腎泌尿器外科 - 前立腺がん:診断とその他の治療

前立腺がんの診断

血中のPSAという腫瘍マーカーが4.0 ng/ml以上の方や、それ以下であっても比較的若く家族歴(父親や兄弟に前立腺がんの方がいる)があるような方、あるいはMRIや直腸診で前立腺がんが疑われる方には、下記の前立腺生検を受けていただき、診断をつけることをお勧めしています。

BioJetシステムを用いたMRI/超音波 3D融合画像ガイド下経会陰式前立腺標的針生検~正確なリスク評価に基づき適正治療の選択を

前立腺針生検は前立腺がんの診断に必須の検査で、原則的に1泊2日の入院で行っています。不要な生検を回避し、正確な前立腺がんのリスク評価を行う目的で、PSA高値あるいは直腸診異常所見のある方全員に生検前MRIの撮影をお奨めしています。
前立腺がんの最終診断は病理組織学的になされるため、現在のところ組織の一部を採取しない限り確定診断は行えません。前立腺MRIの進歩に伴い、前立腺針生検前にがんの局在(がんがある可能性が高そうな部位)がほぼ同定できるようになりました。正確な診断には、標的部位に対して正確に針を刺して組織を採取することが肝要です。これまでは、前立腺MRIで描出されたがんの局在部位に対して正確かつ確実に針生検を行うことが困難でしたが、BioJetシステムを用いてMRI画像を生検時の超音波画像に融合(MRI/超音波 3D融合)することで、より確実な標的生検が可能となりました。BioJetシステムを用いた標的生検は主にサドルブロック法による麻酔で無痛に実施しておりますが、局所麻酔や全身麻酔も可能です。

参考文献

Superior detection of significant prostate cancer by transperineal prostate biopsy using MRI-transrectal ultrasound fusion image guidance over cognitive registration. Ito M, Yonese I, Toide M, Ikuta S, Kobayashi S, Koga F. Int J Clin Oncol 28:1545-53, 2023.

放射線外照射治療(IMRT)

前立腺全摘除術と同様に、前立腺がんに対する中心的な治療法の一つです。放射線治療部と連携して治療にあたっています。病状により、ホルモン療法との併用療法を行います。また前立腺全摘除術後の病理結果や経過によっては、補助療法もしくは救済療法として放射線療法を追加することもあります。入院は必要ありませんが、2か月弱程度の通院が必要です。

積極的監視療法(アクティブ・サーベイランス)/待機療法

前立腺がんの診断がついても上述の治療を行わず、腫瘍マーカーやMRI画像などで病状の変化を定期的に観察していく方法です。積極的監視療法ではがんの悪性度が低いことが前提ですが、待機療法では患者さんのご年齢・お体の状態・ご希望などを考慮の上、総合的に判断します。

ホルモン療法

前立腺がんに特徴的な全身療法です。男性ホルモンを抑える注射、もしくは精巣を摘出する手術が基本となり、病状に合わせて内服薬(抗男性ホルモン剤、女性ホルモン剤、副腎ステロイド、副腎ホルモン合成阻害剤など)を併用します。転移のある前立腺がんがホルモン療法の対象となります。また、転移のない前立腺がんであっても、前立腺全摘除や放射線治療と併せて集学的治療の一環として行うこともあります。

化学療法

一次ホルモン療法抵抗性となった去勢抵抗性前立腺がんに対し、抗がん剤(ドセタキセル、カバジタキセル)を点滴する治療を行います。原則としてドセタキセルとカバジタキセルの初回は入院で、2回目以降は外来で投与します。

ラジウム-223(ゾーフィゴ®)

前立腺がんの骨転移に対する、放射性医薬品の注射薬です。去勢抵抗性前立腺がんで骨転移があり、内臓転移がない方に治療の適応があります。