がん治療と緩和ケア

「緩和ケア」とは、重い病を抱える患者さんやそのご家族ひとりひとりの身体や心などの様々なつらさをやわらげ、より豊かな人生を送ることができるように支えていくケアのことです。
当センターでは、緩和ケア専門医、認定看護師、医療ソーシャルワーカーなど異なる専門家からなる「緩和ケアチーム」が中心となり、がん患者さんに対して緩和ケア医療を提供しています。それぞれの専門性を活かし、症状コントロール、意思決定支援、療養環境の調整など、患者さんのQOL向上に努めています。 また、がん診療連携拠点病院として、東京都と連携して、「がん等の診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修会」を定期的に開催する等、地域においてがん患者の療養生活の質が向上するよう取り組んでいます。

実績

緩和ケアサポートチーム

1.年間依頼件数(入院)
がん患者さんの依頼件数は月30件以上、年間で400件弱となっています。
心不全や腎不全、肺炎などのがん以外の疾患の依頼件数が増えています。

2.緩和ケア外来 年間患者数
主に当院外来に通院されている患者さんの緩和ケアのサポートや入院中に緩和ケアサポートチームが関わった患者さんの外来フォローを行っています。
地域の緩和ケアを必要とするがん患者さんとその家族、関わる医療者の緩和ケアのサポートを始めています。

2023年度緩和ケア研修会

(第1回)開催日:2023年6月24日(土) 修了者:13名
(第2回)開催日:2024年2月3日(土) 修了者:22名

神経ブロック治療

「神経ブロック治療」とは、はがんによる激しい疼痛を和らげるための一つの方法です。特定の神経への麻酔や薬物の注入により、痛みの信号の伝達を遮断し、患者の症状を軽減します。当院では、「ペインクリニック外来」を設けており、麻酔科医が痛みの緩和と生活の質の向上に関する相談に対応しています。

治療実績

神経ブロック料算定実績(R5・麻酔科実施分)

L100神経ブロック(局所麻酔剤又はボツリヌス毒素使用)703
L101神経ブロック(神経破壊剤、高周波凝固法又はパルス高周波法使用)1
L102神経幹内注射2
L104トリガーポイント581
L105神経ブロックにおける麻酔剤の持続的注入13
 1,300

緩和的放射線治療

【スローガン】

生活を支える放射線治療

多摩総合における緩和的放射線治療の特徴

緩和的放射線療法は、進行した難治性がんの局所症状を軽減するために用いられる効果的な方法のひとつです。
基本的に短期間の外来通院で治療が可能です。
病変による出血や痛みなどの症状を和らげることで患者さんやご家族の生活の質を向上させるだけでなく、ご自宅や入所されている施設などにおけるケアをしやすくなる効果も期待できます。
多摩総合医療センターでは、院内からのご紹介だけでなく地域の開業医/訪問診療医の先生方からもご依頼を承っています。

大切にしていること

患者さんやご家族の状況に合わせ、通院の負担や治療時の苦痛を最小限に抑えるよう工夫しながら治療を行っています。

- 一般的な放射線治療の手順
  1. 治療時の姿勢で放射線治療計画用のCTを撮影し、皮膚にマーキングをします。
  2. 対象となる病変にターゲットを絞った治療計画を立案します。
  3. 照射時はフラットな治療台に約15分間寝ていただきます。

照射に伴う痛みはありませんが、治療姿勢を不快に感じる患者さんもいらっしゃるため、治療前に鎮痛剤を多めに投与する場合があります。
痛みや意識障害などにより安静保持が難しい場合には治療が行えないことがあります。


- スケジュール

通常、単回投与(8Gy/1回/1日)または短期コース(20-40Gy/5-15回/1-3週程度)で行われます。
原発となる癌の種類や病態によって異なりますので、放射線治療医と相談して決定します。

適応となる病態

- 骨転移による疼痛・神経症状

進行がん患者のおよそ70%に骨転移を認めます。骨転移による痛みは常時または断続的で、皮膚の異常感覚やぴりぴりとした痛み(神経障害性疼痛)であることもあり、日常生活動作に大きな影響を及ぼします。鎮痛薬投与でも症状改善が得られにくい際には緩和的放射線治療をご検討ください。
緩和的放射線療法により、およそ60-80%の患者さんにおいて2~3週間後くらいから疼痛緩和効果が得られます。
疼痛が再燃する場合には再照射することで再度除痛効果が期待できます。


- 脊髄圧迫

脊椎転移/病的骨折により脊髄が圧迫され、腰背部痛・感覚運動障害・膀胱直腸障害などの症状をきたします。まれに脊髄内転移や硬膜外転移でも起こることがあります。
症状の進行はさまざまで、数週間かけて徐々に悪化する場合も、数時間で不可逆的な麻痺をおこす場合もあります。
神経学的予後は治療開始前の運動機能および神経学的症状の進行速度に左右されます。
脊髄圧迫による神経症状が疑われる状況では、迅速な診断と治療開始が重要です。


- 脳転移

転移を有するがん患者さんの20~40%に脳転移がみられます。 てんかん発作・局所神経学的症状(四肢の麻痺など)・頭蓋内圧亢進症状(吐き気・嘔吐・頭痛)を伴うことがあります。
従来は脳全体に照射を行う全脳照射が一般的でしたが、最近では長期的な認知機能障害に対する懸念から、周囲の脳組織への線量を抑えながら転移病変のみに線量を集中させる定位放射線治療(SRT)も行っています。


- 気道・消化管の閉塞や出血

咽頭癌や肺癌、食道癌、胃癌などによる呼吸困難・嚥下障害・顔面浮腫・出血などが該当します。
嚥下障害については、放射線治療終了の4週間後くらいから30-50%程度の患者さんで自覚障害の改善が期待されます。
胃癌からの腫瘍出血は、放射線治療終了の2週間後くらいから効果が出現し、8週間後には9割ちかくの方に止血が得られます。


- 皮膚のトラブル

皮膚癌や乳癌による出血・疼痛・悪臭などの症状がみられることがあります。緩和的放射線治療により6割程度の方で腫瘍縮小とそれに伴う諸症状の緩和効果がみられます。

有害事象

放射線治療の副作用は、どの組織にどの程度の線量を照射するかによって決まります。
一般的には照射した範囲の皮膚炎(発赤・かゆみ・ひりひりした痛みなど)や粘膜炎(咽頭・食道などの炎症による痛み・一時的な嚥下障害)などがあげられます。
通常は治療終了後4~6週間以内に改善消失し、長期的な副作用が問題となることはあまりありません。詳しくは放射線治療医にお尋ねください。

術後疼痛管理チームの取組

手術を受けた患者さんの痛みや吐き気などの苦痛を緩和するために、麻酔科医、薬剤師、看護師、臨床工学技士など多職種の専門家から成る術後疼痛管理チームが活動しています。患者さんの個別の状態に応じて、鎮痛薬の適切な使用やその他の疼痛管理戦略が導入されます。質の高い鎮痛の提供と副作用や合併症の予防、早期発見を効率的に行うために、主治医や病棟看護師とも協力し、2023年3月より活動しています。

実績

2023年度術後疼痛管理チーム加算算定件数    925件