります。
  3. 鉗子の操作精度、自由度が高い
    従来の腹腔鏡手術ではまっすぐな鉗子を用い手術を行っておりました。ダヴィンチ手術では、関節を使用し術者の思うままに、まさに熟練した医師の手のような操作が可能で、かつ、手ぶれ補正がかかっているため正確な手術が可能となります。

当院におけるロボット支援手術の実績

グラフ:ロボット支援下手術件数

対象疾患

<外科(消化器・一般)―上部消化管外科>

担当医からのメッセージ
外科医長 石橋 雄次
食道癌、胃癌に対するロボット支援手術は、精細な3D画像を見ながら、手ぶれのないロボットアームを使用することで従来の胸腔鏡・腹腔鏡下手術よりも精密な手術が可能です。特に食道切除で損傷が起こりやすい声帯を動かす神経や胃切除で損傷が起こりやすい膵臓の周囲の操作を安全かつ精密にできるという利点があります。当科はロボット支援下食道切除、胃切除術の経験が計300例以上あり質の高い手術が可能です。
対象疾患

食道癌、胃癌(ともに早期癌~進行癌まで適応)。保険診療での手術です。

その他
癌の進行度や広がりの程度によってはロボット支援手術よりも開腹手術や従来の腹腔鏡下手術のほうが適していることもあります。患者さん、ご家族と相談しながら手術方法を決めさせていただきます。

<外科(消化器・一般)―下部消化管外科>

担当医からのメッセージ

外科医長 大塚 英男
下部消化管外科では、年間250-300例の初発大腸癌患者さんの手術を行っています。
手術治療は、大腸癌の進行度、患者さんの基礎疾患・意向を総合的に判断し、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット支援手術のいずれかを選択し、安全で質の高い診療を心掛けています。
大腸癌に対する腹腔鏡手術施行率は約8割です。

対象疾患

大腸癌(結腸癌、直腸癌)

その他

全て保険診療で行っており、手術費用は従来の腹腔鏡手術と同様です。癌の状況によっては開腹手術や従来の腹腔鏡手術を推奨させていただくこともありますので、ご相談頂ければ幸いです。

<外科(消化器・一般)―肝胆膵外科>

担当医からのメッセージ

外科部長 森田 泰弘、外科医長 林 達也
当院では系統的肝切除や膵頭十二指腸切除などの高難度手術においても腹腔鏡手術の実績がありますが、現在では従来の腹腔鏡手術に加えロボット支援手術の施設基準を満たし、導入しております。ロボット支援手術は手ぶれがないため、膵頭十二指腸切除などの複雑な再建が必要なものや肝切除において、より精緻な手術が行えるというメリットがあります。

対象疾患
ロボット支援下膵頭十二指腸切除・膵体尾部切除
膵癌、低悪性度膵腫瘍(膵管内乳頭粘液性腫瘍、膵粘液性嚢胞腫瘍、膵神経内分泌腫瘍など)
ロボット支援下肝切除
肝細胞癌、転移性肝腫瘍、肝良性腫瘍など
ロボット支援下分流手術
先天性胆道拡張症
その他

ロボット肝胆膵手術の手術費用はこれまでの腹腔鏡手術と同程度です。病状によっては腹腔鏡手術、開腹手術を推奨させて頂くこともありますので、外来にてご相談頂ければ幸いです。

<呼吸器外科>

担当医からのメッセージ
呼吸器外科医長 吉川 拓磨
当院では、手術の9割以上を胸腔鏡手術(3-4センチメートルの創1か所と1センチメートルの創2か所)で行っておりますが、肋骨と肋骨の間(肋間)を切るため、肋間神経を痛めることがあり、術後の痛みの原因になることがあります。ロボット支援手術は、肋間を痛めることが少ないため、痛みのより少ない手術が可能です。
対象疾患
当院では、肺癌に対する肺葉切除術、縦隔腫瘍に対する腫瘍摘出術、重症筋無力症に対する胸腺摘出術に対してロボット支援手術を行っております。
その他
縦隔腫瘍に対しては、基本ロボット手術で行っております。肺癌に対しては、症例により最適な手術方法を提案させていただきます。手術の費用は、保険適用となっているため、通常の胸腔鏡手術や開胸手術と同負担となります。ご自分が、ロボット支援手術の対象となるか詳しい説明が聞きたい方は、ぜひ担当医(吉川)にご相談ください。

<泌尿器科>

担当医からのメッセージ
泌尿器科部長 佐藤悠佑
日本で最初に保険適応になったロボット支援手術は、前立腺癌に対する根治的前立腺摘除術です。それ以降、泌尿器科ではロボット支援手術が広く普及しました。骨盤の奥深くで行ったり、細かく正確な縫合が必要となったりする泌尿器科の手術は、ロボット支援手術との相性が非常に良いと言えます。当院でも、下に挙げる疾患の手術は原則としてロボット支援手術で行うようにしています。
対象疾患
前立腺癌(根治的前立腺摘除術)、腎癌(腎部分切除術・根治的腎摘除術)、膀胱癌(根治的膀胱摘除術)、腎盂尿管癌(腎尿管全摘除術)、腎盂尿管移行部狭窄症(腎盂形成術)
その他

前立腺癌の手術後は尿失禁が起こりやすくなりますが、ロボット支援手術で行うことによりかなり低減しており、ほとんど失禁しない患者さんもいらっしゃいます。腎癌では、従来は片方の腎臓をすべて取る腎摘除術を行っていたようなケースでも、ロボット支援手術で腎部分切除術を行い腎臓を残せる場合があります。ロボット支援手術のメリットを最大限活かせるように、個々の患者さんとよく相談して治療方針を決めさせていただきます。

<産婦人科>

担当医からのメッセージ
産婦人科医長 中村浩敬
産婦人科では良性疾患、悪性疾患問わずロボット支援手術を行っています。2024年現在保険適応になっているロボット支援術式は全て当院で施行可能です。
当院は日本産科婦人科内視鏡学会ロボット手術認定研修施設に指定されており、丁寧で安全な手術を心がけております。
ロボット支援手術は優れた治療法ですが、その他にも腹腔鏡・開腹手術、手術以外の薬物療法など患者さんに最も適した治療法を相談して決定することが重要と考えています。

対象疾患
悪性疾患:子宮体癌
良性疾患:子宮筋腫、子宮腺筋症、子宮頸部異形成、子宮脱

その他
前述の通りロボット支援手術は非常に優れた治療法ですが、それぞれの患者さんに適した治療法は一つではありません。患者さんの納得できる治療を相談して決めていきましょう。

よくある質問

<Q1 ロボット支援手術は誰でも受けられるのですか。>

手術が必要となる全ての疾患で、ロボット支援手術を受けられる訳ではありません。対象疾患については各診療科の取組を御参照ください。患者様の病状や既往歴などにより、手術の適用は、最終的に担当医師と相談して決めることになります。

<Q2 費用は通常の手術より高いのでしょうか。>

基本的には腹腔鏡手術と同額となります。(膵臓癌と前立腺癌については、若干高額となります。)
なお、高額療養費制度が適用されるため、自己負担額(食事の費用・自費分は除く)が高額になる場合には、負担をさらに軽減することが可能となります。
(注)疾患の種類や入院期間等によって費用は異なりますので、詳細は患者・地域サポートセンターまでご相談ください。

患者・地域サポートセンター・医療福祉相談

<Q3 安全性は確保されているのでしょうか。>

手術はロボット手術に関する十分な教育を受け、手技等に関する知識・経験を有する医師が行います。また、専門教育を受けた看護師や臨床工学技士などから構成されるチームによって患者様をサポートする体制を作り、安全な手術が行われる環境を整備しています。

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写真:手術室