病理診断科

病理診断科

 それぞれの病気には、特徴的な組織や細胞の変化があることが分かっています。病理診断科では、胃や腸、肺や肝臓、脳や心臓などの臓器から、手術あるいは生検によって採取された組織や細胞の病理検体を肉眼的に調べて、病理標本(組織標本や細胞標本など)を作製し、顕微鏡を用いて観察することで、組織・細胞の変化をもとに病気の診断を行っています。これを「病理診断」と言います。臨床診断と併せて総合的に判断することで最終診断がなされますが、たとえば腫瘍が良性か悪性かは、通常、病理診断なしには確定できません。また、病理検体によって行われる免疫組織化学的な検索は、分子標的治療薬の適応決定やホルモン治療の効果予測など、治療方針の決定にかかせません。

病理診断科の紹介写真

診療内容

 病理診断には、大きく分けて、組織診断と細胞診断、術中迅速診断と剖検診断(病理解剖)の四つがあります。また、がん遺伝子パネル検査にも対応しています。

組織診断

 病巣部の組織を、生検や手術によって採取し、組織標本を作製して顕微鏡観察することで病気の診断をするのが「組織診断」です。内視鏡検査で採取された胃や腸の粘膜生検などの小さな検体は、そのまま標本作製しますが、手術で切除された大きな組織検体は、正しい病理診断をするために、十分な肉眼観察によって病変の質と広がりを調べた上で、適切な部位から組織標本を作製する必要があります。この作業を「切り出し」と言い、写真撮影をし、どの部位から標本作製したかなどの記録を残しながら行います。

 通常の組織診断においては、病理検体として提出された組織をホルマリン固定した後、パラフィンに包埋した状態の組織ブロックを作製します。この組織ブロックから、ミクロトームという特別な装置を使用して、数ミクロンの薄い切片を作り、スライドガラスに張り付けて染色を施し、組織標本を作製します。このため、組織標本の作製には、最低でも数日を要し、骨や多量の脂肪を含む組織などでは、場合によって数週間かかることがあります。

 「組織標本」(および後述の「細胞標本」)とパラフィンに包埋された「組織ブロック」を併せて「病理標本」と呼びます。これらの病理標本は、病院の責任の下に保管され、病気が再発した際などに、数年以上前の過去にまで遡って病理診断を再検討することが可能となっています。また、保管されている組織ブロックから新たな切片(染色をする前の組織標本)を作製し、分子標的治療薬の適応決定やホルモン治療の効果予測のための免疫組織化学的検索を行っています。

自動染色装置

自動固定包埋装置

がん遺伝子パネル検査

 遺伝子診療科と密に連携し、がん遺伝子パネル検査に関わっています。適正な結果を得るために、スライドガラス作製には新しい替刃を使い、道具にも細心の注意を払い、コンタミネーション防止に努めています。
 患者さん一人ひとりにふさわしい治療を選択するための検査に携わっています。

細胞診断

 喀痰や尿、膣分泌物などの中に浮遊している細胞、あるいは乳房の腫瘤などに細い針を刺して吸引し採取した細胞を、スライドガラスに張り付けて細胞標本とし、顕微鏡観察して病気の診断するのが「細胞診断」です。おもに、肺や膀胱、子宮頚部、乳房などの病巣部に、がん細胞があるのか否かを判定するために施行されます。

 細胞標本は、組織標本と異なり、採取された細胞を直接、スライドガラスに張り付けて染色し標本を作製するため、数時間から1日程度で標本作製できます。

術中迅速診断

 病巣が体内の深部にあるなどの理由で、手術の前に十分な診断ができなかった場合などに、手術中に施行する病理診断で、手術の方針を決定する一助とするために行います。手術中に採取した組織や細胞の検体から、30分程度で病理標本を作製し、がんの診断を確定したり、切除断端が陰性であることを確認したりします。これを「術中迅速診断」と呼びます。

 術中迅速診断用の組織標本は、通常の組織標本と異なり、組織を凍結して標本を作製しているため、病理診断の精度がやや劣ります。このため、術後に凍結した組織を解凍して、パラフィンに包埋した通常の組織ブロックと組織標本を作製し直し、診断が適切であったかどうかを確認しています。

病理解剖

 病気で亡くなられた患者さんのご遺体を、ご遺族の承諾を得て解剖させていただくのが病理解剖です。生前の診断や治療が適切であったかどうか、最終的な死因は何だったのかなどを調べます。全身の諸臓器を肉眼的に観察して写真撮影し、必要な部位から組織標本を作製して顕微鏡で観察し、剖検診断として報告します。

 解剖(剖検)は、通常、2時間程度で終了しますが、脳や脊髄の検索がある場合などは、さらに時間を要すことがあります。解剖の結果わかったおもな肉眼所見は死亡診断書に記載され、大まかな肉眼所見報告書が剖検後まもなく作成されます。その後、すべての臓器をホルマリン固定し、詳細な肉眼観察、追加写真撮影をした上で、標本を作製、顕微鏡観察しますが、これらの作業には、通常、数カ月を要します。肉眼所見や顕微鏡所見を病理所見としてまとめて剖検診断とし、これを臨床経過と照らし合わせながら治療前後の継時的な変化について考察を加えて、最終的な病理解剖報告書を作製します。

主な医療設備

  • 自動免疫染色装置 ヒストステイナー 36A
  • 病理・細胞検査業務 支援システム Path Window

地域とのつながり

 公開CPCを年に数回行い、病理解剖結果を供覧することで、生前の診断や治療が適切であったかどうかを、地域の紹介元医療施設の先生方と討論する機会を設けています。

 また、患者さんが転院した際、転院前の病院で施行した病理検査の組織標本や細胞標本を借用したり、あるいは転院先の病院に当院の標本を貸し出ししたりして、相互にその標本を参照することによって、新たな検査の負担を軽減するよう配慮しています。

関連診療科・部門

2024年11月28日 最終更新