呼吸器外科

呼吸器外科

 胸部心臓血管外科(呼吸器外科部門)では、主に、肺・縦隔 (左右の肺と胸椎、胸骨に囲まれた部分)・胸壁、等の胸部疾患の外科診療にあたっています。当院の救急・総合病院としての特性を生かし、通常の合併症のない患者さんの手術はもちろん、心・血管疾患、人工透析、糖尿病、リウマチ膠原病、精神疾患、等の合併症がある患者さんの手術も行っております。また、肺癌の患者さんにおいては、病気の進行の程度により化学療法、放射線療法を含めた集学的治療も行っております。

お知らせ

 呼吸器外科は2011年4月より増員となり、新体制でスタートいたしました。手術症例数も増加傾向にあり、呼吸器外科の専門研修施設としての学会認定も得ています。 今後も皆様のご期待に応えられるよう努めますのでよろしく御願い致します。

診療内容

 呼吸器内科、診療放射線科、救急診療科 (ER)、救命救急センター、病理や麻酔科医師、さらに、専門的な知識と経験を持った看護師、臨床工学士、呼吸器リハビリテーション職員、検査部門職員など、多職種との連携のもと、診療を行っています。当科は病院全体からのバックアップにより、「最適かつ最新な治療方法」を提示・提供し続けます。

基本方針

  • 呼吸器外科専門医が診療を行います。
  • 通常の開胸手術だけでなく、低侵襲な胸腔鏡を用いた肺癌、気胸、感染症の手術を積極的に行っています。特に2017年からは、1つの傷で行う単孔式胸腔鏡下手術 (Uniportal VATS) を導入し、低侵襲手術を追求しています。また、心臓血管外科との連携により人工心肺を用いた拡大手術も行っています。
  • ER、救命救急センターとの連携により、当科かかりつけの患者さんにおいては24時間365日、対応可能となっております。
  • 呼吸器内科と連携することで気管支鏡検査・化学療法を、診療放射線科と連携することで血管塞栓術などのIVR・放射線療法にも対応しています。
  • 安全で質の高い医療を提供いたします。

外来診療

  • 当科では専門外来として、肺腫瘍外来気胸専門外来に加え、単孔式胸腔鏡下手術外来を開設しております。単孔式胸腔鏡下手術外来は、江花医師が担当しています。
  • 外来待ち時間の短縮のため、予約センターに電話の上、予約をすませてから受診いただくようお願いいたします。
  • 外来は基本的に予約制となっておりますが、急を要する場合にはERの協力の下、随時対応可能となっております。
  • セカンドオピニオンに関しては、随時受け付けております。予約センターで予約をお取りください。
  • 専門性の高い治療を迅速に提供できるように、ご紹介状の持参をお願いいたします。

主な対象疾患

 原発性肺癌、転移性肺腫瘍、縦隔腫瘍、重症筋無力症、自然気胸 (原発性自然気胸、月経随伴性気胸、肺気腫 (COPD)、間質性肺炎、等)、巨大肺嚢胞症、嚢胞性肺疾患 (LAM、BHD症候群など)、炎症性肺疾患 (肺感染症、膿胸、縦隔炎など)、肺良性腫瘍、胸壁腫瘍、悪性胸膜中皮腫・胸膜腫瘍、等。

原発性肺癌

 人口の高齢化に伴い近年増加傾向にあります。また、画像診断 (CT検査) の発達により初期の小型肺癌
(図1) が増加しています。
 原発性肺癌の治療方針は、肺癌診療ガイドラインに基づき、IA期からIIIA期 (の一部) 肺癌には手術療法を選択します。肺癌の病期 (stage) により手術単独療法や、手術療法に加え経口もしくは点滴による術後補助化学療法を組み合わせた診療を行います。患者さんの状態によっては、術前化学療法、あるいは放射線化学療法を行った後に手術を、また、脳転移 (stage IV期) を認めた場合には脳転移の治療後に手術を行う場合もあります (参照;表1)。詳しくは外来担当医師にお問い合わせください。
 手術に関しては、従来の開胸手術 (図2a、b) だけでなく、3箇所の傷で行う完全胸腔鏡下手術 (3 port VATS、図3) の他に、1箇所の傷のみで手術を行う単孔式胸腔鏡下手術 (Uniportal VATS、図4) を患者さんの病期、合併症を考慮し選択しています。近年では主に単孔式胸腔鏡手術を行っており、全手術のうちの約8割を占めています。
 術式は肺葉切除+リンパ節郭清を基本としますが、低肺機能症例や小型の末梢肺癌には区域切除、亜区域切除、部分切除などの縮小手術も行っています。局所進行癌症例 (図5a,b) に対しては、気管支形成術、血管形成術、人工心肺を用いた心・大血管合併切除 (図6a,b) などの拡大手術も行っています。

原発性肺癌1

原発性肺癌2

原発性肺癌3

転移性肺腫瘍・肺良性腫瘍

 大腸を始めとする消化管、腎臓、婦人科領域の悪性疾患等の肺 (縦隔、胸壁含む) 転移巣のうち、原発巣がコントロールされている場合には肺切除が選択されることがあります。呼吸機能の温存を考慮した胸腔鏡下 (単孔式) 肺区域切除術を積極的に取り入れています。

気胸・嚢胞性肺疾患

 気胸 (図1) は、突然、肺がしぼんでしまい、胸痛や呼吸困難が生じる病態です。その多くが、若年者・高身長・低体重の男性に発生する、肺嚢胞 (ブラ、図2)、を原因とする原発性自然気胸です。しかしながら、様々な原因から気胸を発症する (肺気腫 (図3)、間質性肺炎 (図4)、月経随伴性気胸 (図5)、肺リンパ脈管筋腫症 (LAM) (図6)、BHD症候群 (図7a,b)、肺腫瘍、など) こともあるため注意が必要です。
 手術は、ほぼ全例に胸腔鏡下手術 (図8) を施行しており、胸腔鏡下手術の多くが1.8cmの1つの傷だけで行う単孔式胸腔鏡下術 (Uniportal VATS) です。近年では、自然気胸 (図9) だけでなく、LAMやBHDSなどの多発肺嚢胞症に対する全胸膜カバーリング術 (Total Pleural Covering、TPC) に対しても積極的にUniportal VATSを施行しています。当院では全手術症例に対し、胸膜の肥厚を促す特殊なメッシュによる胸膜カバーリング術を施行しております (図10)。
 気胸は突然発症することから、救急外来を受診することが少なくありません。そのため、当院ではERとの連携・協力のもと24時間対応可能となっております。
 また、当科では巨大肺嚢胞症 (図11) を始めとする嚢胞性肺疾患に対する胸腔鏡下手術を積極的に行っております。

気胸1

気胸2

気胸3

気胸4

気胸5

縦隔腫瘍 (胸腺腫、重症筋無力症、奇形種、神経鞘腫、胚細胞性腫瘍、胸腺などの嚢胞、等)

 左右の肺と胸椎、胸骨に囲まれた部分である「縦隔」に発生した病変に対し手術を行っております。近年では剣状突起下アプローチを用いた単孔式胸腔鏡手術 (Subxiphoid VATS) を行うことで胸骨正中切開を回避し、侵襲を少なくするように努めています (図1)。重症筋無力症、重症筋無力症合併胸腺腫に対する拡大胸腺摘出術や腫瘍が大きい場合には、Subxiphoid VATSに加え、左側胸部に約2cmの傷1つを追加し手術を行っております。周囲臓器への浸潤、特に血管形成を伴う場合には胸骨正中切開経路による腫瘍切除術を、大血管に浸潤が疑われる場合には人工心肺を用いた拡大切除も行っております (図2)。

縦隔腫瘍1

炎症性肺疾患

 膿胸、結核腫、非定型抗酸菌、肺アスペルギルス症に対する手術を行っています。急性膿胸 (図1) に対しては、早期に積極的に胸腔鏡下手術を行っています。慢性膿胸に対してはAir Plombage法や開窓術 (図2) などを行っています。治癒の具合によっては、大網充填術や胸郭形成術を行う場合もあります。

炎症性肺疾患

胸部外傷

血胸、血気胸 (図1)、肋骨骨折 (図2) などに対する外科治療を行っています。

胸部外傷

肺良性腫瘍、胸壁腫瘍、悪性胸膜中皮腫・胸膜腫瘍

悪性胸膜中皮腫に対しては、胸膜外肺全摘、胸壁腫瘍に対しては胸壁再建、胸郭形成術を行っています。

肺生検

未診断のびまん性肺疾患、間質性肺炎、等に対する診断目的の胸腔鏡下肺生検も行っています。

地域とのつながり

  • 当院は城東地区唯一の公的な総合病院です。地域の診療所・病院との連絡・連携を密にし、病状にあった最良の治療法を提供しています。
  • 当院の性質上、急性期の治療を主に行っております。状態の安定した患者さん、通院が困難になってしまった患者さんには、患者・地域支援センターを通し、適切な医療機関にご紹介しています。
  • 城東地域 (墨田、江東、江戸川、葛飾、一部台東、荒川) における呼吸器疾患の治療を発展させるべく、地域のクリニック、病院との交流を積極的に行い、呼吸器診療ネットワークを作成するよう努めております。

主な医療施設

  • 気管支鏡、超音波気管支鏡
  • 放射線診断 (CT、MRI、換気・血流シンチグラフィー、骨シンチグラフィー、血管造影)
  • 放射線治療 (リニアック、IVR)
  • 生理学的検査 (心電図、心エコー、トレッドミル、ホルター心電図、呼吸機能)
  • 手術関連 (内視鏡手術、ハイブリッド手術室 (図1)、経皮的心肺補助装置、人工心肺装置、等)、外来化学療法室

主な医療施設

施設認定

  • 日本外科学会 外科専門医制度修練施設 (指定)
  • 日本呼吸器外科学会 呼吸器外科専門医合同委員会認定修練基幹施設
  • 日本呼吸器内視鏡学会 認定施設
  • 日本がん治療認定医機構 認定研修施設

2024年6月19日 最終更新