ロボット支援腹腔鏡下 膀胱全摘除術+尿路変向術(回腸新膀胱、回腸導管、尿管皮膚瘻)
がんが筋層まで達する筋層浸潤性膀胱がんやBCG膀胱内注入療法後に再発した筋層非浸潤がんでは膀胱全摘除術が標準治療になります。膀胱全摘では、膀胱の代わりとなる新たな尿の通り道を作る必要があります(尿路変向)。尿路変向の方法は、病状と患者さんのご希望に基づき決めています。回腸新膀胱(腸の一部を切り取り膀胱の代わりとなる袋を作ります)では、術後も尿道からの排尿が可能です。回腸導管や尿管皮膚瘻では、腹部に尿の出口(ストマ)を作成し、その上に貼り付けた集尿袋に尿を貯めます。
当科ではこの手術を、安全な先端型・低侵襲手術であるロボサージャン・ガスレス・シングルポート手術(3D-HMDシステムによるミニマム創内視鏡下手術)で行ってきましたが、2024年からはダ・ヴィンチ手術で実施しています。ダ・ヴィンチ手術では全手術操作を体腔内で行っており、出血量の低減とさらなる術後早期回復が得られています。
注目情報治療成績(調査対象:2024年4月〜7月にダ・ヴィンチ膀胱全摘除を施行した7件)周術期輸血率、術後合併症 (Clavien grade 3以上) ともに0%.
注目情報治療成績(調査対象:2013年11月〜2019年10月にロボサージャン・ガスレス・シングルポート・膀胱全摘除を施行した36件)周術期輸血率 8%(男性症例では4%). 術後合併症 (Clavien grade 3以上) 5%.
膀胱がんの診断
血尿がある方や、エコーやCTなどの画像検査で膀胱がんが疑われる方には、膀胱鏡検査(当科ではほとんどの場合、比較的痛みの少ないファイバースコープを用いております)を行い診断します。膀胱がんは進行度によって治療方針が大きく異なります。がんが膀胱筋層まで達する進行がんでは膀胱全摘除術+尿路変向術(回腸新膀胱、回腸導管、尿管皮膚瘻)が標準治療になります。したがって膀胱がんでは正確な深達度を評価することが大変重要になりますので、膀胱がんと診断された、もしくは強く疑われる方には、原則として術前にMRI検査を行っています。
経尿道的膀胱腫瘍切除術 TURBT(光力学診断 PDD 補助下)
主に腰椎麻酔で行い、尿道から内視鏡を挿入し、腫瘍を切除します。適応症例には光力学診断 (PDD) 補助下に TURBT を行います。ほとんどの方で、手術翌日の午前中から通常通りに歩行や食事ができますが、血尿が止まっていることが確認されるまで(通常は2-3日程度ですが手術の内容によっては1週間程度になることもあります)尿道カテーテルが留置されます。カテーテル抜去後に退院となり、入院期間の目安は1週間程度です。
膀胱内注入療法(BCG、抗がん剤など)
再発のリスクが高い場合や、上皮内がんでは、膀胱内注入療法を行います。導入療法および維持療法ともに、外来で治療を行います。
化学療法(GC療法、G-CBDCA療法、パドセブ®)
転移がある、あるいは強く疑われる場合や、手術の病理結果で追加治療が望ましいと判断された場合は、原則的にゲムシタビン+シスプラチンによる抗がん剤治療を行います。4週間で1サイクルの治療となりますが、入院と外来を組み合わせて行います。その他、ご病状に合わせて他のレジメンを選択することもあります。
免疫療法(キイトルーダ®、バベンチオ®、オプジーボ®)
化学療法後の転移のある膀胱がんに対して有効な治療手段で、効果の持続を期待できる治療法です。