消化管疾患
救急疾患
救急診療科(東京ER墨東)や救命救急センターと連携して、消化管出血や急性閉塞性化膿性胆管炎など、緊急の内視鏡治療を必要とする患者様の受け入れを積極的に行っています。
新棟の新しいERでは、内視鏡治療が可能なブースを備えており、緊急の内視鏡治療にも対応できるようになっています。
消化管出血
胃潰瘍や十二指腸潰瘍などによる吐血・下血にて救急搬送される症例が最も多く、迅速な対応をすることで良好な治療成績を得ています。2011年から2014年までの間の内視鏡的止血術の成功率は99.4%でした。
(写真左:緊急内視鏡が施行可能なER診療室、写真右:2011ー2014年の来院から内視鏡施行までの時間)
表1) 非静脈瘤性上部消化管出血に対する緊急内視鏡止血術施行件数(要入院)
2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | |
---|---|---|---|---|---|
患者数 | 111 | 112 | 143 | 99 | 113 |
(止血術の例)
【大腸憩室出血に対する新しい治療法:留置スネアを用いた内視鏡的止血術】
Endoscopic detachable snare ligation (EDSL)
大腸憩室出血は、下部消化管出血の原因として最も頻度が高い疾患です。多くは自然に止血し、保存的加療で軽快しますが、3~4割の頻度で再出血を来します。出血源となった責任憩室が同定できた場合、現在はクリップ法による内視鏡的止血術が一般的に行われています。クリップ法は比較的簡便で低コストであるというメリットがありますが、その再出血率が問題となります。近年、Endoscopic band ligation(EBL)法というゴムバンドによる出血憩室の結紮術が普及しつつありますが、当院では新しい治療法として、2015年より留置スネアを用いた内視鏡的止血術を施行しています。
大腸憩室出血の診断で入院なさり、担当医の説明を受けてこの治療法に同意していただいた場合、出血源が同定できれば留置スネア法による止血術を検討いたします。
この治療法は当院に設置されている「倫理・個人情報保護委員会」にて、倫理的・科学的妥当性について審査され、その実施が承認されています。また、当院では大腸憩室出血に対する内視鏡的止血術を積極的に施行しており、後述のとおり各学会や論文でもその成績を発表しています。
表2) 大腸憩室出血に対する止血術施行数
- ()内は留置スネア法の件数
2013年 2014年 2015年 2016年 2017年 2018年 2019年 入院患者数 72 84 77 69 73 84 101 内視鏡的止血術施行数 16 34 39(12) 31(22) 28(20) 38(27) 49(36)
(憩室画像の例)
その他、食道胃静脈瘤破裂、急性化膿性胆管炎、結腸憩室炎、急性膵炎、急性肝炎など、多くの患者様を受け入れています。
悪性腫瘍(がん)
がん診療についても重点的に取り組んでおり、2017年4月より、厚生労働省のがん診療連携拠点病院に指定されました。当院のがん治療の特徴は、心臓病、脳卒中、腎臓病(人工透析)などの持病がある方や、救急で搬送されたことを契機にがんが見つかった方など、状態の悪い患者様が多いところです。そのような患者様に対しても、循環器科、神経内科、脳神経外科、腎臓内科などと連携して、適切な治療を提供できるように努めています。
内視鏡治療
早期の胃癌、食道癌、大腸癌に対しては、体への侵襲が少ない内視鏡治療(内視鏡的粘膜下層剥離術:ESD、内視鏡的粘膜切除術:EMR)を積極的に行っています。消化器内視鏡治療室では最新の高周波装置(ERBE:VI03)を設置しており、出血の少ない安全な治療を行うことができます。内視鏡治療を行うことで、従来の外科手術と比較して短い入院期間での治療が可能となっており、治療後の体の負担を軽減することができます。
ESDの標準的な入院期間は、胃癌・食道癌の場合7日、大腸癌の場合は5日です。
表2) 内視鏡治療(ESD)件数
2014年 | 2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | 2019年 | |
---|---|---|---|---|---|---|
胃癌 | 117 | 85 | 101 | 101 | 126 | 139 |
食道癌 | 12 | 16 | 16 | 11 | 23 | 28 |
大腸癌 | 24 | 32 | 36 | 44 | 57 | 83 |
(ESD画像の例)
実技指導)
第7回レーザー内視鏡学術セミナー(2018.7)講師 古本 洋平
第7.8回つくば鏡視下手技トレーニングセミナー(2019.3、2019.11)ESD講師 古本 洋平
炎症性腸疾患
潰瘍性大腸炎、クローン病などの炎症性腸疾患に対しては、内服治療を中心に病状のコントロールに努めており、2022年12月現在、約250名の患者様が通院されています。病状が悪化した場合には、ステロイド治療、免疫抑制療法、白血球除去療法(LCAP/GCAP)、生物学的製剤/JAC阻害薬(インフリキシマブ(レミケード®等)、アダリムマブ(ヒュミラ®等)、ゴリムマブ(シンポニー®)、ウステキヌマブ(ステラーラ®)、ベドリズマブ(エンタイビオ®)、カロテグラストメチル(カログラ®)、トファシチニブ(ゼルヤンツ®)、フィルゴチニブ(ジセレカ®)、ウパダシチニブ(リンヴォック®))などの投与を行っています。
近年、多くの新薬が開発・発売されるようになってきており、新薬の治験にも参加しています。治験への参加を希望される場合には、担当医へお伝えください。
関連診療科・部門
2023年1月 6日 最終更新