診療内容
1.チーム医療
子どもたちの未来を明るく照らすためには、その場限りの手術結果ではなく、長期的な視野で、様々な観点から治療結果を評価する必要があります。患者さん中心の医療を実践するため、我々は特に専門性を要する下記のような疾患に対してチームで診療を行っています。
口唇口蓋裂チーム
口唇口蓋裂は日本人の500~600人に1人出生するといわれている疾患です。口唇口蓋裂は妊娠中の器官形成期に顔面の癒合がうまくいかなかったために起きますが、その原因として単独の要因が特定されることはほとんどなく、遺伝因子と環境因子が複雑に関係しあって、ある一定の基準を超えたときに発症するとされています。
症状は、裂が口唇のごく一部に見られるものから鼻腔底~歯茎~口蓋までつながっているものまで様々で、必要となる手術の内容も異なります。また、患者さんの成長とともに、顔貌・言語・咬合・社会生活、と注意すべきことがらも変化していくため、包括的な視野から継続的な診療を行っていくことが重要です。
形成外科では、口唇口蓋裂の診療に際して、小児歯科、矯正歯科、耳鼻いんこう科、リハビリテーション科(言語聴覚士を含む)、心理福祉科、看護部、栄養科からなるチームで治療を行っています。一貫したプロトコールの下で関連各科が診療を継続することで、患者さんの抱える問題を多角的・経時的に捉え、本人のもてる可能性を最大限に引き出し、社会生活を支援することを目指しています。医学的・社会的に治療の困難な患者さんについては月1回開催されるチームカンファレンスにおいて、必要に応じて他の関連科のスタッフも交えながら討議され、包括的な視点から治療方針を決定しています。
口唇口蓋裂が主な対象疾患ですが、第1第2鰓弓症候群やその他の顔面変形に関しても症状に応じて本チームで診療にあたっています。
頭蓋顔面外科 (Craniofacial Surgery) チーム
頭蓋骨縫合早期癒合症に代表される頭蓋顔面外科の診療に際しては、脳神経外科と共同で診療にあたっています。
赤ちゃんの頭には、頭蓋骨の縫合(継ぎ目)と呼ばれるものが存在し、生後しばらくの期間の脳の急速な成長に合わせて頭蓋骨を急速に拡大させていくことに関与しています。頭蓋骨縫合早期癒合症とは、この縫合が予定より早く閉じてしまう疾患のことをいい、脳の成長への悪影響が危惧されるのみならず、癒合した縫合に特徴的な頭蓋顔面骨の変形が起こります。したがって、脳の成長に必要なスペースを確保する目的と、頭蓋骨の形態を整容的に整え、二次性に起きる頭蓋・顔面の変形を予防するという目的の、二つの観点から治療を行います。
頭蓋骨縫合早期癒合症は、体の他の部分に特定の症状(合指症や口蓋裂など)を伴う「症候群性」と呼ばれる状態と、頭蓋縫合の癒合以外に異常のない非症候群性と呼ばれる状態に大別されます。両者では症状に差があり、治療時期や方法に関しても異なった配慮が必要です。頭蓋骨縫合早期癒合症は複雑な診療を必要とすることも多く、当院では形成外科・脳神経外科以外にも、眼科・耳鼻科・矯正歯科など関連各科と連携をとりながら診療を行っています。脳の機能予後の改善と頭蓋顔面の形態改善の両者を満たすことのできる治療、長期的に安定した結果の得られる治療を目指しています。
頭蓋縫合早期癒合症の治療には、大きく分けて一期的頭蓋形成と骨延長法の二つがありますが、カンファレンスで患者さん一人ひとりに合わせて最適な術式を検討し、治療にあたっています。頭蓋縫合早期癒合症のほかに、頭蓋骨の欠損・変形なども治療対象疾患となります。
手足の先天異常チーム
手足の先天異常には、多指症や合指症といった比較的よく見られる先天形態異常以外にも、裂手・裂足や絞扼輪症候群といった複雑な疾患が含まれます。当院では、手足の機能を最大限に発揮しつつ、整容的にも満足のいく治療結果が得られるよう、形成外科と整形外科のチームで診療にあたっています。
その他の疾患
また、当科では二分脊椎・髄膜瘤の手術における手術支援、WOC(創傷・ストーマ・排泄)外来における難治性創傷の診療、血管腫に対するレーザー治療、硬化療法や各種薬物療法などでも関連各科と連携を取りながら診療にあたっています。
2.日帰り全身麻酔手術
当院では、患者さんとそのご家族に対して、安全・安心な手術だけでなく、心理社会的にも負担の少ない医療を提供するために、日帰り全身麻酔手術にも積極的に取り組んでいます。 日帰り全身麻酔は皮様嚢腫(Dermoid Cyst)、粉瘤、石灰化上皮腫、脂腺母斑、色素性母斑といった皮膚良性腫瘍や、副耳・先天性耳瘻孔などの小規模な先天形態異常を対象としております。全身的な疾患がある場合には日帰りの対象とならない場合がありますので、詳しくは担当医にお尋ねください。
3.外傷への対応
形成外科では、鼻骨骨折や眼窩底骨折といった顔面骨の骨折の治療にも力を入れています。特に小児の眼窩骨折は、大人とは異なる骨折パターンをとることがあり、緊急での治療が望ましい場合があります。当院では予約患者さん以外はERでの診察となるのが原則ですが、ERの医師と緊密に連携を取り、適切な診療が提供できるように努めています。