診療内容・特色
救命・集中治療科は20床を有し、6床が特定集中治療室の指定を受けています。重症患者に関しては東京消防庁からの3次救命対応ホットラインを通じて年間1500件程の重症患者を直接受け入れております。ホットラインの応需率は92%を超える数値を誇り、「断らない救命」をモットーに運営しております。日本救急医学会専門医、指導医及び日本集中治療医学会専門医のなどの保持、及び資格習得を目指すスタッフで構成されています。入室患者は救命救急科入院が80%程度でその他、循環器内科、脳神経外科での入院管理が多い状況です。
また、周産期センターも併設しているため、母体救命にも積極的に取り組んでおり西東京における唯一の母体救命対応施設として救命救急科・産婦人科・新生児科・脳神経外科・麻酔科などと協力体制を取り、たらい回しを防ぐべく最後の砦の役割を果たしています。
救命救急センターが満床の場合には重症ユニットであるICU(6床)、HCU(8床)などを使用するケースもあります。
スピード感のある対応
循環器内科との連携
通常の心筋梗塞や心不全患者の初療に加えて来院時心肺停止患者や重度ショックの際には体外循環装置(PCPS)を可及的速やかに導入して早期PCIに繋ぐことを目標としています。急性冠症候群(ACS)だけでなく肺塞栓症(PE)へのPCPS早期導入での救命症例は増加しています。
脳神経外科との連携
重症頭部外傷や脳血管障害なども時間との勝負でありスピード感を重視した初療を心掛けて速やかに脳神経外科にバトンタッチ可能な体制を構築しています。頭部外傷では速やかな手術室への入室を、くも膜下出血では速やかなAG室への入室を、また当院の脳神経外科は脳梗塞に対する東京・関東屈指の再灌流治療施行施設でありそれに相応しい初療を意識しております。
産婦人科との連携
当センターは総合周産期母子医療センター に認定されており、救命救急センターでは産婦人科との連携において母体救命にも軸足を置いています。スーパー母体対応では迅速な輸血確保体制を整備して、関係各科との連携も図り、西東京の砦の役割を果たしています。また、日本母体救命システム普及協議会(J-CIMELS)での普及活動においても救命科の清水部長、金子医師、鈴木(茂)医師及び産婦人科の馬場医師、本多医師、曽我医師、麻酔科の田辺医師などは日本国内でも中心的役割の一角を担っております。救急に強い産婦人科医また母体救命に強い救急医の育成にも努めています。また、死戦期帝王切開(PMCD)及び、母体院内急変時のPCPS導入へのシミュレーションも行ない、多職種連携を強く意識した体制作りを整備しています。
- 日本母体救命システム普及協議会(J-CIMELS)(外部リンク)
救命救急科入院患者
- 広範囲熱傷、多発外傷、敗血症性ショック、重症呼吸不全、意識障害、心肺停止などが多く、救命救急センターへ入室後は主治医チームとしてじっくりと腰を落ち着けての集中治療管理の施行になります。
CHDFやrespiratory ECMOなども積極的に導入しての集学的医療をおこなっています。また、院内急変の重症患者は救命救急科が別ユニットのICUで管理を行います。
必要があれば適宜院内の各科と連携をとって専門性の高いコンサルトやアドバイスを受ける体制となっています。 ERとの連携
当院は一次、二次患者を扱う「東京ER ・多摩」と三次の重症患者を扱う「救命・集中治療科」の両者が救急部門として密接な協力関係を構築しながら運営されています。ERに搬送された患者で結果的に重症度が高い場合には救命・集中治療科へ入室となります。救命対応での搬送患者に加えて年間600名程がER経由で救命・集中治療科に入室しています。緊急度も非常に重要視しており、 ERにunder triageの患者が搬送されれば速やかに救命救急センターに移して救命科医師が対応し、逆にホットラインで受け入れた患者が明らかにover triageで救命・集中治療科の適応外との判断が生じればER医に今後の対応を依頼する、という体制になっています。災害医療
災害救護
2011年の東日本大震災、2013年の伊豆大島土砂災害、2015年の茨城水害など様々な災害が近年発生しています。災害医療は組織での活動が重要で、被災された傷病者のために当院からもDMATや医療救護班が現地に入り医療救護をおこないました。
東京DMAT
東京DMATは近隣で起こる大事故などの局所災害に出動しています。有事の際にはいつでも現場に駆け付け、東京消防庁とともに現場医療救護活動を展開可能な体制を整備しています。
地域災害中核拠点病院
当院は多摩地域の唯一の都立病院でもあり、当院が属する二次保健医療圏の中で地域災害中核拠点病院として各災害拠点病院をまとめる立場にあります。また、行政と医療を結びつける役割として災害医療コーディネーターが近年着目され、二次保健医療圏コーディネーターとして救命科医長の森川医師がその任務を遂行しています。東京都や北多摩南部医療圏内の各市の災害担当者及び災害拠点病院などの医療機関と連携して地域の中で災害が発生した際の対応に関する体制を整備しています。
院内のoff the job training
救命講習会、ICLS、JMECCなど
院内外の有資格者の協力を得て各トレーニングコースを開催しています。
災害訓練
1回/年の大規模な院内全体での災害訓練を行ない、それ以外でも適宜参集しての机上訓練やエマルゴなどを実施しています。日本DMAT、東京DMATの訓練にも積極的に参加しています。
救命科クルズス
毎朝8時00分より、救命・集中治療科のスタッフが若手救急医やレジデントに対して救急、集中治療に関する講義をおこなっています。A,B,Cに関する基本的な解説やTopicsに関する話題など幅広い領域の講義を展開中です。
ECMOシミュレーション
救命救急科の管理の軸足の一つに重症呼吸不全へのVV-ECMOや院外心肺停止へのE-CPRとしてのVA-ECMO及び重症敗血症性ショックへのVA-ECMO、VAV-ECMOなどがあります。
CEスタッフの協力も得ながらECMOに関する勉強会、症例検討会、人工肺交換のシミュレーション、危機的状況へのシミュレーションなどを日常的に開催しています。
院内急変
院内急変時には当科では、病院の広さが広大であることも踏まえてRapid Response Teamを敢えて構築せずに業務連絡での全館callになります。早く駆け付けた医師が初期対応をおこないながら救命救急科医師が到着するとそこで引き継ぎながら処置をおこない、状況に応じて集中治療の継続が必要な場合には重症ユニットでの管理をおこないます。事後検証は院内の医療安全委員会などでのフィードバックを受けます。急変用のカート内の整備も救命救急科が担当しています。
教育体制
救命救急科は若手医師への教育も臨床の次に非常に重要な位置づけとしています。多忙な日常の中でも学問をする心も忘れずに精進できるような道筋を構築することが上級医の果たすべき役割の一つと考えています。各種の勉強会やセミナーなどへの積極的な参加や学会発表、論文作成を奨励しており日本救急医学会専門医、日本集中治療医学会専門医、サブスペシャリティー分野の確立を目指すような教育をしています。
また、治療方針にも科学的裏付けを持つことを重要視しており、更には看護師スタッフとともに救急・集中治療領域における終末期医療に関するアプローチなどにも取り組んでいます。また、毎週水曜日には帝京大学医学部救急医学講座の三宅康史教授による回診もおこなわれフィ-ドバックを受ける体制となっています。
リハビリカンファレンス
多摩地域は高齢者の搬送が多い特徴があります。重症患者は救命し得ても入院後には日常生活における活動状態は非常に低下します。そのため入院前の日常生活活動状態を正確に把握してその上で患者さんの現状の病態を踏まえてリハビリテーションの計画を立てて、現実的なゴールを設定する必要があります。そのため救命救急センターで一定期間の入院継続が必要になった患者さんに関して、看護師スタッフ、救命救急科医師、リハビリテーション部門の各スタッフ、ケースワーカーなど多職種でのカンファレンスをおこなっています。
小児総合医療センター 救急科・集中治療科との連携
扉一つで隣接している小児総合医療センターの救急・集中治療科とはECMOをはじめ、特に体格も大きな6歳から15歳などでは場合によっては十分に協力することが可能です。重症外傷では多摩総合の救命科医師も初療や治療に参加するプロトコールが作成されています。
ECMO管理では適宜勉強会を開催したり、症例発生時には相互に行き来してコンサルトする体制になっています。その他、互いの医師がローテーションで相互に行き来可能な体制も整いつつあります。
小児総合医療センターは日本屈指の小児専門医療機関の一つで日本全国から、さらには海外からも患者さんが収容されてきます。救急科の井上医長、集中治療科の清水直樹部長らとは常時連絡を取りつつ密接な連携を図っており相互の知識やマンパワーを補完しあっています。
その他
また都立病院の使命である伊豆諸島、小笠原諸島などからの患者も積極的に受け入れており東京消防庁の防災ヘリに救命救急科医師が同乗しての患者搬送事案も増加傾向です。そのほか近隣地域の医療機関の重症患者は365日速やかに受け入れることが可能な体制となっています。