骨転移の定位放射線治療

骨転移について

原発がんが進行すると、腫瘍が血管に浸潤し癌細胞が血液の流れに乗ります。全身を巡った末に骨に辿り着いた腫瘍が骨転移であり、骨転移があるということは全身病であることを意味します。全身病に対する標準治療は抗がん剤などの全身治療です。疼痛などの症状があれば、症状を和らげる目的で緩和照射がしばしば行われます(症状緩和治療

骨転移の定位放射線治療

体幹部定位放射線照射(Stereotactic Body Radiotherapy:SBRT)とは、病巣に対し多方向から放射線を集中させる方法です。一般的な照射方法と異なり、大線量を少ない回数で照射します。肺・肝腫瘍でしばしば用いられます。
当院では、2013年からこの技術を骨転移に対しても応用しています。下の画像に示したように、背骨の場合、骨の中の穴(脊柱管)に脊髄という大事な神経(黄色の臓器)が走行しています。脊髄は放射線に弱いため、高線量を投与する定位放射線治療では、脊髄を避けて腫瘍に高線量を投与しています。

骨SBRTCT画像
CT画像
骨SBRTMRI画像
MRI画像
骨SBRT線量分布
線量分布

適応となる患者さん

標準的な治療はあくまで3グレイ×10回などの緩和照射です。
定位放射線治療は原則原発のがんや他の転移が治療によって制御され、1~2か所のみ(場合によっては3か所まで)の骨転移がある患者さんにのみ施行しています。

治療の流れと内容

放射線治療計画を作るために、準備としてCTおよびMRIを撮影します。
1回の定位放射線治療に約30分ほど要します。照射中は特に痛みや熱さを感じることはありません。入院の必要性もありません。
治療に用いる放射線線量は主に以下の通りです、

  • 脊椎:12グレイ×2回(計24グレイ)、20グレイ×1回
  • 脊椎以外:7グレイ×5回(計35グレイ)
説明

治療効果

定位放射線治療では、腫瘍に対して高線量を投与しますので、治療した部位は80∼90%という高い確率で制御できると報告されています。(Gerszten PC et al. SPINE 32(2); 193-199, 2007 など)

副作用

代表的な副作用を列挙します。

1) 照射後すぐに現れる可能性のある副作用

  • 皮膚炎…日焼けのような症状に対して、塗り薬で対応します。
  • 放射線酔い…照射後一時的に吐き気や倦怠感が出ることがあります。
  • フレア現象…照射後一時的に痛みが強くなることがあります。
  • (頸部・胸部の照射)咽頭炎・食道炎…飲み込む時の痛みやつかえ感を認めます。
  • (腹部・骨盤の照射)腸炎…下痢症状を来すことがあります。

2) 照射後数ヶ月~数年して現れる可能性のある副作用

  • 皮膚炎…皮膚が硬くなったり、潰瘍になったりします。
  • 椎体圧迫骨折…体重に耐えられず椎体が潰れます。基本的に痛み止めで対応します(約70%が無痛性です)。
  • (胸部の照射)放射線性肺炎…熱・咳・息苦しさなどが現れます。
  • (腹部・骨盤の照射)腸炎…下痢や出血など。
  • その他:食道炎・食道潰瘍、骨髄抑制、二次発癌など

2023年4月更新 田口 健太郎/伊藤 慶