肝胆膵外科

肝胆膵外科

肝胆膵がんに対する外科治療

  • 日本肝胆膵外科学会の肝胆膵高度技能専門医・修練施設Aに認定されており、高度技能専門医が常勤しています。
  • 消化器内科と定期的にカンファレンスを行い、肝胆膵領域疾患の患者さんに関して、密に連携をとっております。
  • 肝胆膵がんに対する腹腔鏡、ロボット支援下手術も導入し、保健適応術式の範囲内で積極的に施行しています。
  • 当院は全25診療科を有する総合病院であり、ハイリスク患者さんにも各診療科と連携しながら、適切に治療をおこなうことができます。

肝胆膵がん:疾患別治療方針

原発性肝癌

原発性肝癌には肝細胞癌と肝内胆管癌があります。肝細胞癌はB型肝炎、C型肝炎が原因であることが多いですが、近年肝炎ウイスルがない方の肝細胞癌が増えています。エコー、CT、MRI、腫瘍マーカー測定(AFP, PIVKA-2)などで診断し、治療方針は「肝癌診療ガイドライン」のアルゴリズムを参考に肝機能、腫瘍条件から切除適応、至適切除術式を決定します。肝癌は門脈を介して肝内転移を来すため、肝機能の許容する範囲で腫瘍の存在する門脈領域を切除する術式を選択します。

再発の際も毎回アルゴリズムを参考に切除適応を決定し、積極的な再肝切除術を行っています。再肝切除時には癒着が困難となることもあるため、癒着防止材を利用しています。

転移性肝癌

肝臓は他臓器の癌が転移することが多く、血行性転移のため通常は原病の進行、全身病であることを表します。しかし、結腸直腸癌の肝転移は切除することで治癒が期待できるため、可能な限り切除することが推奨されています。切除した後の肝転移再発に対しても、積極的に再切除を行っています。また発見時に切除不能でも化学療法によって腫瘍が縮小し、切除可能になる患者さんも増えています。

胆管癌

胆管癌は腫瘍の部位によって術式が異なります。肝臓に近い腫瘍は拡大肝切除、十二指腸に近い腫瘍は膵頭十二指腸切除が適応になります。腫瘍が広範囲に広がっている場合は拡大肝切除+膵頭十二指腸切除が必要になることもあります。腫瘍が脈管に浸潤している場合でも、血行再建等を行い、根治を目指しています。

胆管癌手術

胆嚢癌

胆嚢癌は早期発見が困難な癌で転移を来たしやすいため、発見時に既に進行していることも少なくありません。しかし遠隔転移がなければ切除が推奨されます。切除術式は病変の広がり、浸潤によって胆嚢摘出術から肝切除、肝外胆管切除、リンパ節郭清など適宜検討します。

減黄処置や門脈枝塞栓術について

胆管癌、胆嚢癌では、黄疸肝に対する大量肝切除による術後肝不全のリスクがあります。当科では黄疸症例に対し、消化器内科医師により内視鏡による減黄処置を行っております。また大量肝切除予定症例には、放射線科医師と協力のもと、門脈枝塞栓術を術前に施行し安全性を確保しています。

膵癌

膵癌は従来予後不良な癌の代表でしたが、近年化学療法を取り入れた総合的治療により予後が改善傾向にあります。切除可能な症例には術前化学療法を導入したうえで、積極的に切除を行っております。術後は補助化学療法を行います。膵頭部癌には膵頭十二指腸切除、膵体尾部癌には膵体尾部切除を施行します。脈管に浸潤している場合、合併切除および血行再建も行っております。

膵癌手術

膵管内粘液産生腫瘍(IPMN)は、大きさ、内部隆起、主膵管径などから膵癌の可能性がある場合は、切除適応となります。また、膵内分泌腫瘍(NET)は、小さくても肝転移を来さないうちに切除することが進められています。いずれもガイドラインに則って治療を行っております。

肝胆膵良性疾患の治療方針

胆石症

胆石症の手術適応は胆石発作など臨床症状がある場合と悪性の疑いが否定できない場合があります。無症状で悪性所見のない場合は経過観察となります。腹腔鏡下胆嚢摘出術を行っております。

肝良性腫瘍:肝嚢胞、肝血管種など

肝嚢胞や肝血管腫は悪性の所見がなく、無症状であれば経過観察が基本になります。但し、大きくなって痛みや不快感など症状がある場合、悪性が否定できない場合は切除適応となります。

膵・胆管合流異常症(総胆管嚢腫)

胆管と膵管が十二指腸に出る前に合流する、先天的な形態異常です。胆管炎、胆嚢炎を起こすこともありますが、問題となるのは胆嚢癌、胆管癌の頻度が高いことです。見つかった場合、その時点で悪性所見がなくても胆嚢摘出術、胆管が拡張している場合は肝外胆管切除の適応になります。

当科の取り組み

肝胆膵外科手術における画像支援ナビゲーション

当院では撮影したCT情報から肝臓の3D解析を行い、肝切除のナビゲーションを行っております。肝臓解析結果と肝機能評価から、最も合理的な肝切除術式を検討することで、安全性と根治性の追求が可能になります。

またヘッドマウントディスプレイを利用した、3Dホログラムを導入し、術前の解剖把握、カンファランスでの検討、術中の支援などに応用しております。

画像支援ナビゲーション1

画像支援ナビゲーション2

腹腔鏡、ロボットを利用した肝胆膵外科手術

腹腔鏡下肝切除術

腹腔鏡下肝切除では腹壁に小さい穴を開けて、機器による操作で肝切除を行います。キズが小さく痛みも少ないため、術後の回復が早いのが特徴です。すべての肝切除が適応となるわけではありませんが、できるだけ導入しております。腫瘍の同定や切除範囲の確認のため、ICG蛍光イメージングも積極的に使用しています。

腹腔鏡下肝切除術

ロボット支援下膵切除術

ロボット支援下膵体尾部切除は2022年より開始しており保険適用内の治療として行っております。従来施行していた腹腔鏡に比べ、手振れすることなく、より繊細かつ直感的な手術操作が可能になります。

ロボット支援下膵体尾部切除

入院サポートセンター、早期緩和ケアの取り組み

「がんとわかったときから始まる」早期緩和ケアを導入し、不安なく肝胆膵がんの手術を受けて頂くために、スタッフ一同がサポートしています。

ハイリスク患者への肝胆膵外科手術

当院は総合病院であり、高齢者の他、心疾患、呼吸器疾患、腎疾患など慢性成人病を合併するハイリスクの患者さんにも、各分野の専門医師と連携し、可能な限り癌に対する根治切除ができるよう取り組んでいます。

臨床試験への参加

最新のエビデンス構築に貢献すべく、他施設共同の臨床試験にも参加する体制を整えています。
もちろん、参加は任意で、参加の有無で当院における治療に差はありません。

診療実績
平成30年度令和元年度令和2年度令和3年度令和4年度
肝切除4444494531
高難度肝胆膵手術4623535441

関連診療科・部門

2024年3月15日 最終更新