同種移植の種類

造血幹細胞は通常は骨髄に存在し、造血機能を維持しています。
しかしながら、特殊な状況下では、末梢血幹細胞として全身の血液中に流れ出すことがあります。
また、赤ちゃんとお母さんを結ぶへその緒(臍帯)と胎盤の中に含まれる血液にも、造血幹細胞が存在しています。
造血幹細胞移植は、移植に用いる細胞の種類によって、骨髄移植、末梢血幹細胞移植、臍帯血移植の3種類に分類されます。

骨髄末梢血臍帯血
ドナーの肉体的精神的負担大きい大きくない?ほとんどない
採取できる造血幹細胞確実ほぼ確実患者の体重30Kgまで
保存不要不要必要
GVHD標準慢性GVHD↑GVHD少ない
造血回復標準早い遅い
拒絶少ない少ない多い
成績確立されている骨髄に同じ?不明

1)骨髄移植

骨髄液を採取して移植することで、造血幹細胞を移植する方法です。
ドナーさんに全身麻酔をかけ、腰の骨(腸骨)から骨髄液(成人患者では一般的に800~1,000ml位)を採取します。
採取した骨髄液は、点滴や輸血と同様に、患者さんの静脈から輸注されます。
このようにして移植された骨髄液に含まれる造血幹細胞が骨髄にたどり着いて正常な造血機能を回復する(これを生着といいます)までには、移植後およそ3~4週間かかります。

2)末梢血幹細胞移植

末梢血幹細胞採取は、ドナーさんにG-CSFという薬剤を投与して、末梢血中に流出されてきた造血幹細胞を、血液成分採取装置を用いて 採取するものです。
採取した細胞は直ちに輸注することもできますし、凍結して一時保存しておくことも可能です。
末梢血幹細胞は、骨髄移植と同様に患者さんの静脈から輸注されます。
移植された末梢血幹細胞が骨髄に生着して正常な造血機能を回復するまでには、約2~3週間を要します。
骨髄移植に比べ、造血機能の回復が1週間程度早いことが知られています。
移植後の経過は骨髄移植の場合とあまり変わりませんが、末梢血幹細胞移植の場合、骨髄移植よりも慢性の移植片対宿主病(GVHD、後述)の発症率が高くなる という報告があります。

3)臍帯血移植

母親と胎児を結ぶ臍帯と胎盤の中に含まれる血液(臍帯血)に、造血幹細胞が存在していることが知られています。
この臍帯血由来の造血幹細胞を移植に用いるのが臍帯血移植です。
臍帯血移植では、この幹細胞がすでに凍結保存されているため、必要に応じてすぐに使用することができます。
臍帯血に含まれる造血幹細胞は、骨髄や末梢血に存在する造血幹細胞に比べ、より少ない細胞数で造血機能を回復させることができます。
また、臍帯血移植ではGVHDが起こりにくいという特徴があります。
しかし、臍帯血中から採取できる幹細胞数は少なく、移植に必要な量の幹細胞を得られないこともあります。
凍結されている臍帯血は、融かした後に直ちに患者さんの静脈から輸注されます。
移植された臍帯血の幹細胞が骨髄に生着して正常な造血機能を回復するまでには、約3~4週間を要します。