長期合併症

移植後4か月目以降について

退院

退院は、移植後60~90日位を一応の目安とします。 このころになると患者さんの免疫機能も徐々に回復し、いろいろな合併症、特に感染症にかかり難くなるからです。 しかしながら、まだ完全ではありませんので頻繁に外来での診察や血液検査を必要とします。 移植後半年頃から徐々に通院間隔をのばしていく予定です。社会復帰の時期もほぼこの頃とお考え下さい。

副作用や危険性

このころまでには、様々な問題を乗り越えてこられたわけですが、移植後4ヶ月経っても、問題が全く無くなるというわけではありません。 造血幹細胞移植は非常に強力な治療法ですが、残念ながら病気が再発する場合があります。 再発は移植後6ヵ月~1年くらいがもっとも多く、時間がたてばたつほど再発の危険性は少なくなります。 また、唾が出ない、涙が出ない等の症状や、下痢、肝機能障害、慢性の肺疾患などが出現する場合もあります。 これらは慢性GVHD(後述)と言われ、軽い症状の場合には殆ど問題とはなりませんが、場合によってはステロイドなどの 薬剤を長期にわたって服用していただかなくてはなりません。 生活の質を落とすのみでなく命にかかわることもあります。 ウイルス感染症の危険もあり、特に帯状疱疹や、出血性膀胱炎にかかりやすくなります。

慢性GVHD

基本的にはすべての臓器に起こります。 特に、重症の急性GVHDをおこした場合や、急性GVHDをおこしやすいドナーさんからの移植の場合は慢性GVHDを発症する可能性が高くなります。 急性GVHDに引き続いて発症するもの、急性GVHDが一旦終息した後から発症するもの、急性GVHDの明らかな症状がなく慢性GVHDを発症するものなど様々です。 特に、皮膚、肝臓、唾液腺・涙腺などの外分泌腺、肺、筋肉、関節などにみられます。 皮膚は皮疹が出たり、乾燥したり、時に皮疹が全身に拡大します。 また、皮膚が硬くなることもあります。肝臓には黄疸や慢性肝炎のような症状が出現します。 また、唾液腺分泌障害により唾液が出ず、口腔乾燥や嚥下障害を引き起こします。 刺激の強い食べ物の摂取が特に困難となります。涙腺分泌障害で眼球が乾燥したり、角膜が障害されたりします。 女性では膣粘膜の炎症・乾燥・癒着をおこすこともあります。 また、筋肉や筋肉と骨をつなぐ腱、関節をサポートする靭帯が硬くなり、皮膚の硬化もあり関節や筋肉が動かしにくくなったり、関節が痛くなったり して日常生活が障害されることもあります。 また、慢性のGVHDにより肺が硬くなりうまくふくらまなくなり、呼吸困難となることもあります。

その他

女性の場合、閉経とそれに伴う骨粗しょう症を合併することがあるため、女性ホルモンによる補充療法が必要となることがあります。
不妊は男女とも、一部の場合を除き、避けられない問題です。
骨粗しょう症は長期に渡るステロイド治療によっても起こり易く、大腿骨頭壊死といった骨や関節の問題を引き起こす事もあります。
移植後に腎・肺・心臓等の臓器障害や白内障が発生する事もあります。
また、糖尿病や高脂血症等にも注意が必要です。さらに、二次発がんの危険性も高まります。