泌尿器科
広域基幹病院の泌尿器科として、副腎、腎臓、尿管、膀胱、前立腺、陰茎、精巣などの後腹膜腔臓器および男性生殖器の疾患に対する外科的治療を主に担当しています。墨東ERと協力して、腎外傷やフルニエ壊疽、尿路感染症に伴う敗血症などの3次救急疾患にも対応しています。また、加齢とともに増加する下部尿路機能障害(排尿障害、頻尿、尿失禁など)も治療しています。
当科は常勤医師3名(うち2名が日本泌尿器科学会専門医・指導医)で運営しています。また、当科は日本泌尿器科学会の専門医拠点教育施設として認定を受けており、若手医師の育成にも積極的に取り組んでいます。
当院では昨年11月から手術支援ロボット(da Vinci Xi)を導入しました。
泌尿器科でも2022年1月から前立腺癌に対して手術支援ロボットを用いた手術を開始しました。ロボット手術の安全性を確認するため、従来の開腹手術とロボット手術初期10例の手術経過や合併症の発生状況について調査した結果は以下の通りでした(倫理委員会承認番号03-078)。
従来の術式 | ロボット手術 | |
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入院期間(中央値) | 13日間 | 11日間 |
術中出血量(中央値) | 1,747mL | 357mL |
輸血率 | 74.5% | 10.0% |
術中の不具合によってロボット手術を中断した患者さんは0人でした。
また、前立腺摘除術の重篤な合併症である直腸損傷は従来の術式では3.9%の発生頻度でしたが、ロボット手術では0件でした。
これからも、安全で正確な手術に取り組んで参りたいと存じます。
診療内容
外来
外来日は月・水・金曜日(午前9時00分~午後3時00分まで)です(完全予約制)。初診患者様は紹介状の持参をお願いします。
外来では問診、検査、診察のほか、泌尿器悪性腫瘍に対する癌化学療法(2クール目以降)も実施しています。
火・木曜日は手術日のため基本的に外来診察はおこなっていませんが、緊急時や紹介医からの相談には可能な限り応じています。
また、病状の安定した患者様については地域のクリニック・病院の泌尿器科へ逆紹介しています。
病状が不安定になった場合や手術が必要な場合には当科で対応させて頂いています。
地域の先生方との連携を深めながら患者様を共に支える医療を実践していますので、ご理解のほど宜しくお願いします。
入院
入院診療では手術療法を中心に、前立腺針生検を主とした入院検査や泌尿器悪性腫瘍に対する癌化学療法(1クール目)をおこなっています。
コロナ禍の影響により、当科で確保できるベッド数が変動するため、病状の安定した患者様には早期退院をお願いしています。
円滑な入院病床運営にご協力いただければ幸いです。
手術
当科では一般的な泌尿器疾患に対する手術療法をおこなっていますが、「腎移植」と「女性泌尿器疾患」、「小児泌尿器疾患」についてはエキスパートの先生方のおられる他院へ紹介しています。
特色
副腎・腎・尿管の悪性疾患
根治手術を達成するために必要な侵襲度を検討し、術式や対象臓器へのアプローチを決めています。
開腹手術、腹腔鏡手術、腎温存手術(腎部分切除術)といった様々な手術方法に対応しています。
2022年度からはロボット支援システム(da Vinci Xi)を用いた腎部分切除術も開始する計画です。
腎細胞癌の進行時には、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤等による薬物療法をおこなっています。
下部尿路機能障害(前立腺肥大症・過活動膀胱など)
生活指導および薬物療法を中心におこなっています。
難治性の場合は、経尿道的前立腺切除術(TURP)、経尿道的ボツリヌス毒素膀胱壁注入術などをおこなうこともあります。
下部尿路管理に間欠的自己導尿が必要な場合は、看護師や理学療法士/作業療法士の協力も得ながら、患者様をサポートいたします。
前立腺癌
検診等で前立腺腫瘍マーカー(PSA)が高値だった場合には是非当科へご相談ください。
前立腺癌の診断に欠かせない前立腺針生検は毎週月曜日に入院でおこなっています(入院期間は1泊2日または2泊3日)。
全身麻酔または腰椎麻酔下に10~15分程度で経会陰式前立腺針生検(検体本数は前立腺体積に応じて18~22本)を実施しています。
ロボット支援システム(da Vinci Xi)の導入により、2022年1月から前立腺癌に対するロボット手術を開始しました。
出血量が少ない、術後の創部(キズ)の痛みが少ない、術後に起こりやすい尿失禁からの回復が従来の手術方法に比べて早い、といった利点があります。
勃起神経温存が可能な場合は患者さんのご希望も踏まえたうえで実施することもできます。
膀胱癌
内視鏡手術(TURBT)を中心に治療計画を立てています。病状に応じて、抗がん剤膀胱内注入療法・BCG膀胱内注入療法による膀胱温存をおこなっています。
進行癌に対する膀胱全摘除術では、小腸を利用した回腸導管造設術や代用膀胱造設術による尿路変更をおこなっています。
尿路結石
当院はレーザー結石破砕装置を備えており、尿管鏡や膀胱鏡を用いた尿管結石レーザー破砕術・膀胱結石レーザー砕石術を入院治療として積極的におこなっています。
尿路結石に対する外来治療をご希望の患者様には体外衝撃波結石破砕装置を備えた他院へ紹介しています。
人工尿道括約筋について
前立腺疾患の術後に発症しやすい男性の腹圧性尿失禁に対して人工尿道括約筋の埋込術をおこなっています。
尿失禁にお悩みの男性成人の方は是非ご相談ください。
2024年 1月 24日 最終更新