前処理とは

造血幹細胞(骨髄・末梢血幹細胞・臍帯血)をただ単に患者さんに輸注しても、拒絶され移植はうまくいきません。
ドナーさんからいただいた造血幹細胞をうまく受け入れるためには、患者さんにはあらかじめ骨髄を空にするような治療が必要となります。
それを移植前処置と呼びます。移植前処置としては、移植の前に1週間くらいかけて、大量の抗がん剤投与や全身への放射線照射などが行われます。
これにより、病気の骨髄の細胞はもとより、正常の造血細胞も破壊されます。
抗がん剤投与の副作用としては嘔気・嘔吐・下痢などがあり、通常10日間ほど続きます。
脱毛も見られます。
また、投与される薬によっては、心臓、肺、肝臓、脳、腎臓などへの障害がみられます。
とくに、シクロホスファミドという抗がん剤を用いると膀胱炎がおきやすく、その予防のため投薬中は大量の点滴を行います。
尿道から膀胱にチューブを挿入し、膀胱を洗浄することもあります。放射線の照射は、地下3階の放射線治療部で行います。
移動時間を含め1回約30分位で日に2回、計2~6回施行します。
放射線照射の副作用は嘔気、嘔吐、脱毛、脱力感、皮膚の発赤、唾液腺炎、咽頭炎などです。
これらも治療後1週間ほど続きます。
前処置後は血液中の白血球が極端に減少するため、抵抗力を失って感染症が起こりやすくなります。
このため患者さんは、移植前処置の開始前に塵や細菌の少ない清浄な空気の流れる移植病室(個室)に移動していただきます。

通常の骨髄破壊的前処置に対し、骨髄非破壊的前処置を用いた移植(ミニ移植)があります。
これは前処置を通常の場合よりも弱くした方法で、移植後早期の合併症が軽くすむ反面、再発の危険性やGVHD等のコントロールが難しくなるという問題点があります。