大腸、肛門の良性・悪性疾患の全般、特に大腸肛門悪性腫瘍の外科治療および化学療法を専門としています。
初発結腸と直腸の悪性腫瘍の手術件数は、2015年343症例で、開腹手術132例、腹腔鏡手術211例で、腹腔鏡手術も積極的に実施しています。
大腸キャンサーボードを中心に、外科、消化器内科、放射線診療科、化学療法科、病理科の専門家が合同で治療方針を検討し、個々の症状にあわせた最適の治療を選択できるような体制を整えており、各科の連携は緊密です。
直腸癌に対する機能温存術を行っています。
直腸癌に対する自律神経温存手術を、リンパ節転移陽性の直腸癌に対して全国に先駆けて導入しました。
自律神経を温存することによって、術後の排尿機能・性機能を保ちます。
下部の(肛門に近い)直腸癌でも、出来る限り肛門括約筋機能を温存し、人工肛門(ストマ)を造設せずにすむ様に努力しています。
家族性腫瘍の診断・治療にも積極的に取り組んでいます。
大腸に関する家族性腫瘍には家族性大腸腺腫症(FAP)や遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)があります。
これらの疾患では1/2の確率で親から子に遺伝することが分かっています。そのため、発症者のご家族の方々に十分な説明と同意を得てから遺伝子診断を行い、大腸癌や他の癌の早期発見・治療に努めています。
家族性大腸腺腫症(FAP)は大腸に多数のポリープが発生する遺伝性疾患で、全大腸癌の約1%の発生率です。
遺伝性非ポリポーシス大腸癌(HNPCC)は消化管ポリポーシスを伴わない遺伝性大腸癌で、全大腸癌の2~3%に発生し、若年齢に多い疾患です。また、膀胱癌・尿管癌・子宮癌・胃癌など、他臓器に癌を合併するのも特徴です。
ご家族、ご親族にこのような癌の患者さんがいらっしゃる場合(過去にいらっしゃった場合)はご相談ください。
骨盤内局所再発に対しては積極的に外科的切除を行っています。
必要によって術中照射も併用し、治療成績の向上に努めています。
切除不能例に対しては、放射線医学総合研究所重粒子センター病院と提携し、積極的に重粒子線治療を施行し、良好な成績を上げています。
大腸癌肝転移に対しては、肝切除及び全身化学療法を積極的に施行しています。
大腸癌は肝転移があっても根治し得る可能性のある疾患です。
切除不能の肝転移でも、分子標的治療薬と全身化学療法の併用により縮小化を図り、改めて切除することによって良好な成績を上げています。
進行・再発大腸癌に対し、FOLFOXやFOLFIRIを中心とする全身化学療法と分子標的治療薬の併用を積極的に行います。
退院後も、大腸専門外来を設け人工肛門(ストマ)の経過観察やさまざまなケアーをしています。
良性疾患は、潰瘍性大腸炎クロ-ン病などの難病を中心に、消化器内科と協力し各種の最新治療を行っています。
当科はアフターケアを重視した医療を目指しています。大腸癌はもとより、再発癌や末期癌の患者様に対しても、患者様個人の意思を尊重し、積極的に受け入れ、入院治療と外来治療および在宅治療を一つの太いパイプでつないだ医療を提供しています。