ロボサージャン・ガスレス・シングルポート手術は、CO2ガスを使わず、単一の小さな孔(シングルポート)から、ロボットの様に機能を高めた術者(ロボサージャン)が行なう手術です。従来のロボット手術の利点を備えつつ、その課題を克服するポテンシャルを持つ手術と考えています。
具体的には、視覚として3Dハイビジョン内視鏡と多機能のヘッドマウントディスプレイを眼鏡のように装着し、手には高性能な手術器具を持ちます。ヘッドマウントディスプレイにより、術者は眼前に拡がる体内の鮮明な立体拡大映像を見ながら手術を行い、同時に視線をやや落とすことで手術野全体を肉眼で俯瞰視することもできます(俯瞰視は一瞬で全体の状況を把握できるので、手術の安全性の確保に重要な視覚と考えています)。
さらに、内視鏡で見えない深部を超音波などを使ってヘッドマウントディスプレイに映し出して手術を誘導することもできます。つまり、手術参加者全員が6つの視覚(立体視・拡大視・俯瞰視・誘導視・全員視・多画面視)を共有して手術を行なうことができます。
ロボサージャン・ガスレス・シングルポート手術は、東京医科歯科大学腎泌尿器外科学教室で開発され、当科スタッフは同大学で本手術の開発に携わって参りました。現在も同大学と共同して手術の洗練を進めています。
本手術は、いわゆるミニマム創内視鏡下手術(=ガスレス・シングルポート手術)の最先端型で、国際的にもヨーロッパ泌尿器科学会や米国泌尿器科学会を通して紹介されています。本手術の概念を下図に示します。
ミニマム創内視鏡下手術(ガスレス・シングルポート手術)は、摘出腫瘍や臓器を取り出すために必要な単一の小さな孔(ミニマム創=シングルポート)から、CO2ガスを使用せず(ガスレス)、腹膜非損傷で行う手術です。泌尿器がん手術における「腹膜非損傷」は、腹膜損傷に起因する腸閉塞などの合併症回避や術後消化管機能の早期回復に繫がる他、がんの腹腔内播種の回避(根治性)という点でも重要と考えています。